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アダプティブコンテンツの処理に関する会議(ACP 08)

ヨーロッパアクセシブル情報ネットワーク(EUAIN)-アダプティブコンテンツネットワーク

このたび、2008年11月6日・7日にアムステルダムのブールス・ファン・ベルラーヘにて開催予定のACP'08会議に皆様をお招きすることができ、大変嬉しく思っております。この会議は、今年アムステルダムが「本の首都」に選ばれたことを祝う行事の一つとして、EUAINネットワークとプロアクセスプロジェクト、およびオランダ出版社協会の共催により開催されます。

新技術は、コンテンツの作成、出版、消費方法を変えつつあります。ここ数年、ヨーロッパ内外の出版業界は、よりアクセシブルでアダプティブなコンテンツへの需要の高まりに、積極的に対応してきました。最近では、『知識経済における著作権に関するグリーンペーパー』が発行され、これらの問題が重要な役割を担っていることが明らかになりました。

出版制作の過程において、またこれにかかわる価値連鎖内で、アクセス関連の課題を検討しなければならない理由は増えつつあります。構造化されたデジタルコンテンツの再利用は、アーカイブの作成、コンテンツの再アグリゲーション、およびパーソナライゼーションなどの関連活動のための確固たる基盤を提供します。このような制作と消費の収束化は、コンテンツ処理に対する新たなアプローチにも反映されており、新たな価値連鎖を生みだし、既存の市場を拡大する絶好の機会を提供することができます。

私たちは、アダプティブコンテンツの処理にかかわる幅広い関係者を一堂に集めようと努めてまいりました。この会議が皆様にとって有益で、刺激的なものとなるよう願っております。皆様が、ますます重要になりつつあるこの分野に関して、さらに詳しく知りたいというだけであっても、あるいは特定のテーマについて知識を深めることを目的としているのであっても、皆様のニーズに適したプログラムをご用意しております。また皆様には、今後役に立つ新たな人脈を築いていただけると確信しています。

プログラム

11月6日 木曜日

11月7日 金曜日

ACP 08のプログラムは、いくつかの異なる分野を対象とすることを目的としており、重要な概念や理念を検討し、新たなサービスおよび技術を実際に紹介していく。

11月6日 木曜日

9:40-9:50
歓迎の辞
オランダ Dedicon(デディコン)代表
Maarten Verboom(マーテン・フェルブーム)

9:50-10:15
基調講演
アダプティブな情報処理の主流化 DAISY for Allプロジェクトの成果と教訓
DAISYコンソーシアム会長
河村宏

DAISYコンソーシアムは、WSIS(世界情報社会サミット)行動計画の実施における優れた実践と、国連障害者権利条約に対する強力な支援を認められ、2008年ITU世界電気通信情報社会賞を受賞した。河村会長は、障害者による情報への平等なアクセスのためのDAISY標準規格の世界的な実施の成果と課題について語り、先住民族の言語および文化の振興、地域社会全体の防災、非識字対策など、アクセシブルコンテンツの処理を主流化することにより、最も効果的に対処できる重要な世界的課題を特に取り上げる。

10:15-10:45
電子図書出版と新技術を使用した主流のアプリケーションの将来
オランダ NDC/VBK Publishers(NDC/VBK出版)
Pinion(ピニオン)
Sander van Kempen(サンダ-・ファン・ケンペン)

Sander van Kempen(サンダ-・ファン・ケンペン)氏は、長年、電子図書出版に携わり、現在ではNDC/VBK Publishers(NDC/VBK出版)の一部であるeBook.nlの代表を務めている。電子図書は、当初の高い期待にはこたえられなかったが、最近になって、Amazon Kindle、iREX iLiadおよびSony eReaderなどが開発されたことにより、新たに関心が高まっている。これらの開発を大局的にとらえ、出版社が印刷版に使用する資料から電子図書を制作するために必要な取り組みの実際を語る。特に、出版社から資料を得る際に直面する実用面での課題と、解決すべき著作権の問題について取り上げる。また、主流の市場向けに電子図書を制作する現在の取り組みが、視覚障害者を対象とした改良版の制作にどのように役立てられるかについても語る。

