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被災地支援センター

JDF被災地障がい者支援センターふくしまの2013年の活動報告

2013年12月
JDF被災地障がい者支援センターふくしま

 2011年3月11日の今世紀最大とも言える「東日本大震災」が発生し、福島第一原発による福島県内の状況は、除染や燃料棒の取り出しなど様々な対策がとられてきている一方で、汚染水の流出やその保管方法、廃炉に向けた作業員の被爆線量と熟練度の問題など、収束とは言いがたい状況にあります。
 そう言った状況下で、避難区域の再編が行われ、帰還に向けて準備を行う自治体と帰還はしたいが、生活インフラの不足や山間部の線量が下がっていないとする住民。また、当面は、帰還することが難しいとして、避難先での自治体機能の模索(仮の町構想)を試みる自治体など、自治体レベルでも、住民レベルでもおかれている立場によって、様々な対応がなされています。
 そこに暮らす住民は、複雑な想いとの狭間で、翻弄させられています。自らの居場所すら、地に足を付けることが出来ず、その想いを口にすること自体が、摩擦や分断を産むとし、益々複雑で過酷な状況があります。また、こういった風潮は、避難者を受け入れている自治体など、県内全域に広がっています。
 また、県外避難者の数も、横ばいになっているものの、労働者層の流出により、福祉従事者の減少に加え、今まで中核を担ってきた人材の疲労による退職も目についてきています。
 このような状況下で、被災地障がい者支援センターも実情を踏まえ、各事業が専門性を持った活動へ変化してきています。

1.改めて浮き彫りとなった地域間格差と環境に適応していた生活との矛盾

 福島県においては、震災に関する被災者の仮説住宅等の他県との違いがあります。それは、一口に福島県といっても、県土が広く、文化圏の異なる地域への避難を余儀なくされているということが言えます。
 例えば、原発の立地地域である双葉郡は、漁村・農村地域で、素朴な生活が送れていた地域で、比較的福祉の社会資源が少なかった地域です。障がいの軽い方やいわゆるボーダーという方でも、福祉の支援を受けることなくても、どうにか生活が送れて来た方が多かった地域です。逆にいえば、良い環境であったともいうことが言えますが、今回の震災による原発事故により、福島市、郡山市、いわき市等の比較的都市部に避難するといったことによる弊害が出ています。
 これは、地方県の中でも比較的自立生活センターの多い福島県で、相双地区(相馬・双葉)に自立生活センターが無かったことや相双地区の重度の障がい者の施設入所者が多いこと、または都市部に出てきて自立生活を営んでいる方が多かったことからも解る通り、以前から薄々は感じていたことではありますが、改めて、今震災が福祉レベルの地域間格差を浮き彫りにしました。
 産まれた土地で素朴に暮らし、自然(自然災害をも含む)と向き合って暮らすか、そうではない道を選ぶかといった自己選択権に委ねられる部分を突きつけられた気がしています。そういった意味で考えたときに、知る権利や居住地の選択権といった部分にも言及している「障害者権利条約」の重要性が浮き彫りになってきます。以上を前段に掲げた上で、活動報告を述べさせて頂きます。

2.2013年度「被災地障がい者支援センターふくしま」活動報告

①福島県障がい者相談支援強化・充実事業
 今年度も、福島県からの委託を受けて、避難先での生活などの相談に応じて来ました。各避難者の個別支援として、避難先での、生活支援や福祉サービスの社会資源、就労等に繋ぐといった活動を継続的に行って来ました。必要に応じて、東電損害賠償請求では、適宜福島県弁護士会の協力も継続的に得て行っています。
 前述したように、文化圏の違いを超えた避難生活の中で、元々、何らかの支援が必要な方が、避難先(比較的都市部)で生活を送る中で、支援が必要でとなり、何らかの支援に結び付けるといった活動を行っています。
 また、今年は、避難元の相談員との連携をさらに強化し、避難元の相談員による支援体制が十分に発揮出来るような体制造りをして来ました。避難元の相談員が避難先の社会資源を十分に活用した個別支援が出来得る環境整備を行ってまいりました。

②福島県障がい者自立支援拠点整備事業
 被災障がい者や被災事業所の自立の支援拠点として、福島県からの委託を受け、サロン「しんせい」としてスタートしました。被災事業所の自立の支援拠点としての事業については、一定の役割を果たし、被災事業所が避難先で再建を果たしています。
 被災障がい者と地元障がい者の交流の場としてのサロン「しんせい」の活動を行いながら、被災障がい者や前述したような福祉のサービスには繋がらない方などへ仕事(作業)を提供し、その後その方に適したことが見けられるよう活動の場を提供しています。

