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障害のある人たちと新刊書・オーディオブックの中にいる彼らのいい友だちについて

このコンテンツは、ドイツの全国身体障害者連合会(Bundesverband für körper- und mehrfachbehinderte Menschen e.V.)が発行している雑誌『Das Band』(ドイツ語で「つながり」という意味)の2009年4月発行の第2号に掲載されていた、ドイツの障害をテーマとした児童書の紹介のページを翻訳し、ウェブ上で見やすくするために、見出しと書誌データをまとめて加えたものである。

「乗っているのが車椅子でも、あるいは気球でも、きみの想像力はそこから羽ばたいていくんだ……。」

ヘドヴィグ・カスター-ビーカー(Hedwig Kaster-Bieker)著

『リ...リ...リッシィは、な...な...なかまになりたい』

書名:『リ...リ...リッシィは、な...な...なかまになりたい(L-l-lissi will d-d-dazugehören)』
著者:モーナ・ユントゲン(Mona Jüntgen)
挿絵:ペトラ・クールマン(Petra Kuhlmann)
出版元:全国吃音者自助グループ協会出版部(Verlag der Bundesvereinigung Stotterer-Selbsthilfe e.V.)
現地価格:7.60ユーロ
対象年齢:6歳

ひとはみんなそれぞれに異なっている。けれども、その異なった存在を受け入れることというのは、いつでも簡単にいくとは限らない。もちろん子どもの場合も、自分や仲間がどうやってその弱みを受け入れていくかがわかって初めて、やっとこの発見という体験をすることができる。モーナ・ユントゲンは吃音のある少女の身になってみた。

『リ...リ...リッシィは、な...な...なかまになりたい』(全国吃音者自助グループ協会出版部より7.60ユーロで発売されている。対象は6歳から。)では、やっぱり少女リッシィはいつでも過度に引っ込み思案だった。なぜなら彼女の同級生ばかりか先生も、みんな彼女の吃音問題について、誰ひとり適切な対応をしていなかったから。1人だけ、親切なおもちゃ屋さんだけが彼女をすぐに理解した。なぜなら彼も同じハンディキャップを持っていたからである。

リッシィは、そのおもちゃ屋さんの男性が自分の吃音と楽しげにつきあっている様子にとても驚いた。そして彼にリッシィと同い年の親切な娘がいると知って、彼女はほんとうに完璧にしあわせになった。

このペトラ・クールマンが挿絵を描いている絵本には、さらに吃音の子どもたちの親たちに向けた役立つ助言集も補足されている。

『アトピー探偵団』

書名:『アトピー探偵団(Die Neurodermitis-Detektive)』
著者:ダグマー・M・ミュラー(Dagmar H.Mueller)
挿絵:マティアス・ウェーバー(Mathias Weber)
出版社:ユーバーロイター社下アネッテ・ベッツ出版(Anette Betz Verlag bei Ueberreuter)
現地価格:12.95ユーロ
対象年齢:5歳

吃音と同じように、慢性の皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎もまた、多くの子どもたちを孤立させがちなひとつのハンディキャップである。

ダグマー・H・ミュラー著、マティアス・ウェーバーが挿絵を描いている絵本の『アトピー探偵団』(ユーバーロイター社下アネッテ・ベッツ出版より12.95ユーロで発売されている。対象は5歳から。)では、子ども向けの読み物として、リッツィがいかにこの痒くて痛いこの病とともに生きているかが書かれている。理解に満ちた両親と、まったく同じ病気で知り合った同い年の少年との遊びが、この作品の中心的な主役を担っている。

『ともだち』

書名:『ともだち(Ein Freund)』
著者:アネッテ・ブライ(Anette Bley)
挿絵:同上
出版社:ラーヴェンスブルガー出版(Ravensburger Buchverlag)
現地価格:12.95ユーロ
対象年齢:3歳

よい友人がすぐ側にいるひとは、喜びもかなしみもお互いに分けあうことができる。アネッテ・ブライは、友情というテーマに1冊丸ごとをかけた。

『ともだち』(ラーヴェンスブルガー出版より12.95ユーロで発売されている。対象は3歳から。)では、まったく対照的な人びとが出てきて、それぞれの理想の友だちを紹介している。