10:45-11:00
休憩

11:00-13:00
特別分科会:教育現場向けのアダプティブコンテンツの処理

議長:
オーストリア
ヨハネス・ケプラー大学
統合学習研究所
Reinhard Ruemer

統合学習研究所(IS)は、印刷物を読めない障害がある学生を支援するオーストリアの情報システム研究所である。ISは、オーストリア全土の視覚障害がある小中学生を対象とした指導教材および学習教材の制作にかかわっている。また、特に統合教育におけるITの使用に関して、教師の教育にも取り組んでいる。

11:00-11:05
開会のあいさつ
オーストリア
ヨハネス・ケプラー大学
統合学習研究所
Reinhard Ruemer

11:05-11:30
読みの障害があるユーザーのために出版社の出力ファイルをアクセシブルなバージョンへ変換するにあたっての実情と課題
イタリア
イタリア出版連盟(AIE)
Cristina Mussinelli(クリスティーナ・ムッシネッリ)

イタリア出版連盟(AIE)は、イタリアで活動している内外の出版社と、イタリア語の図書、雑誌、デジタル製品を発行している出版社の事業者団体である。

座っていられない場合は、30秒ごとに座っていられたら強化子がもらえる、というDROを実施(これは、段々と45秒おき、1分おき、2分おきと時間の感覚を伸ばして行きます)。

さまざまなコンテンツに必要な変換プロセスをテストするために、出版社および変換企業を一つのグループとしてまとめるというアイディアは、出版業界と視覚障害者団体、および変換に取り組んでいる専門家の代表を招き、2008年1月にベニスで開催された、プロアクセス・ワークショップの成功に端を発している。

11:30-11:55
My Way(マイ・ウェイ)
スペイン
カタロニア公開大学(UOC)学習技術室
Alberto Juhe

UOC学習技術室では、デザインの形式について、エンドユーザーの意向を取り入れて設計プロセスを実施する、ユーザー中心設計(UCD)型アプローチをとっている。

My Way(マイ・ウェイ)は、コンテンツをさまざまなフォーマットに編集し、配信する一連のツールである。3年間にわたる開発を終えた今、オープンな学習コミュニティに役立てるために、UOCではこのプロジェクトを公開し、改良していきたいと考えている。

11:55-12:20
ユニバーサル・フォーマットによる学術誌の出版-物理学者の先導
オランダ
Dedicon(デディコン)
Emilia Persoon(エミリア・ペルスーン)

ViewPlus Technologies(ビュープラス・テクノロジーズ)
Dorine in 't Veld(ドリーネ・イントフェルト)

アメリカ物理学会とViewPlus Technologies(ビュープラス・テクノロジーズ)は、すべての人にとってアクセシブルなDAISYフォーマットで、アメリカ物理学会の機関誌を出版できることを証明する研究プロジェクトを終えた。その結果、わずかなコストの追加により、これが可能であることが明らかになった。研究結果を簡潔に論じるとともに、フィジカル・レビュー・レターズ誌に掲載されたアクセシブルなDAISYフォーマットによる記事を実際に紹介する。

12:20-12:45
オンライン学習教材の設計・編集用ツールとしてのwiki
スペイン
カタロニア行政学校(EAPC)
Orland Cardona Perez(オーランド・カルドナ・ペレス)

カタロニア行政学校では、頻繁に行政規則の改正が行われることから、行政の基礎知識を学ぶコースの研修資料の作成と編集にDokuWikiを使用することにした。今回の論文発表では、この決断を下した理由とともに、これによって教育・学習のプロセスにおけるさまざまな局面を改善できるという利点が語られる。

12:45-13:00
まとめ
オーストリア
ヨハネス・ケプラー大学
統合学習研究所
Reinhard Ruemer(ラインハルト・リュメール)

13:00-14:00
昼食

同時開催セッション 14:00-17:00
コース1:ユーザーによるアクセシブルコンテンツの入手を可能にする方法
議長:
イギリス
JISC Techdis(JISCテックディス)
Simon Ball(サイモン・ボール)

JISC Techdis(JISC テックディス)は、障害・技術関係のイノベーションの促進と、専門的なアドバイスおよびガイダンスの提供により、さらなるアクセシビリティとインクルージョンの達成に向けて教育セクターをサポートしている。

