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2館が今年のDAISY-図書館賞を受賞

互角の戦いの後、録音点字図書館は『今年のDAISY図書館賞』の授賞館を2館選び出した。 カールスクーガ図書館とウプサラ市立図書館である。この賞は11月24日のイェーテボリィ図書及び図書館フェアで授与される。最初に与えられる賞品はプレックストークポケットモデルのDAISYプレイヤーである。この表彰の目的はDAISYと機能障害を持つ人々の利用しやすさに対して熱心に取り組んだ図書館を鼓舞することである。

ウプサラ図書館の3度目の正直

文と写真:レーナ・ブークヴィスト

「今年はやっと私達の番です。」
ウプサラ市立図書館の図書館司書セシリア・シャーンシュテッドが『今年のDAISY図書館2009』賞授与の後に言った。

ウプサラの歩行者天国の上に掲げられた黒いボードの上に、白い文字で市立図書館と書いてある。それは気持ちの良い外観だが、あまり目立たないかもしれない。通りから見えるのは赤いレンガの入り口と中への通路のみである。しかしドアから一歩足を踏み入れると、すばらしい空間がそこにある。明るく開放的で天井が高く、親しみやすい受付カウンターが近くにある。清潔な香りが漂い、開館30分後にはもう、そこは来館者でいっぱいになる。

価値のある賞

筆者達がいるのは今年のDAISY図書館の1つである。しかし実際には、このような賞を授与されるとは何を意味するのだろう。
「これは大変大きな意味を持っています。大変うれしく、価値のあることです。」
セシリア・シャーンシュテッドは述べた。
「そうですね。私達の周りの人々はDAISYに注目しており、利用者からも政治家達からも祝辞をいただきました。フェイスブックには海外からも、祝辞の言葉が殺到しました。」
ウプサラ市立図書館検索部のマーリット・アルヴィッドソンも言った。
この賞は2005年に設立され、ウプサラ市立図書館がノミネートされたのは、これで3度目だった。

子どもに焦点を合わせる

「今年私たちは特に子どもと青少年に焦点を合わせました。例えば録音図書やこの対象グループが手に取りやすいような図書に関する業務を行う図書館司書を雇用しました。」
セシリア・シャーンシュテッドは言った。
「私たちは録音図書をりんごの棚から印刷版図書の書棚に移動しました。その方が手に取りやすく、より多く貸し出せるからです。」

DAISYのシンボルと内容

 子どもと青少年向けの図書は、一階下のカラフルなフロアにある。最も小さな子どもの為には遊びの小屋、おもちゃ、それに絵本があります。もう少し大きい子ども用には、録音図書や点字図書や印刷版の図書が並ぶアップルコーナーがある。
「DAISY録音図書のようにステッカーを表紙に貼った印刷版の図書も一冊あります。
私たちはOpac:en(オンライン蔵書目録)が使うDAISYのシンボルを利用しています。」
セシリア・シャーンシュテッドは言った。
 図書の背にはこの図書の内容を示すシンボルが貼ってある。例えばもしハートのマークがついていたら、この図書は恋愛物なのだ。これらのシンボルは大人向けのDAISY録音図書でも使われている。

オーディオインデックスで聴く

 目があまり見えない利用者は、オーディオインデックスを借りることができる。これを用いると利用者は自分で録音図書を集め、読み上げられるタイトル、作者、図書の説明をヘッドフォンで聴くことができる。
「自分で聴いて、試してみると、まったく新しい世界が開けるのです。」
視覚障害者全国協会ウプサラ県支部から来ている利用者、ブリッタ・ルンクヴィストは言った。
「手助けを求めてあちこちかけずり回らずに済むのは、本当に気持ちが楽です。私は図書館に来て本を探すことが大好きです。」 彼女は言った。

