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デイジー活用事例集 小学校高学年

5段階の指導形式で、読みの向上を図った

栃木県鹿沼市立みなみ小学校教諭 荒川 一志

1.本人の現況

小学校5年生(10歳)、男子。ADHDの診断あり。衝動性・多動性が強く、注意集中を持続することが困難である。入学当初、仮名を読むことはできたが、単語や文節、文章を流暢に読むことができないため、意味理解をすることが難しかった。デイジーを使用する以前は、紙芝居や絵本等の読み聞かせにより単語の習得、プリント学習で仮名の習得を行なっていた。現在は、行なっていない。デイジーの活用により読みの力が格段に向上したため、PCソフトなどを活用して読み書きの能力向上を図っている。

次のソフトを活用している。

  • 小学館「DS陰山メソッド電脳反復正しい漢字かきとりくん」
  • 進研ゼミ「文章読みトレーニングたのしく毎日読みトレ」
  • 株式会社 がくげい「ランドセル」
  • 「特別支援教育のための教材生活シミュレーションで育てる
    「聞く・話す・読む・書く」http://www.e-kokoro.ne.jp/ss/n/
  • 「一人ひとりの教育ニーズに応じるデジタル読み書き支援」
    http://www.e-kokoro.ne.jp/ss/r/

2.デイジーの活用による支援

デイジーは、小学校1年生の3学期(1月)から使用した。デイジー教科書に興味を示すものの集中が持続しないため、初期の段階では5分程度の指導にとどめ、意欲が低減しないように努めた。

デイジー図書が存在することは以前より知っていたが、日本LD学会第17回大会(広島大会)の際にデイジーが展示されており、法改正に伴いデイジー教科書ができることを知ったため、利用を始めた。使用を開始してから約4年が経過した。使用しているデイジー教科書は小学生の国語である。

デイジーはAMISで再生している。

学校での個別での学習の時間を設定し、初期の段階からある程度読みが流暢になるまでは教師と1対1での学習を行なった。指導はパソコン室で行なった。理由としては、パソコンが多数設置されているものの単調な空間であり、視覚的・聴覚的に刺激が少ないため注意集中が持続すると判断したからである。

本校では、以下のようなスタイルの指導形式で、読みの向上を図った。指導においては児童一人一人の目標が異なるため、教師が隣で学習の様子を確認しながら行なった。

【指導の段階】

①音声ガイダンスを聞きながら、指でなぞる。

②音声ガイダンスを聞いたあと、指でなぞりながら読む。

③音声ガイダンスを聞いたあとに読む。

④フレーズのハイライトが移動した時に一時停止をして読む。読み方が分からない時には、再生して確認して読む。

⑤音声ガイダンスを聞かずに読む。

※フォントのサイズや背景などの色は各自の好みで設定し、再生速度は習得状況によって教師が変更した。機器の操作も読みが流暢になるまでは教師が行い、一人でも流暢に読めるようになってから児童に操作させた。

本児の場合は小学校1学年時に①の段階からスタートしたが、現在では、初見の段階から④ないし⑤の段階からスタートできるようになった。

指導の頻度は、開始時においてほぼ毎日であったが、流暢に読めるようになってきたため、現在では週1~2回程度にまで減ってきた。

指導後約半年で読みの時間が短縮された。読み時間が短縮されたと言うことは、逐字読みから流暢な読みに変化したことである。誤読も減少し流暢な読みに変化したことで、文章理解が進んだ。

文章が読んで理解できるようになったことで、国語だけでなく他教科の学習問題が理解できるようになった。「読める」が「分かる」に繋がり、「分かる」が「できる」に繋がった。その結果、学習意欲が向上し、学びに対して前向きな姿勢が育ってきた。読める楽しさを知り、自らが図書室で本を借りて読むようになった。また、読める楽しさから様々な事象への関心も高まった。家庭での外出の際には、車窓から見える看板等の文字を読んで楽しむ姿も見られるようになったという。

本校では、本児以外にもデイジー教科書を活用しての読みの支援を行なってきた。児童によりその開始時期は様々であるが音読時間や誤読数、逐字読みの数の変化を見ると、低学年時より支援を受けた児童の方が、高学年時より支援を開始した児童よりも短期間で効果が現れ、改善の幅も大きかった。読みに困難さをもつ児童に対しては、早期の支援が重要である。