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意見交換

河村●
それではバトンタッチいたしまして、これから意見交換のコーディネーターをさせていただきたいと思います。今、既に発言用紙をこちらにいただいている方と今、書いておられる方もおられると思うのですね。ですから発言通知用紙が書き上がり次第、手を挙げてスタッフにお渡しください。そして順次こちらに。皆さん集中しておられて、なかなか書く時間がなかった、あるいは視覚障害の方でスタッフの手伝いが必要な方は、手を挙げてください。ほかに書きにくいことがありましたらご遠慮なく、スタッフに支援を求めていただきたいと思います。
それでは既にご質問とご意見、それぞれいただいていますので、まずご質問の方からご発言をいただきたいと思います。当然、ご意見も合わせておありという場合には、両方含めましてお願いしたいと思います。
では、山本香苗先生から、ご質問とご意見をいただいています。よろしくお願いいたします。

山本香苗●
国会図書館の方に二点、お伺いをさせていただきたいと思います。一つは、今ご説明いただいたわけですが、今回の法改正、先ほど来お話があるように「視覚障害のみ」から「発達障害の方も」ということなのですが、説明の中では視覚障害の方の配信システムは言及されたのですけれども、その他の方々に対してどういう取り組みで施行までの間に周知をされていくのか、どういう取り組みを具体的に今なされているのかというのが一点。
二点目が、まさしくDAISY図書、そこにいらっしゃるほとんどの皆さん方がそれぞれのニーズに合わせてできるような形にするのが国会図書館の役目だと思っているのですが、DAISY図書に対してどういう取り組みをされていくのか。文科省とはどうにか教科書については、館長とも話させていただきましたけれども、教科書はもちろん文科省が責任を持ってやることではありますが、二つが一緒にやることでより相乗効果が出て早くできる、効率的なところもあるわけです。その点を具体的にどこまで進んだのか、教えていただきたいと思います。

河村●
ありがとうございました。それではマイクをお回ししますので、田中さん、よろしくお願いいたします。

田中●
ご質問の一点目は視覚障害者以外の方へのサービスということですね。私ども、現在やっているのは、学術文献の録音図書の作成という事業をやっていまして、そこから広がってということで考えています。基本的に公共図書館等の地域の図書館等でサービスをする、そこが十分対応できない部分について国の図書館として国会図書館が重点的にやるべきことを進めていくというのが私たちの基本的な位置ではないかと。国全体のアクセシビリティを保障する責務はもちろん国の図書館としてあるわけですけれども、そういう部分で、視覚障害者へのサービスというところでは、今回、従来やってきたものをさらに広げて、公共図書館等で今後作られるいろいろな録音図書、資料等の保存と配信・提供のネットワーク作りを今後、視野に入れて検討を進めたいということです。
それから、視覚障害者以外の聴覚障害者等へのサービスというところでは、現状、今現在サービスについて具体的にこうするという点については、今までまったく取り組みをしておりません。それは大変申し訳ないのですが、しておりません。今後、公共図書館等とのサービスの分担の中で、ここは国会図書館がやらなければいけないというところがはっきりした時点で具体的な取り組みを進めて検討していくというのが今の状況でございます。

DAISY資料のことにつきまして、教科書については文科省の方でまず一次的に対応していただくというところで、いろいろご相談させていただいているというところですが、今まで録音資料について、私どもは録音DAISYという形で、学術文献を中心としてきているのですけれども、そこを今後広げていくというところで、どういうフォーマット、どういうやり方がいいのかということも含めて今、調査検討を。補正予算の一部を使って実施していく。今年度中に報告をまとめていくという状況でございます。

河村●
田中さん、ありがとうございました。今の質問にご回答をいただいたのですけれども、山本先生?

山本●
言いたいことはたくさんありますが。

河村●
時間の関係もあるので、お一言にまとめていただけますでしょうか?