この本は一貫しておかしみのある挿絵で描かれているのだが、一方では、「ええと、わたしは、わたしの木の脚(Holzbein)にやすりをかけてくれる人がいいな。」と言っている海賊と車椅子に乗ったその娘がいる。もう一方では、老人が「私にときどき離乳食を一瓶、薬局で買ってくれる人がいいな。」と望んでいる。

『おばあちゃんが奇妙になったとき』

書名:『おばあちゃんが奇妙になったとき(Als Oma seltsam wurde)』
著者:ウルフ・ニルソン(Ulf Nilsson)
挿絵:エヴァ・エリクソン(Eva Eriksson)
出版社:モーリッツ出版(Moritz Verlag)
現地価格:12.80ユーロ
対象年齢:4歳

そう、たしかに人々は年をとるにつれて、その歯だけでなくときには頭の中身もいくらか失ってしまう。それまで気にかけていた、その人生を構成してきたものが流れ去ってしまうかもしれないのだ。

認知症というのがこの老化現象の名前であり、それを患ったひとはひどく当惑し傷ついてしまう。『おばあちゃんが奇妙になったとき』(モーリッツ出版より12.80ユーロで発売されている。対象は4歳から。)の著者ウルフ・ニルソンは、幼い孫の少年の目線で、彼のおばあちゃんが初めて疑い深くなって混乱したときの様子を語っている。

エヴァ・エリクソンが陽気な調子で描いた挿絵は、この本の哀しいテーマから明るい一面を引き出すことに成功している。というのも薬を飲むと、おばあちゃんはふたたび落ち着きを取り戻したからだ。それでも迫る影は存在したままである。

『ママのかいぶつ』

書名:『ママのかいぶつ(Mamas Monster)』
著者:エルドムート・フォン・モッシュ(Erdmute von Mosch)
出版社:バランスブック+メディアン社(BALANCE Buch + medien verlag)
現地価格:12.95ユーロ
対象年齢:3歳

いったいお母さんはどうしちゃったんだろう、とちいさな少女リーケは、エルドムート・フォン・モッシュ著『ママのかいぶつ』(バランスブック+メディアン社より12.95ユーロで発売されている。対象は3歳から。)の中で、ひとり自問している。

リーケのお母さんはもう娘と一緒に遊ぼうとしないで、ただ独りで哀しそうに、だるそうにしてソファーやベッドに横たわっている。お母さんがほんの少し調子がよかったころには、1匹の「抑鬱」という名前の怪物がときどきお母さんを参らせてしまうということを、娘に思いやりのある様子で語って聞かせることもできたのだ。

残念なことだがしばしばタブーとされる鬱というテーマについて、この子どもにも読みやすい本では、短い説明と役に立つ情報の連絡先が補足されている。

『色についてのくろい本』

書名:『色についてのくろい本(Das schwarze Buch der Farben)』
著者:メナーナ・コッティン(Menana Cottin)
挿絵:ロザンナ・ファリア(Rosana Faría)
出版社:フィッシャー・シャッツインゼル社(Fischer Schatzinsel)
現地価格:16.90ユーロ
対象年齢:5歳

この1月で、点字の発案者であるルイ・ブライユは生誕200年を迎えた。それを契機に、ドイツ語で『色についてのくろい本』(フィッシャー・シャッツインゼル社より16.90ユーロで発売されている。対象は5歳から。)が出版された。著者のメナーナ・コッティンとロザンナ・ファリアは、この作品で国際的に優れた絵本に贈られる2007年のボローニャ・ラガッツィ賞にノミネートされた。

ほんのわずかな白地の活字以外は本全体が真っ黒である。どのページにも両面に短い文が記されており、印刷活字とブライユ式点字のどちらの方法でも、ひとりの盲目の少年が色を表現しているこの本の内容について読むことができる。赤は、たとえば彼にとって「まるで苺のように甘くて、スイカのように瑞々しい。そして擦りむいた膝をいじったら痛いよ。」

その向かい合った反対側のページに描かれた挿絵は、黒いつやのある凹凸のある印刷で構成されていて、文で表現されている苺を、見えるひとが見て理解するように、盲目の人にも手でさわってもらえるようになっている。ブライユ式点字のアルファベットと数字がこのすばらしい本をさらに完璧にしている。


