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第9回中国情報アクセシビリティフォーラム参加報告

2013年10月15日、16日

(公財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター
長田 江里

2013年10月15、16日の二日間にわたって、北京の中国盲文出版社で開催された第9回中国情報アクセシビリティフォーラムに参加した。
初日は、ユネスコ(UNESCO)、中国インターネット協会(Internet Society of China)、中国障害者連合会(CDPF-China Disabled Persons Federation)、中国障害者福祉基金会(CFPD-China Foundation for Disabled Persons) 、中華人民共和国工業情報化部(MITT)といった中国政府や企業や権利擁護団体などにより講演があった。中国の現状は、8,500万人ほどの障害者がいて、1700万人ほどの視覚障害者が暮らしている。そのうち、400万人が全盲である。その上、高齢者人口も20%ほど占めている。今後、こういった障害者、高齢者の生活をサポートしていく上で、データベースの有効活用、アクセシビリティなユーザインターフェイス、オンラインサービスの充実など、今後のさらなる構築の重要性を述べていた。
オープニング


二日目は「Sub-Forum2:Accessible Reading」セッションに参加した。このセッションは、DAISYコンソーシアムと中国盲文出版社(China Braille Press)が主催し、コンソーシアム会長のスティーブン・キング氏と中国科学院大学教授のYang Jia氏がモデレータとなり開催された。
まずはスティーブン・キング氏よりセッションの説明のあと、IDPF会長のジョージ・カーシャー氏よりすべての本が同じマテリアルで同じ価格で目と耳と指を使って読むことが出来るようになってほしいと述べた。EPUB3についてもHTML5、SVG、MathML、CanvasといったW3CのWebベースのフォーマットに準拠していて、その中でもアクセシビリティの仕様としてシンクロ、ナビゲーション、TTS、辞書機能といったものも含まれていると述べた。ただし、正式な製作ツールというものがないので、IDPFではプリフライトツールとして、チェックリストがあるので、活用してほしいとのことだった。
最後のQAで今後EPUB3が主流となっても、現時点でもっとも多く流通しているDAISY2.02規格の図書について、DAISYコンソーシアムとしては、DAISY Pipelineツールがどのフォーマットの電子書籍になっても、サポートしていくということを述べた。
ジョージ・ジャーシャー氏
次にカナダにあるCNIBのMargaret McGrory氏よりTIGARプロジェクトについての講演があった。現在参加している国は20カ国以上あり、40以上の著作権管理団体も参加している。今日までに600タイトルがTIGARネットワークを利用して共有されている。
エンドユーザのTIGARプロジェクトの参加や開発途上国などプロジェクト参加国の確保など今後の活動なども述べた。また、マラケシュ条約により、締結された国々間でのアクセス可能なフォーマットの製作、開発途上国などへと活動、コスト面等改善されていくであろうと述べた。

RNIBのNeil Heslop氏からは、自身が20歳の時に目が見えなくなったが、今日のモバイル技術によって、新聞や本を読んだりすることが出来、モバイル技術のおかげで視覚障害者にとっての生活は一変したという報告があった。それでもまだ、取り巻く環境については十分とは言えず、誰もがどの情報も同時に同じ価格で手に入り、目、耳、指を使って読めるようになり、多くの出版物がアクセシビリティを考慮され、購入したり借りたりすることが出来るようになるほしいと主張した。
また、中国盲人出版社でのサービスのが紹介された。5つのセクションに分かれてサービスを行なっている。主なものに点字出版、大活字、リーディングサービス、ScreenReader、BookReader(doc,Txt,htmlファイルなども読むことが出来る)、SunShineとよばれるスクリーンリーダーソフトの提供など、点字だけでなく様々な技術を使ってのサービスを提供している。また、中国盲文図書館では、拡大図書をこの5年間で1500タイトル、点字図書を年間800タイトル製作する予定である。DAISY図書に関しては90%が音声のみだが、10%はマルチメディアも製作しており、800タイトルほど製作済ということだった。
タイのMonthian Buntan氏からは「Tab2read」のサービスについての紹介があった。まだベータ版であったが、マルチメディア版のデモを中国語で紹介された。電話回線より音質もよく、ナビゲーション機能はキーパッドを使用し、DAISY2.02/DAISY3/EPUB3もサポートしている。データのアップロードはDropboxを使用している。2年前には電話回線を使用してのサービスだったのが、この2年で大きく変化した印象を受けた。
また、アメリカのBetsy Beaumon氏によりBookShareの紹介があり、現在260,000名ユーザが世界中にいて、DAISYテキスト、音声、点字といった種類の書籍を214,000冊提供している。毎年3,600冊製作している。iOS(Read2Go), android(Go Read)に対応した再生ツールも提供していて、読みたい時にどこでも読める提供を行なっている。
現在でも40カ国以上のパートナーが存在しているが、今後も中国を含め、開発途上国などとの連携を図っていきたいということであった。
Betsy Beaumon氏
その他国内外の企業よりさまざまなツール、ハードウェア、サービスの紹介があり、日本からはシナノケンシのPLEXTALK製品の紹介があった。
今回のフォーラムを通して、出版物などの情報は誰にでも読む権利があり、同時期に同価格で提供されるべきであり、そのためにあらゆる技術を使用して世界中の国々、さまざまな団体が取り組んでいる現状を身近に感じることが出来た。先日のマラケシュ条約により、著作権等の環境整備がされ、批准国が増え、視覚障害者を含めたさまざまな障害者にとって、情報格差をなくなる世の中に進んでいってほしいものだと強く感じました。