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デイジー活用事例集 小学校低学年

早期に読みの指導を開始し、つまずきが大きくなる前に、マルチメディアデイジーを導入した

青森県弘前市立大成小学校教諭 西澤 東

1.本人の現況

小学校2年生(8歳)の男児で、高機能広汎性発達障害、学習障害の診断を受けている。

読みの特徴としては、(1)勝手読みや抜かし読みが多い、(2)行を跳ばして読む、(3)単語、文節の区切りを間違えて読む傾向がある。

デイジーを使用する前には、(1)絵本の読み聞かせ、(2)ひらがな単音の読みの指導、(3)ひらがな単語(促音、拗音のある単語)の読みの指導、(4)くっつきの助詞(は・へ・を)の読みの指導を受けていた。現在は、この支援は受けていない。また、デイジー以外の読みの支援も特に受けていない。

2.デイジーの活用による支援

デイジーは、小学1年生の6月から使い始め、現在に至っている。

開始時は、たどたどしく音読しており、勝手読みや抜かし読みが多く、行を跳ばして音読してしまうことが度々あった。

本児は、幼稚園年長時から、通級指導を受け、読みの指導を受けていた。就学前にほぼひらがな単音での読みはできるようになったが、小学校入学後、読みのつまずきが出てくることが懸念されたため、マルチメディアデイジー教科書を使用することにした。本児の場合、読みの苦手さが目立ってから使用したわけではなく、LDの疑いがあることから、早期に読みの指導を開始し、つまずきが大きくなる前に、マルチメディアデイジーを導入した事例である。

平成22年6月(小学1年)~平成24年3月(小学2年)で、デイジー教科書の小学校国語を使用している。デイジー図書は特に使用していない。

再生環境は、パソコンで、再生ソフトはAMISを使用している。

家庭学習では、母親と国語の教科書の音読の宿題の際に使用している。紙の教科書は使わず、マルチメディアデイジー教科書をパソコンのディスプレイ上に映し、読み聞かせをしたり、ハイライトの文字再生の直後に音読させたり、音を消してハイライトの文字に合わせて音読したりして練習した。

通級指導教室では、通級指導担当者が、マルチメディアデイジー教科書をパソコンのディスプレイ上に映し、読み聞かせをしたり、ハイライトの文字再生の直後に音読させたり、音を消してハイライトの文字に合わせて音読させたりした。併せて、ディスプレイを見せながら、内容把握、文章読解の指導も行なった。

初めて読む教材では、マルチメディアデイジー教材での読み聞かせに意欲的である。どんな内容の文章なのかを集中して聞いている様子がうかがえる。また、何回か読み聞かせで聞くことによって、内容を覚えるため、自分で音読するときに音読しやすくなる、というのは当事者である児童の弁である。音を消してハイライトに合わせて音読をするときには、ハイライトのスピードよりも速すぎず遅すぎずの速さで気を付けて読もうとしている。新出漢字の読みも、マルチメディアデイジー教科書の読み聞かせのときに覚えたりしている。また、仮に漢字で読めないものがあっても、前後の内容から自分で予想して読んでいることもあった。

マルチメディアデイジー教科書で読み聞かせや音読練習をした後に、教科書を使って音読をすると、言葉や文節の区切りは正しく読めていることが多い。一方で、勝手読みや抜かし読みはマルチメディアデイジーを使用しても少なからずあり、教科書を読む際には、指で文を追っていくという手立てを入れている。

デイジーを使った学習のときは、「パソコンを使った学習だ。」と言って、喜んで取り組み、姿勢良くパソコンに向かう様子が見ることができる。家庭では、絵本やマンガ本の読み聞かせをしてほしいということが多くなり、まとまった時間(30分~1時間程度)、親の読み聞かせを楽しむようになってきた。また、読み聞かせしなくても、一人で読書をするようにもなってきた。

マルチメディアデイジー教科書による読み聞かせをする際に、「教科書とパソコンの好きな方を見てもいいよ。」と言うと、教科書は閉じ、パソコンの画面を見ることを選択する。理由を本人に尋ねたところ、パソコンの画面の方がハイライトがあって集中できることと、教科書はページをめくらないといけないから、ということであった。

語句の意味や内容把握、文章読解の指導をするときには、マルチメディアデイジー教材の画面をプロジェクターでスクリーンに映し、語句や文に書き込みをしながら読解の指導にも効果的であると感じている。