山本●
一言で申し上げれば、もう少し前に出ていただきたいのですね。何かやっていて、最後の補足的なところを国会図書館がやるという役割ではなくて、本来、利用と保存のうち、利用が大事なところなのですよね。後で別途いろいろ話をさせていただきたいと思いますが、せっかく今日は関係者が集まっていらっしゃって、これだけご意見も出たわけですので、ぜひ今日の会合も含めた結果を、国会図書館でこういう形で対応しますというのを目に見える形で示していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
(拍手)

河村●
どうもありがとうございました。それでは、一つひとつ短い時間しかとれなくて申し訳ないのですけれども、先に進めさせていただきます。続きまして質問が来ております。藤本様、これは特に誰への質問ということにはなっていないのですが、藤本様、これは誰に対する質問ですか?

藤本●
著作権法のことに回答できる方ならどなたでも。

河村●
わかりました。そうしましたら今日の発表者への直接の質問、あるいはご意見を先にいかせていただいて、その後でもう一回戻らせていただきます。それでは先に進めさせていただきまして、この後はご意見になりますが、衆議院議員の城内実先生からご意見をいただいています。城内先生、マイクをお願いします。

城内●
静岡7区選出の城内実であります。来年1月1日から改正著作権法が施行されるということですが、やはり著作権をある程度制限できたのはよいのですが、インターネットにおける映像についてはダメだとか、まだまだ課題がたくさんあると思うのです。例えば個人的な話をしますと、私の後援会副会長は障害者の方でありまして、メールでいろいろコミュニケーションをしているのですけれども、彼が言うのは、バリアフリーといってもコンテンツの面でのバリアフリーが本当に不十分であるということであります。この点について、私は文部科学委員会の委員ですので、著作権者の権利を守るのもいいのですけれども、これからまさに障害者に対する実質的なバリアフリーを推進する上でも、コンテンツ面でもしっかりともっと著作権を制限していかなければと強く感じている次第であります。私も微力ながら文部科学委員会で質問等をし、あるいは文部科学省、文化庁等にも働きかけて、どんどんやっていきたい。
私はヨーロッパに10年ほどおりましたヨーロッパと比べると日本は、障害者の方に対する配慮はまだ遅れているのが現状ではないかと思います。G8のメンバーなのですから、障害者の方に対する配慮も先進国並みに高めていくのが、これからの日本の課題であると確信しています。
(拍手)

河村●
ありがとうございました。あと、国会議員の先生方、大変お忙しくて、いらしても、すぐ出ていかなければいけないという方が多いと思うのですが、井戸先生は何かご発言いただけますでしょうか。

井戸●
今日は途中になって申し訳ございません。先日はDAISY教科書の普及についていろいろとレクチャーを受けさせていただいて、私も親の一人として、とにかく一刻も早くこれをしていかなければいけないのではないかと思っています。
子どもたちの学ぶ機会を、この教科書があれば、皆さんと同じように持つことができるのですが、いわゆる出版物だと読めない子たちがデジタルなものを見ると、本当に水を得た魚のように引き込まれ、そして学習が進むこと、親の会の皆さんも実感しているところでもあると思うので、ぜひともお願いしたい。
あと、やはりこういうことをやるのに全部ボランティアの方々が支えているのには、なかなか限界があると思うのですよね。なのできっちりとその辺にも財政措置をしていかなければいけないということも感じておりますので、私たちも一丸となって頑張ってまいりますので、今後ともいろいろ教えてください。ありがとうございました。
(拍手)

河村●
ありがとうございました。今、発言通知をいただいている中に、障害をお持ちの方、上肢障害のお立場の方と、発達障害のご本人のお立場の方から通知をいただいています。先に熊谷晋一郎様、マイクを回しますのでご発言ください。

