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第4回ヨーロッパeアクセシビリティフォーラム:調和の推進
ヨーロッパにおける公共サービスのeアクセシビリティ
2010年4月30日

フランスのパリで4月12日に開催された、第4回ヨーロッパeアクセシビリティフォーラムのおもな目的は、デジタル分野における情報アクセスについて学び、その分野の専門家とさまざまな課題を議論する機会を、参加者全員に提供することであった。講演者として、アクセシブルな情報の消費者を代表する機関や研究機関、国内およびヨーロッパの公的機関、そしてヨーロッパ内外の営利企業から専門家が参加し、本会議での論文発表、ワークショップおよび実演が行われた。この日参加できなかった者でも、そこで交わされた情報を利用できるよう、同フォーラムに参加したDAISYコンソーシアムのソフトウェア設計者であるロマン・デルトワ(Romain Deltour)が、丸一日かけて開催されたイベントの概要を伝えてくれた。議事録はBraillNetのウェブサイト(www.braillenet.org)で近く入手可能となる予定である。そのためここでは、今回の見どころと、DAISYコミュニティにとってプラスとなる点、および結論に焦点を絞って紹介する。

この日発表された、一般的かつ包括的な見解は、以下の通りであった。

セッション1:eアクセシビリティ政策

Ms. Nathalie Kosciusko-Morizet opening the 2010 European eAccessibility Forum, photo credit CSI/JP.ATTAL

ナタリー・コシウスコ=モリゼ(Nathalie Kosciusko-Morizet)未来予測・デジタル経済開発大臣が、フォーラムの開会を宣言した。同大臣は、情報通信技術(ICT)は社会的インクルージョンと雇用へのアクセスを促進するが、社会的排除の危険もあると強調した。
そして締めくくりとして、アクセシブルなサービスの実施により、余分な費用が発生するというのは誤った通念であり、アクセシビリティは実は長期投資である、と語った。

「eアクセシブルな欧州連合のための課題」と題した基調講演では、欧州委員会情報社会・メディア総局、インクルージョンのためのICTユニット次長のミゲル・ゴンザレス=サンチョ(Miguel Gonzalez-Sancho)が、欧州連合は政治的関与、法律および資金援助を通じてeアクセシビリティの開発を支援し続けると締めくくった。


セッション2:eアクセシビリティを支援する法律

Donal Rice speaking at the 2010 European eAccessibility Forum, photo credit CSI/JP.ATTAL

2つ目の基調講演、「アクセシブルなウェブコンテンツの作成と表示のためのW3C/WAI標準規格」では、W3C/WAI(ウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ)のジャンヌ・スペルマム(Jeanne Spellmam)が、W3C標準規格の中で、ATAG、WCAG(どちらも開発者向け)とUAAG(ユーザー向け)がウェブアクセシビリティに関係していると説明した。基調講演ではATAG(オーサリングツールアクセシビリティガイドライン)がおもに取り上げられ、スペルマムは、ATAGがアクセシビリティの確保だけでなく、アクセシビリティの認識を高める上でも最も重要であると述べた。ATAGでは、オーサリングツールはそれ自体アクセシブルであると同時に、アクセシブルなコンテンツを制作できるものでなければならないとしている。オーサリングツールに必要な条件は以下の通りである。

  1. 知覚できること(ツールによって示される内容)
  2. 操作できること(ツールとのやりとり)
  3. 理解できること(ツールでできることとその方法)

ATAG2.0のラストコールワーキングドラフトが近く発表される予定であり、その実装が必要である。スペルマムはまた、意見、評価および翻訳を大いに歓迎すると述べた。『ATAG2.0の実装(Implementing ATAG2.0)』という文書は、エンドユーザーにとって大変重要なATAG仕様について、わかりやすい言葉で解説したものである。

「ヨーロッパにおけるeアクセシビリティに関する現行法の比較検討」と題したセッションでは、アイルランド国家障害局のドーナル・ライス(Donal Rice)が、強力なセクター別の規制から、比較的横並びの法律に至るまで、さまざまな法律および政策を明らかにしたMeAC研究(ヨーロッパにおけるeアクセシビリティの進展の評価)について論じた。ライスはまた、ITU(国際電気通信連合)とG3ICT(インクルーシブなICTのためのグローバルイニシアティブ)が、国連障害者権利条約の実施に役立てられるeアクセシビリティのツールキットを、政策決定者に提供していることを説明した。


セッション3:アクセシブルな出版チェーン

DAISYコミュニティの人々にとって見どころの1つは、セッション3「アクセシブルな出版チェーン」であった。

「アクセシブルな教材の自動制作」と題した発表では、オープン大学のジェラルド・シュミット(Gerald Schmidt)が、大学の活動とDAISYの大々的な活用について述べた。

ドイツ視覚障害者中央図書館(DZB)のトーマス・カーリッシュ(Thomas Kahlisch)博士とジュリア・ドブロシュケ(Julia Dobroschke)は、「ライプニッツ―ノンフィクション出版物をアクセシブルにするプロジェクト」というセッションを主催した。この「プロジェクト・ライプニッツ」は、障害者向けに出版物を半自動変換するソフトウェアツールとワークフローを開発するものである。同プロジェクトは、出版社との強力な連携を特徴としており、その成果はアクセシブルなグローバルライブラリーの開発に取り入れられる。

「簡単かつ自主的なアクセシブルコンテンツ出版の将来」は、オランダ、デディコン社(Dedicon)で印刷物を読めない障害がある人々のためのアクセシブル情報を担当しているキャスリーン・アスイェス(Kathleen Asjes)による発表であった。アスイェスは、AltTEXTプロジェクトについて、以下のように概要を述べた。


セッション4:eアクセシビリティの社会的影響

セッション4「eアクセシビリティの社会的影響」では、「AEGISヨーロッパプロジェクト、オープンソースソフトウェアライセンスに基づくインフラストラクチャー・開発者用ツール・支援技術の開発」と題した、ベルギーのリューベンカトリック大学のクリストフ・ストロッブ(Christophe Strobbe)による発表が行われた。発表の中でストロッブは、プロジェクトについて次のように説明した。


閉会の辞

Dominique Burger giving the closing remarks at the 2010 European eAccessibility Forum, photo credit CSI/JP.ATTAL

INSERM(フランス国立保健医学研究所)-UPMC(ピエール& マリー・キュリー大学)、BrailleNet会長のドミニク・バーガー(Dominique Burger)による同フォーラム閉会の辞は、非常に的を射た内容であった。バーガーは、アクセシビリティは複雑な課題であるが、私達は明らかに、先駆的なアプローチから専門的かつ組織的なアプローチへと移行しつつあると述べた。そしてドイツ国内の出版社や書店との連携によるライプニッツ・プロジェクトやDAISYとEPUBの連携、商業企業による製品にアクセシビリティツールとチェッカーを最初から組み込む方法を例として挙げながら、アクセシビリティのニーズと主流のニーズの融合が進んでいると述べた。さらに、アクセシビリティの実装による膨大な長期利益は、これに関連するコストを上回ると付け加えた。最後に、「デジタルアクセシビリティ研究所」を設立し、BrailleNetのイニシアティブ(AccessiWeb、ヘレネ図書館、ヨーロッパeアクセシビリティフォーラム)と非営利パートナーまたは産業パートナーを再編成することを発表した。その目的の1つとして述べられたのが、W3CおよびDAISYコンソーシアムなどによる標準化の取り組みへの参加促進である。

この記事に掲載されている写真は、それぞれのalt-textに記載されているように、CSI-JP ATTALの提供による。