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「DAISYによる教科書づくりを考える」 -欧米から学ぶ-

セッション1:各国のDAISY版教科書提供の現状

スウェーデンにおけるDAISY版教科書の提供状況

シェル・ハンソン

スウェーデン国立録音点字図書館

皆さん、こんにちは。本日は美しい京都で開催されましたセミナーにお招きいただいたことを御礼申し上げたいと思います。さて、これからスウェーデンにおいて、DAISYフォーマットによる教科書が大学生に対してどのように提供されているかについてお話をしたいと思います。

スライド1

(スライド1の内容)

私はスウェーデン国立録音点字図書館、TPBと言っていますけれどもこちらを代表して参りました。TPBは政府の機関であり、文化教育省のもとで運営されております図書館です。学生に対するサービスについては、毎年政府から出されます規則書で規定されております。そして政府の助成金で運営されておりまして、2009年につきましては、約350万米ドルの予算が提供されております。

スライド2

(スライド2の内容)

さて、政府の目標でありますけれども、それは男女とも、経済状態あるいは障害により制限されることなく高等教育を受けることができるということです。これは非常に重要なステイトメントであると思いますが、このことをふまえまして私どもは、学生にサービスを提供しているわけです。また、政府のもう1つの目標ですけれども、読むことに障害のある大学生がアクセシブルな教科書を使用する権利を持つというものでありまして、いわゆるTPBによる教科書のサービスですけれども、無料で学生が利用できるようになっています。また障害のある学生への差別を禁止する法律もあります。これはすべてのスウェーデンの大学に適用されています。

スライド3

(スライド3の内容)

また、スウェーデンは小さな国でありまして900万人の人口となっています。そして50の大学そして単科大学があります。そしてどの大学にも障害学生支援コーディネーターが置かれ、障害をもつ学生たちの様々なニーズに応えています。そして2007年には印刷字が読めない障害だけでなく、様々な障害がある4,300人の学生がコーディネーターに相談をしてきました。そしてそのうち2,500人はディスレクシアでありました。ですから大半の障害をもつ学生は、何らかのディスレクシアを抱えています。2007年、TPBは、2,100人の印刷字を読めない学生を支援しました。そのうち1,600人は何らかのタイプのディスレクシアでした。そしてその70%が女性でした。そして2007年から2008年にかけまして、このような学生が13%増加しました。高等教育におきましては学生の大半は女性です。それは、教育省にとっては問題であるという認識がありまして、もっと男性の学生を増やしたいということで多額の出資をしております。

スライド4

(スライド4の内容)

2006年以来、TPBではスウェーデン語及び英語の合成音声による図書の製作が増加しております。我々はスウェーデン語の音声を開発し、英語の音声の仕様もライセンスとして提供しております。本を読むときに、完全なテキストと、オーディオが備わったものがあり、その両方を使うことができます。2008年にTPBが製作しました肉声による録音図書が695タイトル、合成音声による録音図書が719タイトル、そして点字、電子テキスト、大活字図書が142タイトルでした。

スライド5

(スライド5の内容)

この図書の配布状況でありますけれども、製作中は図書をいくつかの部分に分けてCD-ROMを作成しまして、スタジオから学生に配布します。製作されますと図書はデジタル・アーカイブに保存されまして、新たなコピーは大学や単科大学の図書館によって、インターネットを通じてダウンロードされます。また、それぞれの大学で学生用のCD-ROMが作成されます。昨年度は80の図書館において14,000タイトルがダウンロードされました。あとでWebベースのカタログを使いながらどのようにダウンロードするのかをお見せしたいと思います。

スライド6

(スライド6の内容)

さて、サービス全体の概要をご紹介したいと思います。それぞれの学生が地元の大学図書館に相談してきます。そうすると図書館がTPBのWebベースのカタログを使用してタイトルを検索します。それからその図書館がTPBのアーカイブから利用可能な図書をダウンロードしまして、それぞれCD-ROMにコピーをいたします。また新たな図書をWebベースのカタログで注文しますと、TPBが学生を登録しまして、ソフトウェアとハードウェアプレイヤーを学生に送付します。現在ビクター、プレクスターのプレイヤーを提供しております。またAMISとか、EaseReader、PCでの再生ソフトウェアを提供しています。