14:00-14:10
開会のあいさつ
イギリス
JISC Techdis(JISC テックディス)
Simon Ball(サイモン・ボール)

14:10-14:30
Accessibility Passport(アクセシビリティ・パスポート)-ユーザーと設計者の対話
イギリス
JISC Techdis(JISC テックディス)
Simon Ball(サイモン・ボール)

Accessibility Passportは、開発中のソフトウェアや学習教材の設計決定者、開発者、試験者(教師・チューターを含む)、およびユーザー(学生)間の対話を可能にするために開発された。設計決定者は、原型となる製品の概要を述べ、どのようなアクセシビリティを盛り込むことが必要であるか、または不要かを伝える。開発者は、内蔵されたアクセシビリティ機能と、実施されたユーザーテストについてまとめる。そして重要なのは、ソフトウェアや学習教材のユーザー(教師および学習者)が、その経験を開発プロセスの担当者にフィードバックとして伝え、将来の改良あるいは調整に役立てることである。

14:30-14:50
一から始めるアクセシビリティ
オーストリア
ヨハネス・ケプラー大学
統合学習研究所
Reinhard Ruemer

アダプティブコンテンツの制作とその配信技術およびサービスは、ここ数年、常に広がりを見せ続けてきた。多目的ソフトは、高まりつつある需要に対応して増え続けるデジタルデータの体系化、保存、インデックスの作成、表示、配信および検索に適している。

一方では、進んだ視聴覚検索サービスや効果的なプレゼンテーション、およびナビゲーション機構を提供し、また一方では、創造力を駆使して開発されたコンテンツ制作ツールを提供することで、EUAINを基盤としたインフラストラクチャー整備型アプローチにより、ヨーロッパとアメリカ合衆国の視聴覚市場セクターにおけるギャップを狭めることができる。

14:50-15:10
サービス提供者を通じてアクセシブルなリソースへのアクセスを可能にする方法
ドイツ
ドレスデン工科大学
Alexander Haffner(アレクサンダー・ハフナー)
Gerhard Weber(ゲルハルト・ウィーバー)

図書館はデジタル化され、そのメディア目録の保存と管理には情報技術が利用されている。また、デジタル化されていないメディアオブジェクトと純粋なデジタル資料のプロパティを説明するために、メタデータも使用される。特にデジタル資料の増加に伴い、コンテンツ検索・配信の集中型サービスへの需要が認められる。

15:10-15:30
テキストの代替フォーマットの入手をより簡単にする方法
イギリス
JISC Techdis(JISC テックディス)
Simon Ball(サイモン・ボール)

イギリス
パブリッシャーズ・ライセンシング協会(Publishers Licensing Society)
Alicia Wise(アリシア・ワイズ)

JISC Techdis Serviceは、イギリス出版社協会およびRNIB(イギリス王立盲人協会)と共同で、障害がある学生および職員のための学習教材の配布方法を変更できる手段を提供している。イギリス出版社協会およびRNIBは、さまざまな障害がある人々のニーズに応じた代替フォーマットで資料を配布する支援をしていく。このような支援は、教育・研究にかかわるすべての学生と職員の平等なアクセスのためには不可欠である。イギリス出版社検索サービスは、教育機関や出版社が、障害学生のために、現在の手続きに従った場合に比べて、より迅速に、かつ効率よく、教科書の電子フォーマットを調達できるようにする。現在、出版社は通常、電子図書とPDFの2種類のデジタルフォーマットうち、1種類を提供している。さらにアクセシブルなフォーマットの調達は、出版社側にとっても、またユーザーにとっても、複雑な仕事となる可能性がある。イギリス出版社検索サービスは、教育・研究セクターとイギリス出版社との間の、リクエスト、配布、アクセスの仕組みを簡素化したメカニズムを提供する。イギリス出版社検索サービスのサイトは、現在150を超えるインプリントとのリンクを張っており、さらに、PDFファイルをさまざまな障害があるユーザーにとってアクセシブルにするためのガイダンスも提供している。