熊谷●
初めまして、熊谷晋一郎と申します。私は脳性マヒという障害で今、小児科医をやっている者なのですけれども。今日は読書に関する障害ということでお話をさせていただければと思います。
私は読書、読みに関して障害があるという自覚は特に持たずにずっとやってきたのですが、最近になって、ものを書く機会が少し増えてきまして、今まで以上に読み込まなければいけない機会が増えてきました。そんな中で読書量が増えていくと、だんだん二次障害というか、首がしびれてきたり肩がしびれてきたり、手が動きにくくなったり、そういうことを結構最近経験したのです。やはり顕在化はしていなかったけれど、やはり読むという行為は、単なるインプット行為だけでなく、アウトプットというか、動的な要素もかなり大きい行為なのだなということを痛感したばかりです。特に論文や教科書を読まなければいけない状況に置かれると、それが顕在化してくるのだなと思いました。
あと、内容を理解するというインプット面に関しても、アンダーラインを引くであるとか付箋を貼るであるとか、あるいは文章全体、テキスト全体の構成を確認であるとか、そういうときに案外ダイナミックな動的な運動機能を使っているなという感じがします。例えば論文が20ページにわたってあるとすると、それを頭の中に入れるのはすごく大変で、机の上にばらまいて全体の構成を確認するということをやっているのだなと思いました。
ですので、身体にあったインターフェースを確保するためにも、テキストの電子化には期待を持っています。以上です。

河村●
どうもありがとうございました。続きまして、綾屋様。お願いいたします。

(通訳)●
発声障害があるので、代読していただければ幸いですとのことです。紙をいったん返していただいて、手話通訳をしていただければと思います。

綾屋●
私は発達障害の本人です。日本語はまあまあ読むことはできますけれども、英語のときは非常に難しくなります。
教科書を読めない、本が読みにくいなどの「読めない」ことの先には、講義に参加できない、学校に通えない、頑張りすぎて体を壊してしまう、高校・大学の受験ができないなど、人生すべてに関わる問題があり、私はそれらを経験してきました。
また、発達障害や学習障害というのは本人もわけがわからず、解決方法もわからないまま、自分の責任だと思って、自分を責めてしまうということがあります。
ですから、識字障害やデイジーのことを普及していくことも大切だと思います。
以上です。ありがとうございました。
(拍手)

河村●
ありがとうございました。それでは、もう一つ発言通知がまいっております。大嶋さん、よろしくお願いします。

大嶋●
CS障害者放送統一機構の大嶋です。聴覚障害者の皆さんがどういう要望をしておられるか。実は15ページ以降、つまり16ページ以降に「著作権に対する要望」、そして次に「総務大臣に対する要望」を添付しています。なお、現在の政権のマニフェストも添付させていただいています。
一点だけ、発言します。今、聴覚障害者の皆さんは先ほど示した資料に基づいて聴覚障害者組織及び関係組織全員が一致した要望として、この資料をそれぞれ政府に提出しています。これらは今日まで、継続的に長年にわたって要望してきたものが大半です。しかし実現してこなかったというのが現実です。ぜひとも、今回、実現をしていただきたいということで発言したいと思います。
今回の著作権法の改正では、手話の送信というものを認めました。これは一つの前進だと思います。問題は、この改正された著作権法を大いに活用して実際に手話を送信するということが必要です。そこで、問題があるわけですけれども、発言の中にもありましたが、現在日本が進めているデジタル放送は、手話を付与して放送する技術がありません。それだけでなく、この放送基準は、総務大臣認定の団体が規定しているARIB基準というものの中のRT-D14というところで明確に規定されているのです。つまり規定されていて、そのとおりやることによって技術的に不可能ということになっています。ですから今、どうしようとしても不可能。これは、メーカー及びテレビ局とのいろいろな話し合いの中でも認められています。それはできないと認めています。この規定はお互いに確認していることであるとはっきり述べています。
つまり日本が現在進めているデジタル放送、南米でも今広がろうとしていますが、これでは手話の付与放送ができないのです。ですから改正著作権法を、大量に情報を流している現在のデジタル放送でどう実行するかは大きな問題だと思います。