掲載者注:
本書は、下記のページからフルテキストDAISY版をダウンロードすることができる。

Das DAISY-Buch zum Download:
Menena Cottin und Rosana Faria:
"Das schwarze Buch der Farben"
http://www.argon-verlag.de/farben/

『ハイジ』と『秘密の花園』の新刊本

2つの古典で、同じくちいさな車椅子に乗った子どもが主人公の作品が、数多くの出版社から新たに発行されることになった。ヨハンナ・スピリ著『ハイジ』(1880年発行)とフランシス・H・バーネット著の『秘密の花園』は、ともにその魅力が今もまったく色褪せていない。

『ハイジ』について

両親を失ったハイジは、可愛がってくれるおじいさんに連れられ、脚の不自由なクララと親しく相手をするためにフランクフルトに行ったことで有名である。ハイジはとても強いホームシックになったが、だんだん持ち前の生きる喜びを次第に周りにうつしていった。そればかりか、このスイスの少女ははじめてクララが親しく抱き合うことが許されただけでなく、クララの初めての外出を手伝って、とうとうついには車椅子を離れられるようにしたのである。

新版『ハイジ』

書名:『ハイジ(Heidi)』 原著者:ヨハンナ・スピリ(Johanna Spyri)
著者:ペーター・シュタム(Peter Stamm)
挿絵:ハンス・ビンダー(Hannes Binder)
出版社:ハンザー社下ナーゲル&キムヒェ出版(Nagel & Kimche bei Hanser)
現地価格:16.90ユーロ
対象年齢:4歳

新版の『ハイジ』はペーター・シュタムが語り起こし、スイスの有名なイラストレーターであるハンス・ビンダーが挿絵を描いている。彼の絵はそのリアルな表現と不思議な遠近法が、観る者に強い印象を与えている。

特にすばらしいのは、例えばクララが座っている車椅子である。彼はたったの三輪しか描いていないので、古めかしいようにも、また新しいようにも見える。(ハンザー社下ナーゲル&キムヒェ出版から、16.90ユーロで発売されている。対象は4歳から。)

新版『ハイジは学んだことをつかうことができた』

書名:『ハイジは学んだことをつかうことができた(Heidi kann brauchen, was es gelernt hat)』
原著者:ヨハンナ・スピリ(Johanna Spyri)
著者:リセ・ビンディヒ(Lise Bindig)
挿絵:ダニエル・ウィンターハーガー(Daniele Winterhager)
出版社(書籍):アリーナ社(Arena)
出版社(オーディオブック):ジャンボ社(Jumbo)
現地価格:書籍とオーディオブックそれぞれ10.95ユーロ
対象年齢:5歳
*『ハイジは学んだことをつかうことができた(Heidi kann brauchen, was es gelernt hat)』は、ハイジの第2部の原題である。

あと2冊の新しい『ハイジ』の関連書は、書籍と同時にオーディオブックでも発売になった。『ハイジは学んだことをつかうことができた』(アリーナ社より書籍が、オーディオブックはジャンボ社より発売。CD1枚、それぞれ10.95ユーロ、対象は5歳から。)は、リセ・ビンディヒが語り起こし、ダニエル・ウィンターハーガーが挿絵を描いている。

表紙のイラストで、すでにハッピーエンドの結末が先取りして描かれている。というのも、クララが微笑んでハイジの隣にまっすぐに立っているのだ。そしてその奥には今は誰もつかっていない空っぽの車椅子があるのを見ることができる。これまたすてきなまでに古めかしい型のものが。

そのほかの新版『ハイジ』

書名:『ハイジ(Heidi)』
著者:ヨハンナ・スピリ(Johanna Spyri)
挿絵:なし
出版社:ユーバーロイター社(Ueberreuter)
シリーズ:クラシックブックシリーズ(Reihe "Classiker" Buch)
現地価格:書籍は7.95ユーロ、CDは9.95ユーロ
対象年齢:少し年長の子ども向け

『ハイジ』はまだそのほかにも、挿絵のないかたちで新たに出版されている。(ユーバーロイター社の古典シリーズより発売されている。書籍が7.95ユーロ、CDは2枚組で9.95ユーロ。)ほとんど原典の要約がないので、このシリーズはもう少し大きな子ども向けである。