『代替フォーマットの教科書を入手するためのガイド』は、教師や学習支援者、および図書館職員をはじめ、読書が困難な学習者のために代替フォーマットによる教科書を入手する必要がある人々すべてに、ガイダンスを提供することを目的に作成された。障害者法では、時宜を得た代替フォーマットの提供など、障害学生のために適切な措置をとることを教育機関に義務づけ、障害がある学習者を保護している。さまざまな障害がある人々が、代替フォーマットの恩恵を受けている一方で、障害がある多くの学習者が、代替手段が利用できるにもかかわらず、従来の教科書を使用し、苦労している。

15:30-15:40
休憩

15:40-16:00
DAISY出版への最速コース:www.daisymarkup.com
デンマーク
XML-TEKST(XML-テクスト)
Niels Thøgersen

印刷資料は、DAISYフォーマットにすることで、視覚障害者およびディスレクシアの人々にとってアクセシブルにできる。図書その他のコンテンツの、アクセシブルなDAISYへの変換を容易にするウェブサービスを紹介する。

16:00-16:20
Infty のソフトウェアに見られる多言語サポート
日本
日本大学
山口雄仁教授

九州大学
鈴木昌和教授

数学文書用OCRシステムであるInftyReader 、およびアクセシブルな数学文書編集ソフトであるChattyInftyは、印刷された科学資料への視覚障害者によるアクセスを可能にする。視覚障害者は、ChattyInftyを使用して文書が読めるだけでなく、複雑な数学的表現を含む科学文書を作成することもできる。今回は、Inftyのソフトウェアに見られる多言語サポートを中心に論じる。

16:20-16:40
LAGUNTXO-認知障害者の生活の質向上のための柔軟なコンピューター指導システム
スペイン
LEIA基金
J. Rubio(J. ルビオ)

障害者が日常生活で遭遇する問題、特に非常に競争が激しい市場の職場環境において遭遇する問題を解決するためには、新技術がもたらす、専門家の言葉で「支援技術」とよばれる解決策の実施が一つの鍵となる。柔軟に対応できるコンピューターによる指導システム(ITS)の開発は、モバイルプラットフォームをベースにしており、アダプタブルなコンテンツの提供は、障害者の統合について新たな観点を提示する。このような指導システムは、ユーザーに合わせた改良が可能であり、ユーザーの障害を補い、それぞれの実績を上げ、トレーニングを進めることができる。

16:40-17:00
著作権および関連諸権利を侵すことなくアクセシブルな資料を提供する認可を得るためのガイドライン
ベルギー
ヨーロッパ出版業者連盟
Olga Martin Sancho(オルガ・マーティン・サンチョ)

プロアクセスは、「ネットワークのネットワーク」プロジェクトで、欧州委員会のeラーニングプログラムのデジタルリテラシー部門のもとで資金援助を受けている。このプロジェクトでは、EUAIN(www.euain.org)とOrmeE(www.ormee.net)の成果を公開していく。提案される解決策は共同を基礎としており、成功のためには、図書にかかわる価値連鎖内のすべての関係者が、特にデジタル版について著作権の尊重を確保できるように、法律の整備を進めることが重要である。この分野における認可制度と契約上の約定の促進を後押しするために、出版社がアクセシブルな資料を提供するための認可を申請する際に役立つ最終的なガイドラインが完成した。

17:00-17:10
まとめ
イギリス
JISC Techdis(JISC テックディス)
Simon Ball(サイモン・ボール)

同時開催セッション 14:00-17:00
コース2:印刷物を読めない障害がある人々のためのアダプティブな出版
議長:
DAISYコンソーシアム事務局長
George Kerscher(ジョージ・カーシャー)

14:00-14:10
開会のあいさつ
DAISYコンソーシアム事務局長
George Kerscher(ジョージ・カーシャー)

14:10-14:30
出版物配布における大転換:本当に可能なのか?
イギリス
RNIB(イギリス王立盲人協会)
制作サービス シニアマネージャー
Mandy Thompson (マンディ・トンプソン)

独立系プロジェクトマネージャ-
Jim Russell(ジム・ラッセル)

パブリッシャーズ・ライセンシング協会(Publishers Licensing Society)
Alicia Wise(アリシア・ワイズ)

