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開会挨拶

河村宏
DAISYコンソーシアム会長

 皆さん、こんにちは。今ご紹介いただきました河村です。アニカさん、よくいらっしゃいました。
 ご挨拶ということで簡単に申し上げたいと思うのですが、今日は大変すばらしい、1986年に東京で国際図書館連盟の大会(注)があったのですが、その時以来夢見ていたことが、今日みんなで話し合えるのかなと思って、楽しみにしています。
 どういうことかと言いますと、せっかく著作権法が今年の1月1日に変わりました。この著作権法のすばらしさは、すべての障害を持つ子どもが、その子どもが必要な形で本が読めるように権利を保障するということです。つまり、布の絵本も作れる。大活字の本も作れる。マルチメディアのDAISYの本も作れる。そして、それを図書館ができる。著者が協力してくれれば一番いいのですけれども、著者の協力が得られないときには図書館が著者の協力なしにも作ることができる、という画期的な新しい著作権法が私たちの手に入ったわけです。
 次は、この新しい条件をどうやって本当に生かして、地域の図書館、あるいは公民館とかいろいろなところに図書館が貸出をできますので、地域のあらゆる場所で、どんな子どもも最初に出会う本を、小さいうちに、学校にあがる前に出会える。そして、そういう楽しいものがある、あるいは自分の一生の宝になる物語と出会う、そういうことが初めて保障されるようになったということを、何とか実行に移す。そういう土台がやっとできて、そこに今日の会議があって。後ろのほうに、後で見せていただこうと思っているのですが、布の絵本や、あるいは視覚障害の子どもと晴眼の子どもが一緒に読める本とか、それから布の絵本はさまざまな障害のある子どもたちが楽しめる本ですね。
 どんな子どもも、最初の1冊、生涯の宝物になる最初の1冊に出会えるというチャンスを、いよいよ作れる。そのためには、では今どこまで製作、あるいは流通、そしてお互いに情報交換がどこまで進んでいるのだろうか。それを、スウェーデンのアニカさんと煮詰めながら、日本の国内でみんなで共有していくという大事な集まりだと思います。

 1986年という大昔の話から始めたのですが、当時、国際図書館連盟の大会が日本であるときに、視覚障害者の分科会を日本でやるかどうかということが、実は前の年の役員会で大いに議論になりました。ヨーロッパとアメリカの図書館員は、日本に行っても何も見るものがない。だから、どこかヨーロッパかアメリカでやろうと言いました。私は、ちょうどその役員会で、あまり英語もよくできなかったのですが、それは変だ。国際図書館連盟と言って、インターナショナルと言うのであれば、行かなければおかしいと言いました。そうしたら、デンマークの人間とオーストラリアの人間が応援演説をしてくれました。投票になって、1票差で日本でやることが決まりました。それで実際に日本でやった後、そのときには布の絵本、渡辺順子さんなどのご尽力で、布の絵本の展示ができたし、それから日本の当時の電子技術についてのセミナーも開くことができました。終わったときに、ヨーロッパ、あるいはアメリカから来た人たちがこもごも言っていたのは、来て本当に良かったと言っていました。
 そのとき私たちは、たくさんのことを世界中から学んだのですが、今もう1回、今日ここでアニカさんは、日本で進んでいることをヨーロッパに持って帰ってくれます。そして、ヨーロッパでどこまできているか。特にスカンジナビア諸国でどこまできているかということは、アニカさんから伺うことができると思います。そしてまた、新しい、今度はインターネットの時代ですので、いろいろな情報は昔よりも機敏に交換することができるようになります。そういう新しい条件を付加して、そしてこれから日本で、すべての子どもたちが就学前に自分の宝物となる1冊の本と出会う。そのことを目指した集まりになることを期待しまして、開会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。


【掲載者注】

注) 1986年8月24日に開催された”52nd IFLA General Conference Tokyo 1986”(IFLA東京大会)のこと。2006年10月13日(金)に図書館サポートフォーラムが「IFLA東京大会20周年記念懇話会」を行っており、当時の資料をその報告ページから見ることができる。
http://www.nichigai.co.jp/lib_support/event/ifla2.html