『秘密の花園』について

ちょうど100年前、イギリスの女流作家フランシス・H・バーネットの『秘密の花園』の初版が発売になった。この物語はハイジとクララのそれにとてもよく似ている。

お金持ちだけれど、孤独なコリン少年は毎日を家政婦さんに世話をしてもらいながら、主に薄暗い部屋で過ごしていた。この母を亡くした子どもは、もう早いうちからあるひとつのおこり得る「酷いこと」を恐れ、自分が早く死ぬと信じ込んでいた。

コリンはありとあらゆる刺激を過敏に恐れていたが、彼のいとこのメアリーが、自然の、それもとりわけ訪れるひとのいない花園に生い茂る自然の美しさに目覚めさせてくれたのだ。そうしてそこへコリンは足繁く通うようになり、ようやくそこで車椅子を手放す決心をしたのである。メアリーはコリンにこう説得したのだ。「新鮮な空気と太陽のひかりは、どんなお薬よりもいいものよ。」それは大体正しいけれども、いつもそうとは限らないのだが。

2点の新版『秘密の花園』

書名:『秘密の花園(Der geheime Garten)』
原著者:フランシス・H・バーネット(Frances H. Burnett)
著者:マリアンヌ・ロイビー(Marianne Loibi)
挿絵:ベッティーナ・ゴッツェン-ビーク(Betina Gotzen-Beek)
出版社:コッペンラー社(Coppenrath)
現地価格:14.95ユーロ
対象年齢:5歳

書名:『秘密の花園(Der geheime Garten)』
原著者:フランシス・H・バーネット(Frances H. Burnett)
著者:インガ・ムーア(Inga Moore)
挿絵:同上
出版社:フライエス・ガイステスレーベン社(Verlag Freies Geistesleben)
現地価格:22.90ユーロ
対象年齢:5歳

2点の美しい新刊が『秘密の花園』を再発見させてくれる。マリアンネ・ロイブルが語り起こしており、ベッティーナ・ゴッツェン-ビーク挿絵、コッペンラー社刊(14.95ユーロ、対象は5歳から。)のものと、簡略されたインガ・ムーアの描く挿絵が豊富なものが、フライエス・ガイステスレーベン社より発売されている。(22.9ユーロ、対象は5歳から。)

『ハンノは竜の絵を描いた』

書名:『ハンノは竜の絵を描いた(Hanno malt sich einen Drachen)』
著者:イリーナ・コルシュノワ(Irina Korschunow)
朗読:イェンス・ワーウルツェフ(Jens Wawrczeck)
出版社:ヒョァブーフ・ハンブルグ(Hörbuch Hamburg)
録音時間:47分
現地価格:7.95ユーロ
対象年齢:7歳

今やオーディオブックは子ども部屋にしっかりと場を占めている。そしてまた新たにいくつかの古典がオーディオブックとして発売された。イリーナ・コルシュノワ著の『ハンノは竜の絵を描いた』(ヒョァブーフ・ハンブルグ社より要約なしで発売されている。CD1枚、イェンス・ワーウルツェフによる朗読で、録音時間47分。7.95ユーロ、対象は7歳から。)は、長いあいだ児童書の古典として親しまれてきた。たとえ30歳を越えていようと、ふとっちょの子どもだとからかわれているこのちいさなハンノは、まだその力を失ってはいない。彼を窮地から救ってくれた1匹の竜が、次第にハンノの自尊心を高めていくのだ。

『リーコとオスカーともっと深い影』

書名:『リーコとオスカーともっと深い影(Rico, Osker und die Tieferschatten)』
著者:アンドレアス・シュタインヘーフェル(Andreas Steinhöfel)
朗読:同上(作者自身による省略要約なしの朗読)
出版社:ヒョァブーフ・ハンブルグ社(Hörbuch Hamburg)
録音時間:239分
現地価格:19.95ユーロ
対象年齢:記載なし

『リーコとオスカーともっと深い影』は、学びに困難さをもつリーコと、才能に恵まれたオスカーとの感動的な友情物語である。今また、要約ではなく原典通りに新たに著者のアンドレアス・シュタインヘーフェル自身が朗読したオーディオブックも発売された。彼女は2008年の4月のhr2-Bestenlisteの首位を獲得した。(ヒョアブーフ・ハンブルグ社より発売。CD4枚組、録音時間239分。19.95ユーロ)