毎年出版される図書のうち、一般印刷物とは異なるフォーマットで利用できるようになるのはたった5%しかない。これは、全盲・弱視、その他の印刷物が読めない障害がある人々の大部分が、大半の出版物にアクセスするのが難しいことを意味している。イギリスの出版社とRNIB(イギリス王立盲人協会)は、この状況を変え、視覚障害者が書店を訪れ、自分が読めるフォーマットの図書を買うことができる日を実現するために、協力して取り組んでいる。今回の発表では、それがどのように進められているのか、すでに達成されたことは何か、そして今後も取り組みが必要なことは何かを検討する。

14:30-14:50
アクセシブルなPDF
オランダ
Viziris
Roel van Houten(ロエル・ファン・ホーテン)

14:50-15:10
MEDIBUS -ドイツにおけるACPプロジェクト
IFLA(国際図書館連盟)視覚障害者図書館分科会 書記
ライプツィヒ ドイツ視覚障害者中央図書館(DZB)館長
Thomas Kahlisch博士

MEDIBUSはドイツ語の録音・点字図書館の組織で、すでにDAISY標準規格によるコンテンツの制作と配布の共同プロジェクトを確立している。DAISYコンソーシアムと同様に、MEDIBUSが最終的にめざしているのは、あらゆる図書館で、すべての図書がDAISYフォーマットで利用できるようにすることである。現在、会員組織によって20,000を超えるタイトルが制作され、利用できるようになっている。2010年には、タイトル数は30,000となる予定で、オーディオカセットテープの配布サービスは終了する。

15:10-15:30
ハイブリッド図書の制作 専門機関と出版社の協力
オランダ
Dedicon(デディコン)
Alexander Baars(アレクサンダー・バース)
Edmar Schiut(エドマー・シュット)

オランダの出版社であるMalmberg(マルムバーグ)と、アクセシブルなフォーマットによる情報の提供機関であるDedicon(デディコン)の、ハイブリッド図書共同制作に関する発表。

15:30-15:40
休憩

15:40-16:00
古い立体地図のインターネットへの取り込み
『Weltatlas mit 34 Reliefkarten von Paul Georgi 』の点字インデックス変換時に直面した課題
ポーランド
グダンスク大学
Jurand B. Czermiński(ジュランド・B・チェルミンスキー)

地図資料は、その複雑性や平坦化された三次元性、そして情報量の不規則性などで知られる。これらの特徴は、視覚障害学生にとって常に難しい課題であった。コンピューターに取り込まれた地図データは、明確に定義され、かつ構造化されたスケーラビリティを初めて実施したとして知られているが、必ずしも、触れて読む「地図に値する」資料と同じ法則に従っているわけではない。このため、視覚障害があるユーザーは、点字資料の持つ本質的な、あるいは潜在的な特異性を認識しておかなければならない。今回の論文発表では、1966年にライプツィヒ(旧ドイツ民主共和国)にあるドイツ視覚障害者中央図書館で製作され、大学図書館の希少資料部に、「古典的な」ドイツ語の点字で書かれた184ページにわたるインデックスとともに保存されていた、34枚の古い立体地図を再生するために、学術機関がとった主な措置について解説する。

16:00-16:20
アクセシブルな科学論文出版のための自動ワークフロー DSpaceへのDAISY Pipelineの統合
スペイン
バルセロナ大学 図書館情報科学部
Mirela Ribera(ミレラ・リベラ)

今回の論文発表では、「Daisy4DSpace」という試作プラグインを紹介する。このプラグインでは、DSpace(オープンソースデジタルレポジトリ)にフォーマットの自動変換機能を統合するために、DAISY Pipelineというツールを使用している。

DSpaceが、MS Wordをはじめとするさまざまなワープロフォーマットで原文を提出し、そのメタデータを記載し、デジタル著作権を管理するためのプラットフォームを作成者に提供する一方で、DAISY Pipelineは、MS Wordフォーマットから、大活字印刷用PDF、アクセシブルなHTMLフォーマット、音声付きDAISY図書など、他のフォーマットへの変換ツールを提供する。最終的に、Daisy4DSpaceプラグインが、DAISY Pipelineという変換ツールとDSpaceのデジタルレポジトリの橋渡しをし、両ツールの統合により、科学論文のアクセシビリティの向上という利点につながることが明らかにされる。