日本で手話の放送ができるのは、私どもがやっている「目で聴くテレビ」のいわゆるPIP機能だけであるということ、そのことも放送局は認めています。ですから私どもが代わって補完放送をやりましょうということを長年にわたって提案してきました。ようやく先日、総務副大臣とも話して、聞いていただけるところまできました。ぜひとも、これを実現していただきたいというのが、障害者の皆さんの先ほどの発言の主旨です。よろしくお願いしたいと思います。
(拍手)

河村●
ありがとうございました。続きまして宇野さんから、「著作権法と教科書」のことについて、ご意見の通知を受けています。お願いします。

宇野●
筑波大学附属盲学校の宇野と申します。まず、著作権について本当はどうあるべきなのかということと教科書の問題についてコメントさせていただきます。
まず著作権法上の今回取り残された課題の一つに、石川先生は触れられませんでしたが、政令の中で音声及び利用可能な手段に変えることができるというものを、政令で指定していることそのものがやはりアンバランスというか、均衡を欠いてしまう原因になるのではないかと思っています。

と言いますのは、政令で今回、公共図書館、国会図書館等が加わりましたが、実は社会福祉協議会とか地域で活躍されている音訳ボランティアの方々というのは、この政令には入っていません。しかし障害者に対して、音声での情報提供をしているのは同じです。このような方々は相変わらず著作権者に許諾を得なければ音声図書などが作れないという状況が残っています。
そもそも、情報アクセス権とか読書権を考えた場合に、なぜ政令で定められた人だけが無許諾で作業できるのか、これは障害者の情報アクセス権を阻害する一つの要因になっていると思います。

よって、政令ですべてを書き込むのが難しければ、そもそも政令で定めるというスタイルそのものを見直してはどうかと思います。
それから、先ほど聴覚障害関係の方もいろいろおっしゃっていましたが、それらは恐らく著作権法だけで解決できる問題ではないだろうと思います。確かに著作権の制限という方法で、著作権者の発信については解決できると思うのですが、ではそれをどのように流通させたり、誰がどのように媒体を変換するのかということについては、著作権法というよりは情報バリアフリー、読書バリアフリー関連として新たな制度設計が必要なのではないかと思います。聴覚障害については、放送法の改正もあるかと思いますが。そういうことも併せて必要なのではないかと思います。

ちょっと大きな話をしてしまいますが、本来、読書や情報アクセスというのは、いわば人間の基本的人権の一つだと思います。本来であれば、憲法に情報アクセス権やコミュニケーション権というものが基本的人権の1つとして規定されていれば、そのような立法体系の中で障害者の権利も位置づけやすいと思うのですが、現実はそうではありません。そこで発信者側の権利を規定する著作権法と同じように、受信者側の権利を確立するような読書権や情報アクセス権を確立する立法体系ができないかと願っております。
それから、DAISY教科書というお話が出ていましたが、私は拡大教科書の問題に今まで取り組んできました。昨年、文科省の中に拡大教科書普及推進会議という会議があり、その委員もさせていただきました。教科書会社から文部科学大臣に教科書データを提出しなければならないという教科書バリアフリー法も作っていただきました。そこでどういうデータを出していただくかということで様々な議論がありましたが、現在、多くの教科書出版社が作っているデータというのは、In Design(インデザイン)やQuark XPress(クォーク・エクスプレス)という専門のDTPソフトです。ここからどういうふうにマルチユースを展開するかということが課題なのですが、データ変換についてはかなり出版社側が抵抗しているというのが実情ですので、その辺をどう乗り越えていくかというのがこれからの課題だと思います。

