ろく

 そのあくるもごんは、くりをもって、兵十ひょうじゅういえかけました。兵十ひょうじゅう物置ものおきなわをなっていました。それでごんはいえ裏口うらぐちから、こっそりなかへはいりました。

 そのとき兵十ひょうじゅうは、ふとかおをあげました。きつねいえなかへはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごんきつねめが、またいたずらをしにたな。
「ようし。」
 兵十ひょうじゅうちあがって、にかけてある火縄銃ひなわじゅうをとって、火薬かやくをつめました。

 そして足音あしおとをしのばせてちかよって、今戸いまどぐちようとするごんを、ドンと、うちました。ごんは、ばたりとたおれました。兵十ひょうじゅうはかけよってました。いえなかると、土間どまくりが、かためておいてあるのがにつきました。
「おや」と兵十ひょうじゅうは、びっくりしてごんにおとしました。
「ごん、まいだったのか。いつもくりをくれたのは」
 ごんは、ぐったりとをつぶったまま、うなずきました。
 兵十ひょうじゅう火縄銃ひなわじゅうをばたりと、とりおとしました。あおけむりが、まだつつぐちからほそていました。

朗読ろうどく 森口もりぐち瑤子ようこ