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発展するデジタル教科書

スティーブ・ノーブル
ケンタッキー支援技術サービス・ネットワーク

エリザベス・クームズ
アメリカ ソフトウェア及び情報への平等なアクセス(EASI)

項目 内容
会議名 2004年 C-SUN会議(障害者支援技術会議”テクノロジーと障害者”)
発表年月 2004年3月 カリフォルニア州 ノースリッジ(アメリカ)
備考 英語版:原文

序論

リハビリテーション法セクション504及び障害を持つアメリカ人法(ADA)第2章では、公立大学・短大を含む教育機関は、障害がある学生が全ての教育に効果的にアクセスできるよう保証するために、補助的な支援及びサービスを提供しなければならないと定めている。例えば、学生が障害のために、通常の印刷された教科書を効果的に利用することができない場合、教育機関は、これらの教材に対する代わりのアクセス方法を、実際に役立つ形で提供しなければならない。それは「読むための便宜」をはかるもので、朗読者の依頼や、録音図書、点字、拡大印刷或いはコンピューターやコンピューター・ベースの読みとり機器を使って利用できる電子フォーマットによる図書などの利用が考えられる。近年では、様々なデジタル・フォーマットによる教科書が、大多数の学生の間で好まれる代替フォーマットとして、迅速に発展しつつある。これは、従来のキャンパスで学んでいる学生にとっても、また通信教育を受けている学生にとってもいえることである。

現在の取り組み

近年、代替フォーマットによる教材のためのデジタル革命をもたらすのに役立つ、数多くの取り組みがなされている。このプレゼンテーションでは、そのうちのいくつかを論じる。

有用性

視覚障害者及びディスレクシアのための録音団体(RFB&D)の、デジタル録音図書技術分野への参入とともに、全国的なレベルでのデジタル教材の有用性が著しく高まった。これらのデジタル教科書は、現在、構造的な音声フォーマットで利用できるようになっている。しかし、フルテキストかつフル音声の教科書の方が、更に広い範囲の消費者に対する、より高いレベルでの利用性を見込めるといえる。RFB&DのAudioPlusによる教材の、現時点での有用性のレベルが、将来の拡大計画とともに検討される。

プレゼンテーションではまた、National Library Serviceにおけるデジタル製品投入計画についての最新情報を提供し、更にBookshare.orgによる指導教材の有用性について概要を述べる。どちらも全国的な機関で、両機関を通じて代替フォーマットによる教材を利用することができる。州のレベルでは、州規模の共同体がいくつか組織されており、多くの場合これらの組織に権限を与える州法の制定により、活動が助成されている。このプレゼンテーションでは、そのような州の組織の例を二つ採り上げる。一つは新しく活動を始めた州レベルの組織であるケンタッキー指導教材協会で、もう一つは、カリフォルニア州立大学のシステム内に、ウェブ・ベースの電子テキスト保管所を作ろうという、現在行われている組織的な取り組みである。

代替フォーマットによる教材のデジタル・ライブラリーを作ろうという国や州の努力に加え、大学その他の教育機関でも、教育現場で使われる教材をデジタル教材で作ることは、それが単に教材をスキャンしてOCR技術を利用するだけであっても、或いはデジタル音声を使って朗読者の肉声を録音するだけであっても、極めて一般的なことである。このセッションでは、そのような事例として、東ケンタッキー大学におけるスキャンによる電子テキスト制作プログラムと、ケンタッキー州視覚障害者局で新たに始められた、ケンタッキー州の大学生に、構造的なフル音声のデジタル教科書を提供するというプログラムの二つの活動について、簡潔に概要を紹介する。

実用性とアクセシビリティーのレベル

デジタル教材を推し薦める要因の一つに、デジタル教材は大部分のユーザーにとって、ほとんどの場合、他教材と比べて非常に高い効果をもたらすという、ユーザー自身から出された理由がある。特に、フルテキスト、フル音声によるデジタル録音図書で可能なように、フル・デジタル音声かつフル・デジタル・テキストが、構造的な、リンクされた環境下でともに利用できる場合に、ユーザーが利用できる出力形態の選択肢の多様性を考えた場合、このことは明らかである。

このプレゼンテーションでは、合衆国商務省により資金提供を受け、RFB&Dによって実施された全国的な調査の結果をいくつか検討する。この調査では、学生はデジタル教科書を通常の教育課程の一部として利用した。更に、フォーマットの性質上、アクセシビリティー・レベルを本質的に高めることが可能なデジタル教科書の重要な要素について、何点か論じる予定である。この調査では、学生は純粋な学習環境の中でデジタル録音図書技術を利用し、通常のカリキュラムの範囲内で、各自が演習に必要な図書の提供を受けた。それまでのDTB(録音図書)消費者テストと異なり、これは全世界で初めて、この技術が教育の場面で利用された例である。この調査の参加者には、様々なタイプの、また程度の異なる、印刷物を読む障害がある学生達が含まれていた。大部分の学生参加者は、何らかの形の学習障害を抱えていたが、その一方で、割合は少ないが、全盲或いは弱視の学生もいた。この調査に参加した学校は、アリゾナ州立大学(アリゾナ州テンペ)、モンタナ大学(モンタナ州ミズーラ)、テキサス盲学校(テキサス州オースティン)、ヘンリー・M・ガン高校(カリフォルニア州パロアルト)、そして北デイド中学校(フロリダ州マイアミ)である。調査に参加した学生から集められた結果は、プレゼンテーションの中で紹介される。

法的な要素への取り組み

もう一つ重要な要素として、教科書出版社に義務を課すことを目的とした州の法律の出現があげられる。カリフォルニア、アーカンソー、ケンタッキー及びニューヨークなどの各州では、出版社に対し、教科書のアクセシブルな電子版を、印刷物を読む障害がある学生が必要とする際、その要求に応じて高等教育機関に提供することを義務づけた州法がある。このプレゼンテーションでは、教科書出版社自身が制作したデジタル教材の有用性と、これらの教材の典型的なアクセシビリティー・レベルについて論じる。