それからもう一つ、これは明らかに法制度上の課題なのですが、教科用図書という「図書」の定義が、実は紙を綴じたものという定義になっているそうです。それで、CDは、図書ではないという解釈が教科書課の中にはあります。盲学校の職業課程にも、やはり糖尿病等で点字が読めないお子さんがいらっしゃるんですが、その方に音声教科書を手渡そうとしても、一部運用で進んでいるところもあるんですが、厳密に言うと図書ではないから給与できないという問題もあります。
ぜひこの問題は「図書等」としていただくか、教材というような形で柔軟に子どもたちのニーズに応えられるような教科書給与の制度にしていただけますようお願いしたいと思います。
(拍手)

河村●
どうもありがとうございました。それでは先ほど、宛て先がなかったので遮ってしまって申し訳なかったのですが、藤本さん、もう一度マイクがまいりますのでどうぞ。誰にという宛て先のない、質問というよりむしろご意見も含めてですね。

藤本●
先ほど宇野さんにほとんどの部分を答えていただきましたが。私どもは視覚障害の立場から視覚障害者への情報提供を目指しているわけですが、私も視覚障害者で重度です。書籍または教科書等の出版物に対しての改正はいろいろされていますが、もっと身近な情報に対するものは非常に少ない。例えば、インターネット上でたくさんの情報が流れていますが、ほとんど視覚障害者には扱える状態ではない。こういう部分の改正に取り組んでいるのですが、先ほども話がありましたように、なかなか著作権許諾というのが・・・。
来年からの法改正であっても、私どもはNPO団体の立場なので、来年1月以降であっても「政令で定める施設」という決まりがあるばかりで、私たちにとっては何のメリットもない。情報を改善しようと努力はしているものの、何の進展もないという状況にあります。
この辺、「営利を目的としない団体」とか、そういうふうに少しでも、一日でも早く変えていただけたらと思います。一部ではそういう方向に向かっているようなことも聞いていますが、その辺についても改正をいただけたらと思います。よろしくお願いします。
(拍手)

河村●
ありがとうございました。いよいよあと10分ちょっとになりました。発言通知をいただいた方からのご発言は、全部終わりました。まだ発言されていない方で、通知を出す暇がなかったけれど、ひとこと言いたい、あるいは質問があるという方がいらっしゃったら、何人くらいいるかはかりたいと思いますので、遠慮なく手を挙げてください。いかがですか?お一人ですか?どうぞ、竹中さん。