16:20-17:00
AcrobatおよびInDesignの使用によるアクセシブルなPDF
アメリカ合衆国
Adobe(アドビ)
Greg Pisocky(グレッグ・ピソッキ-)

Adobe InDesignおよびAdobe Acrobatの使用によるアクセシブルなPDF文書
PDFフォーマットは、文書作成者がPDF文書を提供する際に利用できる、多くのアクセシビリティ機能を備えている。今回のセッションでは、PDF文書の作成に使用すべきオーサリングテクニック、文書のアクセシビリティの検証方法や、さまざまな障害があるユーザーが、エンドユーザーとしてどのような経験を期待できるかを中心に述べる。

17:00-17:10
まとめ
DAISYコンソーシアム事務局長
George Kerscher(ジョージ・カーシャー)

全体会 17:10-17:40
閉会のあいさつと各セッションの議長によるまとめ

11月7日 金曜日

全体会
9:30-9:50
EUAINネットワークの活動紹介
David Crombie(デビッド・クロンビー)-EUAINネットワーク

9:50-10:15
コンテンツ・パーソナライゼーションの将来
イギリス
公開大学
Andy Heath(アンディ・ヒース)

10:15-10:45
休憩

同時開催セッション 10:45-13:00
コース1:アクセシブルな情報処理のための新たな環境
議長:
IN2
George Ioannidis(ジョージ・ヨアニディス)

10:45-10:50
開会のあいさつ
IN2
George Ioannidis(ジョージ・ヨアニディス)

10:50-11:15
The Internet of Things and Services(ものとサービスの相互ネットワーク)
イギリス
レディング大学
Atta Badii(アッタ・バディイー)

The Internet of Things and Services(ものとサービスの相互ネットワーク)が掲げるコンセプトは、事物の自動識別、事物とサービスの認識、コミュニケーション、サービスの選択と設計、問題解決とサービスの実施による、ネットワークで結ばれた組み込み機器とサービスとのシームレス統合の可能性を基礎としている。

The Internet of Things and Services(ものとサービスの相互ネットワーク)のパラダイムを支える、重要な実現可能な研究や商業化が可能な技術には、ミドルウェア、サービス志向アーキテクチャー、バーチャライゼーション、無線ICタグ(RFID)、センサーネットワーキング技術、意味データ統合、サービスの選択・統合にむけて、意味を共有し一般化するためのオントロジー、および組み込みインテリジェンスなどがある。

11:15-11:40
wearIT@workプロジェクト
ドイツ
ブレーメン大学 TZI(コンピューター技術センター)
Michael Lawo(マイケル・ラヴォ)

過去数年にわたり、デジタルナビゲーション技術は、多種多様な市販のアプリケーションおよびツールを通じて、急速に日常生活に浸透してきた。これらの中には、人気の高いカーナビゲーションシステムだけでなく、娯楽、観光、教育、健康およびゲーム関係のアプリケーションもある。しかし残念ながら、このような開発の多くは視覚障害者にとってアクセシブルではなく、室内外の公共の場、特に新しい場所において、視覚障害者の誘導には多くの課題が認められる。

これまでのプロジェクトから、視覚障害があるユーザーは、デジタルナビゲーション技術から利益を得られることがすでにわかっているが、まだ改善と洗練の余地がある。これまでは技術の実践に焦点が当てられ、比較的新しい技術が採用されることが非常に多かった。その結果、ユーザーにはほとんど焦点が当てられてこなかったのである。uWEARでは、この状況を変えようとしており、できるだけユーザーの視点から出発しようと努めている。

11:40-12:05
オーディオ出版の制作方法とツール
イギリス
Dolphin Computer Access(ドルフィン・コンピューター・アクセス)
Anders Frankenberg(アンダース・フランケンバーグ)

