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知的財産立国に向けた著作権制度の改善に関する調査研究

―情報通信技術の進展に対応した海外の著作権制度について―

三井情報開発株式会社 総合研究所
平成18年3月

第2章 調査結果

I.権利制限規定

2.障害者福祉

(1)総論

(a) イギリス

2002年、Copyright, Designs and Patents Act 1988の31A条~31F条において、視覚障害者に対する著作権上の規定が定められた(Copyright (Visually Impaired Persons) Act 2002と題されている)。(⇒資料7「Copyright (Visually Impaired Persons) Act 2002」参照)

ホームページ:http://www.opsi.gov.uk/ACTS/acts2002/ukpga_20020033_en_1

この中では、視覚障害者による私的使用目的の単一複製、視覚障害者のための団体の複数複製などが認められており、視覚障害者の文学作品、演劇作品、美術作品等へのアクセス可能性 を担保している。ただし、この規定は、専ら視覚障害者を対象としており、聴覚障害者、および知的障害者に対する著作権法上の特例を定めるものではない。

(b) フランス

現段階において、Code de la propriete intellectuelleには、障害者に対する著作権上の例外規定はない。ただし、身体障害者の作品へのアクセスを容易にする制度設計を勧める、EUのThe Copyright Directive (2001/29/EC) 43条 注釈5 の国内法化の議論が行われているところである。 (⇒資料8「Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the Council of 22 May 2001 on the Harmonisation of Certain Aspects of Copyright and Related Rights in the Information Society」参照)

(c) ドイツ

Urheberrechtsgesetzの45条a項に、知覚障害者のための複製に関する例外規定が設けられている。

(d) アメリカ

1996年、Copyright Law of the United States of Americaの121条において、視覚障害者、およびその他の障害者のための複製に関する例外規定が定められた。

(e) カナダ

1997年、CNIB(the Canadian National Institute for the Blind)および視覚障害者たちの熱心なロビー活動の結果、Copyright Actが改正され、知覚障害者のための作品の翻案に関する例外規定(32条(1)項)が定められた。 (⇒資料9 IFLA(International Federation of Library Associations and Institutions)ホームページ参照)

ホームページ:http://www.ifla.org/index.htm(英語)

(f) スウェーデン

2005年、EUのThe Copyright Directive (2001/29/EC)に従った新法が制定され、Act On Copyright In Literary And Artistic Worksの第17条で障害者のための複製に関する例外規定が定められた。(⇒資料10 IFLA(International Federation of Library Associations and Institutions)ホームページ参照)

ホームページ:http://www.ifla.org/index.htm(英語)

(g) オーストラリア

Copyright Actにおいて、視覚障害者支援団体による著作物の複製および伝達に関する規定(135ZN条、135ZP条、135ZQ条)、知的障害者支援団体による著作物の複製および伝達に関する規定(135ZR条、135ZS条、135ZT条)が定められている。


5 「加盟国が、自ら作品の使用に妨げとなる身体障害を有する者が、作品にアクセスすることを容易にする全ての必要な手段を採用し、アクセス可能な形態に念入りな注意を払うことが、いかなる場合にも重要である。」と規定されている。