スライド7

(スライド7の内容)

TPBは、それ自体には製作施設というものが備わっていませんが、音声合成での変換だけを行っています。データブックファイルから合成音声に変換することです。デンマークとスウェーデン、そしてインドなどの業者に教科書の製作を外注しています。そしてこのように図書が製作されますと、学生とアーカイブの両方に送られることになります。

スライド8

(スライド8の内容)

将来においては、この配布は直接学生に行いたいと考えています。このプロジェクト、これは「ステューデント・ダイレクト」というプロジェクトなんですけれども、これを去年の秋に立ち上げました。80人の学生が参加しております。スウェーデンの総合大学2校と単科大学1校が参加しております。そしてインターネットを通じて図書を配信しまして、学生が自宅でダウンロードできるようにするということが目標になっています。

それではどういうふうにダウンロードするのかということをお見せしたいと思います。解像度が低いので良く見えないかもしれませんが、TPBのウェブのカタログを今スクロールしています。「ステューデント・ダイレクト」のプロジェクトで使っているものですがちょっと検索をしてみます。タイトルを検索してみます。ここで、高度な検索を行いますが、日本ですのでタイトルに「Japan」というのが入っているものを探すことにします。それからどのようなタイプのメディアかも選べます。例えば「daisy」、「talking books」というのを選びます。言語も選ぶことができます。英語を選びました。それから「search」です。8つヒットしました。

スライド9

現在、TPBのデジタル・アーカイブには6万6,000の図書があります。そして教科書ですが、だいたい13,000~14,000ぐらいが入っています。これは大学生のための教科書ですが、これをダウンロードする、あるいはストリーミングをしようと思います。「日本の近代史」というのがここにありますので、これを選びます。ここに情報がありますので、ダウンロードリストに加えるとか、あるいはそれをストリーミングで読むことができます。それでは、タイトルを選び、クリックします。

タイトルに関しての完全な情報がここに表示されます。ここには、ダウンロードリストに加える情報、あるいはストリーミングで読むことができるような情報があります。ですからストリーミングの場合には、自動的にソフトウェアが始まります。再生プレイヤーのPLEXTALKというようなものを使うことができるわけです。

スライド10

(スライド10の内容)

ネット・プレクストーク(NET PLEXTALK)を使うことによりまして、ナビゲーションができます。どのようなDAISYのソフトウェアでも検索することができます。タイトルをダウンロードしたいと思ったら、ダウンロードリストにこれを加えて、ダウンロードリストをチェックします。そうするとここにいくつかの選択肢が現れます。そこでファイルをダウンロードできますのでマークを入れてダウンロードします。ZIP形式でファイルをダウンロードしたり、ISOをダウンロードしてCD-ROMを作ることができるわけです。ここでは、ファイルとしてダウンロードします。「download」を押します。そしてEメールアドレスを打ち込んでパスワードも入れます。「タイトルをセーブしたいですか?」と聞いて来ますので「yes」と答えます。それでダウンロードが始まります。671MBぐらいあるので、完全にタイトルをダウンロードできるのに午後いっぱいぐらいかかるかもしれません。

とにかく将来的に、大学生はこのようにして教科書を使うことができるようになると思います。非常に学生側からの要求が高く、こういう図書をダウンロードして利用したいとみんなが思っていますので、そういうふうになるんじゃないかと思います。スウェーデンにおきましては、すべての大学生、障害のある学生に対して無料で大学の勉強に使える教科書を提供しています。

最後に、TPB以外に学校制度のなかには、国立特別支援教育庁(SPSM)という政府の機関がありますのでそのことについてお話をしたいと思います。このSPSMは、主に子どもたちに提供するために、電子テキストと点字と少ないですがDAISYによる教科書を製作しております。またアクセシブルなフォーマットでの教科書の製作を行っている商業出版社に財政支援を提供しております。それらの教科書を、TPBはカタログ化をしてウェブに置いており、アーカイブでダウンロードできるようにして、学校図書館などに提供しています。どうもご清聴ありがとうございました。