『蝶々のキス』

書名:『蝶々のキス(Schmetteringsküsschen)』
著者:ウーテ・クレーベルグ(Ute Kleeberg)
朗読:エヴァ・マッテス(Eva Mattes)
出版社:エディション・ズィーゲル社(Deition Seeigel)
録音時間:60分
現地価格:12.90ユーロ
対象年齢:5歳

障害のある子どもとない子どもの共同授業(integrativen Tagesgruppe)に通う2人の子どもたちは、最初、互いをまったく好きになれなかった。そう、エミールは車椅子に座っているエミリーのことを「かたわの牝牛」と罵倒したので、彼女はかんかんに怒ってさらにまた、彼のことをでたらめな絵しか描けないといった。ウーテ・クレーベルグ著のこのすばらしい物語『蝶々のキス』は、副題によると、慣れない者を受けいれる知恵について書かれている。子どもたちはだんだん相手の強い一面や、魅力的な一面を知るようになっていく。フェリックス・メンデルスゾーン・バルソロジーやマックス・ブルッフのように有名な作曲家の曲の一部が使われていて、この作品を親しみやすくするすばらしい助けになっている。

案内役はエヴァ・マッテスが勝ち取ることができた。『蝶々のキス』は美しく、すばらしいオーディオブックで、対象は5歳からである。(エディション・ズィーゲル社より発売。CD1枚、録音時間60分、12.90ユーロ)

『エレア・エルアンダ』

書名:『エレア・エルアンダ(Elea Eluanda)』
著者:エルフィ・ドネリー(Elfie Donnerlly)
出版社:キディンク社(Kiddinx)
現地価格:1巻5.95ユーロ
対象年齢:7歳

きっと彼女は間違いなく――それが少なくとも小さな子どものいる家庭なら、ドイツで一番有名な車椅子の少女に違いない。それが『エレア・エルアンダ』である。20巻を越えるシリーズで活躍し、その間のここ数年間大人気のオーディオブックシリーズのヒロインを務めてきた。その原作を描いたのがエルフィ・ドネリーである。(キディンク社より各CDは1枚5.95ユーロで発売されている。対象は7歳から)

エレアはある交通事故で両親を失って自分も重症を負ったので、今は車椅子で過ごしている。彼女はアルテンベルグで少々ちらかった本屋を営んでいるおばさんのところで暮らしている。おばさんには信頼できる友だちがたくさんいた。ときどき、それでもエレアはその親友のフクロウ、エゼキエルと一緒に夢の国へ逃避行をする。そこでなら、彼女はごく普通に歩けるから。しかし彼女がほんとうの人生でのハンディキャップを、少しずつふつうに受けいれることが日常でできるようになると、エレアは魔法の車椅子をもう使わなくなっていった。

この2つのタイトル「消えたことば(Die verschwundenen Wörter)」(シリーズ22巻)と「気をつけて、にきび警報よ!(Achtung, Pickelalarm!)」(同、23巻)は、いつものようににぎやかな物語で、たくさんの混乱が起こるのだが、魔法の呪文によって、それらは解決する。ハッピーエンドは保証つきである。

そして、何度も続けて聴くうちにそのテーマ曲も、耳について忘れられなくなるだろう。 「乗っていてるのが車椅子でも、あるいは気球でも、きみの想像力はそこから羽ばたいていくんだ……。」

▼執筆者のヘドヴィグ・カスター-ビーカー氏は、幼児から青少年を対象とした本を専門とする評論家で、特に「障害」をテーマとして取り組んでいる。


原本情報

Kaster-Biker, Hedwig. "Im Rollstuhl oder im Ballon fliegt deine Fantasie davon...". Das Band. 2/09 (April): Geschwister. 2009.4, p.30-31.
http://www.bvkm.de/0-10/zeitschriften,dasband.html

掲載者注

ここで紹介されている本のうち、現在、日本語訳されているのは、『ハイジ』と『秘密の花園』と『リーコとオスカーともっと深い影(Rico, Osker und die Tieferschatten)』である。

アンドレアス・シュタイン・ヘーフェル作,森川弘子訳.リーコとオスカーともっと深い影.岩波書店,2009.4,284p.

『ハイジ』と『秘密の花園』は多数あるためここでは書誌データは割愛する。