Dolphin Computer Access(ドルフィン・コンピューター・アクセス)は、視覚障害者が主流の情報技術を利用できるようにするソフトウェア製品を製作している。目が見える人々と同じ製品を利用することは、個人が自立し続けられることを意味する。同時に、賢明な企業、学校および大学は、事情が異なれば疎外される可能性がある人々の知識とアイディアから利益を得られる。Dolphin(ドルフィン)のソフトウェアは、既存のコンピューターシステムや標準規格のもとで機能するよう設計されており、文字の拡大、読み上げ、および点字の使用により、さまざまなWindowsプログラムへのアクセスを提供する。

12:05-12:30
AutoBrailleプロジェクト
デンマーク
DBB(デンマーク国立盲人図書館)
Mikkel K Mosthaf

Sensus(センサス)
Lars Ballieu Christensen

デンマーク国立盲人図書館(DBB)、Sensus(センサス)と協力 2008年初め、デンマークにおける三大点字図書制作機関は協力関係を結ぶことを決定した。その目的は、もっとも人気の高い業務用および消費者向け点字プリンタとディスプレイをはじめとする(しかしそれに限られるわけではない)、あらゆる対象メディアで利用できるようフォーマットされ、ページ番号を付けた点字図書の制作を、完全に自動化することにあった。

12:30-12:55
高度にアクセシブルなテキストのオーサリング
イタリア
ミラノ工科大学 電子情報学科
A.Colombo(A・コロンボ)
L.Sbattelia
R. Tedesco(R・テデスコ)

複雑なコンテンツへのアクセスを提供することは、コンテンツ作成者が対処しなければならない課題である。このような課題は、認知障害者によるコンテンツへのアクセスが必要な場合、特に難しい。今回の論文発表では、高度にアクセシブルなテキストのオーサリングをサポートするツール(SPARTA2)を提案する。このツールを使用すれば、特定のターゲット層のニーズに応じてテキストをあつらえることができる。このツールは、Word 2007のユーザーインターフェースに統合されており、特に使いやすくなっている。

12:55-13:00
まとめ
IN2
George Ioannidis(ジョージ・ヨアニディス)

同時開催セッション 10:45-13:00
コース2:マルチメディアコンテンツのアクセシビリティ
議長:
Dedicon(デディコン)
Ted van der Togt(テッド・ファン・デル・トフト)

10:45-10:50
開会のあいさつ
セッション議長

10:50-11:15
同期化されたコンテンツ:各メディアの長所を生かすには
オランダ
Dedicon(デディコン)
Ted van der Togt(テッド・ファン・デル・トフト)

教育機関では、教科書に次いでビデオの使用が増加し始めている。たとえば、ITunes-Uのような無料インターネットサービスを通じて講義にアクセスすることができる。講義ノートは従来、大学出版局によって提供されてきたが、これも変わりつつある。Ted van der Togt(テッド・ファン・デル・トフト)氏は、いくつかの新しいサービスとその可能性を紹介する。ビデオをきめ細かく調べる際、視覚障害の有無にかかわらず、ユーザーは同じ課題に直面する。それは、ビデオ資料はあまりアクセシブルではないという問題である。しかし、ビデオの内容をおこした原稿の同期化により、ビデオ資料をはるかに使いやすくすることができ、注釈を付けたり、各部を参照することもできるようになる。これらの開発はDAISYのようなアクセシブルなフォーマットの開発と無関係ではなく、将来のフォーマットでは一本化されるものと期待されている。

11:15-11:40
Adobe(アドビ):アクセシブルなビデオ
アメリカ合衆国
Adobe(アドビ)
Greg Pisocky(グレッグ・ピソッキ-)

ウェブ用のアクセシブルなビデオは、教育、娯楽および商業用コンテンツにとって、ますます重要となってきている。多くの場合、このようなビデオをレンダリングしているフォーマットは、Flashである。Adobe(アドビ)は、Adobe Flash CS4 Professionalにおいて、World Wide Web Consortium(W3C)Timed Text DFXPを使用した字幕の表示や、すべてのユーザーによる再生コントロールへのアクセスを可能にするアクセシブルなユーザーインターフェースコントロールの提供を含む、アクセシブルなビデオの制作を簡素化するコンポーネントを提供している。ウェブ上のFlashビデオで可能なことについて知識を増やすのは、作成者にとってもユーザーにとっても重要である。本セッションでは、これに関する情報を提供し、この作業を簡単に行う方法を実際に紹介する。