③再ニーズ調査(4-6月)
 震災から2年が過ぎたところで、ニーズの変化など、行政担当者による被災障がい者の把握状態の確認や障がい当事者が出来るピアサポート的な部分で協力出来ることはないかなどを中心に調査を行いました。また、一緒に活動する仲間の発掘を計りたいという目的も秘めて行いました。

④復興住宅要望書
 福島県建築課に復興住宅UD化や運用面での弾力化を核とする要望書を提出しました。一般を対象にしたヒアリングの前にも、懇談の機会を設けてもらい、竣工直前での内覧会を要望。検討との回答を得ました。

⑤原発事故損害賠償問題・生活課題相談会
 「障がい者が抱える損害賠償問題・生活課題相談会」を福島県弁護士会の協力を得て開催しました。4組5名の方の個別相談会といった格好になりました。  また、弁護士会作成の東電損害賠償Q&Aマニュアルを構成団体に送付して、損害賠償請求の情報提供を行いました。福島県弁護士会からの依頼で、原発賠償の時効撤廃に関する署名を構成団体、避難行政などから集め、一週間短期間で、1950名の署名を集めることが出来ました。

⑥防災・減災への提言
 千年に一度ともいわれる震災、それによる原発事故災害を経験し、そこからの復興の道筋を探り出すという目的で開催していた復興会議ではありますが、自立生活を送る上での防災の在り方を考えることが先決ということになり、「障がいを持つ人の防災研究会」と改名し、議論の場を設けています。  災害時でも、自立生活をする=地域と共に生活をするといった柱で、防災・減災を考えていくと、インクルージョンの大切さが改めて必要となってくることなどが浮き彫りになってきています。
災害時の自立生活における防災・減災に関する指針といった形での完成を目指しています。

⑦各種シンポジウムへの参加と開催
 様々なシンポジウムが各地で行われ、シンポジストとして出席したり、参加したりで各テーマで議論を行っています。分類すると下記の通りです。また、代表的なものを記します。

  •  a)福島における今の状況やセンター活動などの報告・共有をテーマとしたシンポジウム。
  •  b)原発事故における差別や障がい、優生思想などをテーマとしたシンポジウム。
     原発事故の影響による障がい(奇形児)の産まれる確立が増すという説もある中で、障がいを持つ立場として、優生思想に繋がらない方向性を意見しました。
  •  c)災害時の防災や減災、避難所などをテーマとしたシンポジウム。
    福島県主催の福祉避難所に関するシンポジウムでは、シンポジストとして招かれ、インクルージョンの推進が急務であるという提起を行いました。

  •  d)労働者層の流出下での自立生活。
    福祉従事者の減少下で、自立生活の維持を問う「人とひとの“絆”を考えるシンポジウム」開催では、グループワークも行い、共感者を増やす、制度の枠にとらわれない、当事者が引き込む努力といった意見が出されました。

⑧原発事故子ども被災者支援法市民会議参加
 基本的理念では、「原発事故子ども・被災者支援法の理念=障害者総合福祉法の理念」、「被災当事者の意見を取り入れて必要な措置を講じる=この自己決定権や当事者権利の公使」、といった部分で、『障がいのある福島人のニーズは、すべての福島人にとって有益なものになる。』私たち福島の障がい者も、その活動の一端を担うべきであると考え、支援法市民会議に参加してきました。
 基本方針が実質的に反故にされてしまったが、今後は、現実の苦悩を集め、長期戦とし、諦めず全国の避難先で「運動」として行くとの行動規範の呼びかけがあり、『福島新生』に向けて協働の糸口を探る活動を行って来ました。

⑨その他障がい福祉関係の会合・イベント参加
 成立となった「障害者差別解消法」学習会やその成立に尽力した、元参議院議員の国政報告会、JDF・救援本部・ゆめ風基金などの報告会、「関西⇔東北ポジティブ文化交流祭」、「みちのくTRY」などのイベントに参加し、現状報告や課題の共有を行いました。

⑩証言DVD&証言集の作成
 3・11以降、当センターの活動や地域の障がい者や地域生活障がい者に関わる事業所がどういった関わりをしてきたか?また、その心模様を描き、後世への記録となり得るものを作成したいと、作成中です。

⑪法人格を取得
 今年10月には、「NPO法人しんせい」という法人格を取得しました。この法人格を基軸に今後の活動を展開して行きたいと思っています。

支援センター主催「人とひとの"絆"を考えるシンポジウム」の様子(2013年11月、郡山市)


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