普及活動
平成20年度
DAISY とキュリー夫人の理科教室
吉祥 瑞枝 （サイエンス スタジオ・マリー 東邦大学）
● DAISY（Digital Accessible Information Systemの頭文字）「アクセシブルな情報システム」はAMISというソフトを用いて、読み上げ音声とともに画面の文字、単語や文章が黄色マーカーで示されるマルチメディアである。この方式で収録されたＣＤはDAISY 図書（DAISYブック）である。DAISYは視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々にはカセットに代わる画期的なデジタル録音図書である。DAISYの開発と維持を行なっているデイジーコンソーシアム（本部スイス）は、1996年 5月に日本、スウェーデン、イギリス、スイス、オランダ、スペインの6ヶ国で結成された。現在の会員団体は40ヶ国以上である。2008年5月デイジーコンソーシアム代表として元国立障害者リハビリテーションセンター研究所障害福祉研究部長 河村宏がDAISY for everyone by sharing knowledge活動で“ITU 2008年世界通信情報社会賞”をエジプトで受賞した。DAISYは急速に進化発展し動画も数年のうちに実現の視野にはいってきている。
● サイエンススタジオ・マリーは子供達と若い人や親たちにむけて、紙芝居と実験ショーの公演活動を「キュリー夫人の理科教室」と題して2002年以来行なっている。キュリー夫人の理科教室：科学するココロを伝える「3つのポイント」1．世界的な女性科学者マリー・キュリーの紹介 2．子どもとの対話による参加性3．「質の高い実験・演示」（学会を代表する先生方を招いて、本物を届ける）に努めている。2008年11月、12月は平成20年度地域科学技術理解増進活動推進事業｢地域活動支援｣JST助成のもと科学技術館（北の丸）で、専門先生方を講師として迎え｢キュリー夫人の理科教室｣を開催した。（図1,2,3,4）
●DAISY for All Project: 会場でデイジー方式収録のCD新作紙芝居「はじめての科学：風ふぅふぅ」（「キュリー夫人の理科教室」第1章：真空と空気のちがい。「風をつくる。」）を参加者に体験してもらい、アンケートと共に配布した。合計１０２枚のアンケートを回収した。（表１）
下記のような興味ある結果が得られた。理科が好きの度合いは男性（大好き53％、好き34％、普通13％、嫌い0％）、一方女性は（大好き36％、好き33％、普通25％、嫌い6％）である。男性は9割近く、女性は7割が好きでその差があった。（図５） また、はじめての科学紙芝居「風 ふぅふぅ」の興味の割合も理科が好きな男性、女性はともに面白いと回答した者が多い。(図６)
| 回答 | 女 | 男 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 子ども | 20 | 27 | 47 |
| 大人 | 35 | 20 | 55 |
| 合計 | 55 | 47 | 102 |
DAISYを知っていたのは僅か8％で周知は十分ではない。会場展示やDAISY実演を見て76％の者がDAISYを知った。こうした一般への地道な活動の効果は高く、大切と思われる。(図7,8)
質問「どのようなDAISY ブックを読みたいですか？」には“科学”、“伝記”、“童話”、“昔話”、“詩”と明記した例と、自由記入で、複数の選択も可とした。
科学館に参加者は科学に興味をもっていることを考慮する必要もあるが、科学、童話、伝記、昔話、詩の順である。女性は特に童話を好む。記述でアシモフ（ＳＦ作家）が2枚あった。(図9)
結論
★参加者アンケート回答に基づくと、DAISYの周知は十分ではないといえる。DAISY図書の展示、デモンストレーションによる体験、サンプルの説明などは非常に効果がある。
★主な知見として科学館に参加する児童及び引率の大人の意識は高く、特に子供への大きな影響をもつ母親に関心をもってもらうことが大切である。DAISY図書の希望も科学ものが特に高い。幼少から科学に親しむのにDAISY図書の有効性は高く、DAISY図書の科学のものに期待がよせられている。
マルチメディアDAISY図書の普及のために（財）日本障害者リハビリテーション協会はDAISYサンプル図書を実費提供、一部サンプルは、無料でDAISYファクトリーからダウンロード出来る。
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/index.html
（財）日本障害者リハビリテーション協会(JSRPD)