11:40-12:30
創造的研究のための枠組みと新たなパラダイム
オランダ
ユトレヒト芸術大学
Paul van Zoggel

ヨーロッパの情報文化は急速に変化しており、商業セクター、特に若い研究者の教育カリキュラムにおいて、これに対応した改編が必要である。また、新たな情報デザインや消費者のニーズについて議論するための拠点と、従来および新興産業の価値連鎖内で使用できる学際的なロードマップとカリキュラムを提供する必要がある。

これまで、デザインの視点からは、情報の収束化の意義は非常に軽んじられてきた。これとかかわりのある分野としては、HCI(人間とコンピューターのかかわりあい)、直観的システムデザイン、セキュリティ・トラスト・アーキテクチャー、ナラティブデザイン、DFA(組立容易性設計)およびアダプティブコンテンツ処理などがある。ユトレヒト芸術大学は、美術の大学院教育および専門教育を提供する、ヨーロッパでも有数の、またオランダでは最大の大学である。アート・メディア・テクノロジー学部内に設置されたアダプティブ・アーキテクチャーズ・グループ(AAG)では、情報表現理論、革新的なコンピューターサイエンスの情報、共通の枠組みにおける根本的にアダプティブな情報処理の潜在市場に対する最新の洞察に焦点を当てている。

12:30-12:55
利用者、公共図書館、出版社:インクルーシブな図書館サービスに重要な役割を果たす三者
オランダ
オランダ公共図書館協会
国際調査部長
Marian Koren(マリアン・コーレン)

12:55-13:00
まとめ
各セッション議長

13:00-14:00
昼食

全体会 14:00-17:00
開会のあいさつ
ベルギー
ヨーロッパ出版業者連盟
Anne Bergman-Tahon(アン・バーグマン-タオン)

円卓会議:グリーンペーパーに関する議論

この円卓会議では、最近発行されたECのグリーンペーパー『知識経済における著作権(こちらで入手可能:PDF版ワード版)』を中心に論ずる。今回の議論では、最新の開発と提案されている法律の改正、デジタル配信、著作権とその例外を扱う。

このグリーンペーパーは、研究、科学および教育のために情報の普及を促進する際の、著作権の役割に焦点を当てており、これらの分野における将来の長期的な著作権政策に関する構造化された議論の出発点として作成された。著作権政策は国内の市場・文化政策だけでなく、情報社会、競争および消費者の利益にもかかわる横の広がりを持つ問題として、ますます浮上してきている。このグリーンペーパーでは、この議論をまとめ、これまで取り上げてこられなかった、科学および学術出版、図書館、研究者および障害者の役割に関する分野における今後の課題を指摘することを試みている。

円卓会議の参加者は以下のとおりである。

  • Anne Bergman-Tahon(アン・バーグマン-タオン)
    ヨーロッパ出版業者連盟,ベルギー
  • Cristina Mussinelli(クリスティーナ・ムッシネッリ)
    イタリア出版連盟,イタリア
  • 河村宏
    DAISYコンソーシアム会長
  • George Kerscher(ジョージ・カーシャー)
    DAISYコンソーシアム事務局長
  • Koen Krikhaar(コエン・リハー)
    IFLA 視覚障害者図書館分科会,オランダ
  • Andy Heath(アンディ・ヒース)
    公開大学,イギリス
  • Roel van Houten(ロエル・ファン・ホーテン)
    Viziris,オランダ
  • Thomas Kahlisch(トーマス・カーリッシュ)博士
    ライプツィヒ 視覚障害者中央図書館(DZB)館長,IFLA(国際図書館連盟)視覚障害者図書館分科会 書記,ドイツ
  • Dorine in 't Veld(ドリーネ・イントフェルト)
    ViewPlus Technologies(ビュープラス・テクノロジーズ),オランダ

全体会 17:00-17:05
閉会の辞


このコンテンツは、以下のページの抄訳です。

Adaptive Content Processing Conference 2008
http://www.euain.org/?q=node/10

Proceedings
http://www.euain.org/?q=node/18

また、参加者に配布された紙媒体のプログラムも参照しました。