よん

 月 つきのいいばんでした。ごんは、ぶらぶらあそびにかけました。中山なかやまさまのおしろしたとおってすこしいくと、ほそみちむこうから、だれかるようです。はなしごえきこえます。チンチロリン、チンチロリンと松虫まつむしいています。

 ごんは、みちかたがわにかくれて、じっとしていました。はなしごえはだんだんちかくなりました。それは、兵十ひょうじゅう加助かすけというお百姓ひゃくしょうでした。
「そうそう、なあ加助かすけ」と、兵十ひょうじゅうがいいました。
「ああん?」
「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」
なにが?」
「おっかあんでからは、だれだからんが、おれにくりやまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」
「ふうん、だれが?」
「それがわからんのだよ。おれのらんうちに、おいていくんだ」
 ごんは、ふたりのあとをつけていきました。
「ほんとかい?」
「ほんとだとも。うそとおもうなら、あしたいよ。そのくりせてやるよ」
「へえ、へんなこともあるもんだなア」
 それなり、ふたはだまってあるいていきました。
 加助かすけがひょいと、うしろました。ごんはびくっとして、ちいさくなってたちどまりました。加助かすけは、ごんにはがつかないで、そのままさっさとあるきました。吉兵衛きちべえというお百姓ひゃくしょういえまでると、ふたはそこへはいっていきました。ポンポンポンポンともくぎょおとがしています。まどしょうにあかりがさしていて、おおきなぼうあたまがうつってうごいていました。ごんは、
「おねんぶつがあるんだな」とおもいながら井戸いどのそばにしゃがんでいました。しばらくすると、またさんにんほど、ひとがつれだって吉兵衛きちべえいえへはいっていきました。きょうこえがきこえてました。
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