竹中●
皆さん、こんにちは。プロップ・ステーションの竹中ナミねぇと申します。よろしくお願いいたします。
私たち、プロップ・ステーションは20年前からICTを駆使してどんなに重い障害があっても、社会のど真ん中で活躍できるように「チャレンジドをタックス・ペイヤーにできる日本」という大変刺激的なキャッチフレーズを掲げて今日まで活動してきました。
今の皆さんお話を聞いていて、実は私の考えている方向性と真逆なのですね。日本では障害者という非常にネガティブな呼び方をしている。そのネガティブなところの人に、何かネガティブなところを持たない、いわゆる健常者――誰が健常者かはようわからんのですけど――が何かをしてあげるという視点から福祉政策が作られています。
本来は、見たり、聞いたり、動いたり、得たり、働いたり、稼いだり、遊んだりという様々なことを、障害のある人も無い人も行う同等な権利があるわけですが、こういう福祉観では、同等にしようとすると、そこにいろんな制限が加わって、権利にお情けがいつも裏についてくるみたいな感じがすごくあります。
そろそろ日本の国はそういうのを脱却しないといけないというところから、プロップは20年前から、ICTを使って活動をしてきました。
人間の中に、その人の持っている何らかの力が眠ったままになっているほど実はもったいないことはないと私は思っています。今の日本は、本当に大変な、世界一の未曾有の少子高齢の時代になっているのに、上から目線で「この人には何々をしてあげよう」なんて言っていたら、本当に国家として持たないと感じます。
私は先進諸国で、チャレンジドの社会参画や就労促進に取り組んでいる方々と20年間お付き合いしているから思うのですが、最先端の科学技術こそが最重度の方の力を世の中へ引き出すことができます。
日本の国は非常に高度な技術立国であって、最先端の技術に関しては本当に世界に冠たるものを持っている。だけど今それを「人の力を徹底的に引き出す」というところに使っていない点が、私は問題だと思っています。
ですからこれからの法律は、障害の有無や性別、年齢に関わりなく、1人の人の力も眠らせることなく、私たちユニバーサル社会と言っていますけど、ICTなどを駆使して引き出す制度であることが必要です。いろんな道具を使って、あるいは制度を変えて、あるいはそこに人のサポートもあって・・・というように様々な発想と行動で「絶対引き出すんや」という国家の意志が必要やと思っています。このような会議も、その意志に基づく方向性で結論、考え方が出るようにしていただきたいと願っています。
私は、たくさんのチャレンジドとお付き合いがあるのですが、本当にいろんな可能性を持たれています。プロップでよく冗談みたいに言うのですけど、人間は不可能を可能にしていく過程によって文化や科学技術や国家を繁栄・発展させてきたわけです。だとすると、不可能をたくさん持っている人の中に、社会の発展や発達のタネが眠っているに決まってるよねって。
そういう着目の仕方をして、もし日本が今の最高の科学技術で取り組んだら、恐らくその部分でのユニバーサル立国と言いますか、すべての人の力を生かすことのできる科学技術や制度、情報通信機器、あるいはソフトなどを持っている国家ということで、逆にそれが輸出できる大きな産業になっていく可能性さえあると考えています。
今、山中さんが発言をされまして、私も関西弁でしゃべられてうれしいのですが、発達障害の皆さん自身が、DAISYの図書を自ら作り上げて、きちんと自分の仕事にしていけるようにというICTセミナーを、神戸でご一緒に開催させていただいています。
技術を磨けば、弱者と呼ばれる人たちが、そう呼ばれること自体を変えていき、技術を仕事にすることによって、社会に貢献し、あるいはビジネスに転換することができる。そういう発想を今までの障害者福祉観では持ってはいけないと思われていたけれど、もうそろそろ、持ってもいいのではないかと思います。
見えない、聞こえない、考える力が弱い、あるいはものの見え方が違う。これは恥ずかしいものでも何でもない。その人の一つのあり方なのですから。そのあり方を尊重し、その人の中に眠る力を生かしていく多様な方法を生みだし、Aというやり方もBというやり方も、Cのやり方も、選択できるというふうになっていけばいいなと思います。
というようなことまで今日は言うつもりはなくて聞いていたのですが、最後に言えと言われたので発言しました。賛同する方ばかりではないかもわかりませんけれども、明日の日本の元気のために、まずは一人ひとりが元気になれるようにやっていかねばと思います。
以上です。
(拍手)

河村●
どうもありがとうございました。今、橋本さんはちょっと体調が悪くなられましたので先に退室させてくださいとのことです。橋本さん、今日はどうもありがとうございました。それでは残りの時間、ぎりぎりまで使いたいと思います。この後は挙手でご発言いただきたいと思います。どうぞ。

藤田●
私は全国音訳ボランティアネットワークの藤田と申します。今日はそうそうたるメンバーがお集まりということで、勉強させていただこうと思って参加いたしました。
先ほど宇野先生のお話で触れていただきましたが、私ども音訳ボランティアとは、視覚障害者等に文字情報を音声に換えて提供しているものです。
今回の法改正に当たりましては多大な期待を持って注目しておりました。
ところが、公共図書館で行なわれているのと同じ音訳活動をしているにもかかわらず、活動場所が社会福祉協議会や地域であるということで多くのボランティアが外れてしまうということに対して、非常に残念な思いをしております。
繰り返すようですが視覚障害者等への録音物による情報提供は図書館のみで行なわれているわけではありません。社会福祉協議会や地域で活動している多くのボランティアによって支えられてきております。
私を含めたその音訳ボランティアの今後のやる気をそぐような法律は、ぜひご一考いただきたいと切に願うものです。
私ども全国音訳ボランティアネットワークは、全国の音訳者をつなぎ、視覚障害者等のために役立ちたいという思いで日々活動しているものです。
公共図書館と同じように権利を認めていただきたいというのが私たちの希望です。
ぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
(拍手)

