デジタル録音図書（DTB）とは?
これまでの録音図書は、印刷された出版物をアナログ録音したものでした。一方、デジタル録音図書（DTB）は、印刷された出版物のマルチメディア版です。どちらも、音声レンダリングには肉声が使用されています。
DAISY規格の開発のきわめて早い段階で、多くの国の録音図書の読者に対して、読みのニーズと、完全にアクセシブルな音声図書の構想に関する意見が求められました。これにこたえて意見を提供した読者たちは、アナログ録音は、読むことと情報に関する彼らのニーズを満たしていない、ということを非常に明確に指摘しました。図書の中での読みたい場所への移動の難しさや、メディア自体の使い勝手の悪さ、音質の問題をはじめとする数多くの問題から明らかになったのは、録音図書製作者がデジタル・プラットフォームへの移行を開始する必要があるということでした。しかし、肉声によるデジタル録音図書でも、すべての問題を解決することはできません。特に、アクセシビリティの問題と、図書の中での読みたい場所へのナビゲーションの問題は残されるでしょう。DAISY DTBは、単に印刷された図書を肉声で朗読して製作した録音図書では実現不可能であったアクセシビリティを提供することによって、読者のニーズにしっかりと応えます。
DAISYストラクチャー・ガイドライン（http://www.daisy.org/z3986/structure/SG-DAISY3/）（英語）に記されているように、DAISY DTBには3つのタイプがあります。すべてのタイプで、コンテンツへのアクセスが改善されています。
DAISY図書の3つの基本的なタイプは以下のとおりです。
- 音声とNCX（ナビゲーションコントロールセンター）
- ナビゲーション構造を持つDTB。NCXは、図書の中でユーザーがナビゲートできるすべてのポイントを含むファイル。XMLテキストのコンテンツファイルがある場合は、図書の構造や、脚注のナレーションなどの機能へのリンクが含まれる。このタイプのDTBの中には、索引や用語集、キーワード検索サポートなどのテキストコンポーネントを別途含むものもある。
- 音声とフルテキスト
- ナビゲーション構造とフルテキストおよび音声を備えたDTB。このタイプのDTBは、最も完全な形であり、最も豊かなマルチメディア読書体験と、最高レベルのアクセシビリティを提供する。XMLテキストのコンテンツファイルには、図書の構造とフルテキストが含まれている。音声とテキストは同期されている。
- 音声がなくテキストのみ
- 音声なしのDTB。XMLテキストのコンテンツファイルには、図書の構造とフルテキストが含まれている。音声ファイルはない。このタイプのDAISY DTBは、たとえば、合成音声や再生可能な点字ディスプレイを使ってレンダリングされる。
XMLを利用することによって、製作者は図書を綿密に構成することができる。HTMLのマークアップと比較すると、XMLはマークアップのオプションの増加と、より詳細なナビゲーション構造の構築、そして適切なネスティングを可能にする。
DAISY規格に従って製作されたDTBは、それ自体は配信媒体とは無関係である。つまり、デジタル・マスターファイルがアーカイブに保管され、それが、CDやDVDなどの現在利用できるメディアを通じて配布される。さらに重要なのは、技術が進歩し、デジタルメディアの配信方法が発達するにつれて、これらの図書が、新たに開発されたメディアあるいはシステムを通じて配信されるようになる可能性があるということである。