河村●
石川さん、手が挙がっているようですね。

石川●
先ほどは時間厳守を優先しましたので二点だけ追加させてください。今のお話にもあったように、政令で細かく列挙するという方式には限界があります。ボランティアグループが入らないというのもそうですし、大学でも、実際に大学で障害学生を支援しているのは、近年では障害学生支援センターといったところです。私の知る限り大学図書館がそのようなサービスをしている実績や実態はないと思うのです。ですから、もっと一般的な規定で全体を網羅できるように変えていく必要がある。それはまだ可能だと思います。ぜひパブリックコメント等で出していただきたい。私も書こうと思っています。
もう一点は、国会図書館の学術文献録音サービスは30年の歴史があって役割を果たしていらっしゃったのですけれども、各点字図書館、公共図書館やボランティアの実力もついてきまして、学術文献といえどもほかの多くの機関で制作が可能になっています。その歴史的役割はほぼ終わって、新たな、もっと大事な重要な役割、先ほどから市橋さんもおっしゃっていたし私も示唆しましたが、電子データのアーカイブ、電子納本制度を活用して電子データ、アクセシビリティに配慮されたユニバーサルデザインの観点から電子データを蓄積して提供する役割を担っていただきたいと思います。

河村●
ありがとうございました。最後の一人か二人の発言になります。では市橋さん、高岡さんの順でお願いします。

市橋●
先ほどの発表で、すべての人への読書機会の提供という図式を出させていただいたのですけれども、国会図書館の納本制度から始まる仕組みの方は、校正済みのテキストデータと画像が国会図書館に納本される図書のすべてにおいてできる仕組みなのです。これができますと、点訳データ、音訳データ、それからマルチメディアでの教科書も画像とテキストデータがあるので編集して作ることができるのです。
これを実現するには、今、課題がありまして、それは国会図書館の長尾館長も発言されていることなのですが、日本書籍出版協会、日本文芸家協会等がテキストデータ化に反対しているということなのです。
ですから今回、隣にいる国会図書館の田中さんにぜひご検討をお願いしたいのは、先ほど発表させていただいた三つの要望が実現されると、すべての人への読書機会の提供の図式が実現しますので、三つの要望書を連名で日本文芸家協会、日本書籍出版協会へ提出するのをご検討いただきたいということをお願いいたします。

河村●
それでは高岡さん、お願いいたします。

高岡●
二つあります。一つは、障害者が納税者になる、仕事をするというのは当然のことで、ここにいらっしゃる高田さんはCS障害者放送統一機構の理事長でろうの方。私は副理事長で難聴です。「目で聴くテレビ」の制作はほとんど障害者が担っています。障害者自身が仕事を作り出してやっているのですね。ただ、仕事をしようとすると著作権が壁になるので、この著作権を何とか変えてほしいと私たちは要求しています。
また、隣にいる全日本ろうあ連盟は、障害者権利条約に基づいてあらゆる分野で情報コミュニケーションを保障する情報コミュニケーション法の提案をされています。私たち全難聴も賛同していますが、多くの障害者が等しく情報コミュニケーションの保障を得て、普通に生きて普通に仕事ができる社会を目指していると申し上げて終わりにしたいと思います。よろしくお願いします。

河村●
どうもありがとうございました。おかげさまで、これで無事に井上委員長がまとめをする時間ができました。早速、私のコーディネートはここで終わらせていただいて、井上委員長にまとめをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。