ダウンロード97%

ブリッタは図書館に来ることは大好きであっても、多くの場合図書を家で予約する。他の多くの市立図書館の利用者と同じように。
「私達が貸し出す録音図書の80%は、図書館に電話をかけてきて予約をした利用者か、『本がやってきた』の利用者のもとに行きます。」
セシリア・シャーンシュテッドは言う。
録音図書課で働く3人は、希望者の為にデジタル録音図書をダウンロードする責任を負っている。ダウンロードする数を考えれば、彼らがいかに多忙であるか判る。彼らが貸し出す録音図書の97%は、国立録音点字図書館からダウンロードしたものなのである。

メモリーカードとプレイヤー

「私たちは図書館サービス社から、以前ほど録音図書を購入していません。今現在ある技術を活用したいと思うからです。」 マーリット・アーヴィッドソンは言う。
「録音図書に使っていた経費分は、プレイヤーとメモリーカードを購入することに使いたいと思います。私達はメモリーカードに一冊の図書をダウンロードし、梱包に入れて貸し出します。多くの人々が、それが小さくて、作業がスムーズであることを喜んでいます。その上にその図書を携帯電話でもコンピューターでも聴けるのですから。」
マーリット・アーヴィッドソンは言った。

機能する録音図書課

ここには技術に興味があって積極的に関わる職員がおり、喜んでくれる利用者がいる。利用者の一人はこのように表現した。
「社会の他の部分が機能しなくても、ウプサラ市立図書館の録音図書課だけは機能するでしょう。」


カールスクーガの居心地良い図書館が、ウプサラ市立図書館と共に『今年のDAISY図書館2009年』賞を勝ち得た。

カールスクーガ図書館はDAISYへの道を示す

文と写真:レーナ・ブークヴィスト
「私達の家にようこそ!」
カールスクーガの図書館長、ヘレーネ・タイロールが言った。
 彼女は正しい。カールスクーガの図書館に一歩入ると、それはまるで誰かの家に入ったようだ。ここには全ての人の為の空間がある。子どもたちや青少年たちがモダンな回転式の安楽いすに座ってテレビゲームをしている。また別の部屋にはモーラ産の床時計、美しいカーペット、テーブル、この地方の文学が並んでいる。
エントランスの近くには録音図書が美しく並べられている。
「以前私達は入り口の間近に録音図書を置き、それを誇りに思っていました。しかし貸し出し利用者に調査をしてみたら、彼らにとってはなんとなくじゃまに思えることが判りました。そこで少し中に位置をずらしました。今の場所は皆が気に入っています。」
ヘレシーネ・タイロールが言った。

敏感な図書館

この図書館の成功の裏には何か秘密があるように思える-彼らは利用者の声を聞いたのだ。
 『今年のDAISY図書館』にこのカールスクーガ図書館を選抜した審査員の動悸は、このように聞こえた。
「この図書館は利用者の必要性と要望に対して敏感な耳と感覚を持って、すばらしく発展し、全ての年代のDAISY読者にとっての利用しやすさを統合した。必然性をもって力強くこの地域に根付き、この図書館はDAISY技術の発展を通して利用者達に多様な文学を示した。」

DAISYに至る道

入り口からは録音図書が目に入る。その上に『DAISYに至る道』という文字と共にくっきりと描かれた大きな足跡を辿っていくと、そこにちゃんと辿りつけるようになっている。並んだ録音図書の上には、ゆらゆらと揺れるCDと共に、開かれた傘がさかさまにぶらさげられている。
「私達は常に録音図書に関して活発に活動してきました。」
70年代半ばからこの図書館で働いている課長のマルガレータ・エークルンドが言った。
「私はカセットテープの頃からこの活動に関わってきたのです。DAISYのCDを紹介する時、私は利用者達がカセットに未練を持つのではないかと不安になります。しかしこの改革は大変上手く進んでいます。」

録音図書クラブとたまり場

まず始めにDAISY録音図書を試したのは録音図書クラブのメンバーたちだった。
一ヶ月に一度集まる、結束の固いクラブである。このクラブは1996年に発足した。もう何年間も参加しているトニー・マグヌソンはこのミーティングを喜んでいる。
「彼らはすごく楽しいいい人たちです。私達は最近の、そして前からある録音図書の読書のヒントをもらえます。それにコーヒーを飲んで昔からの仲間達とおしゃべりをするのです。」
 もっとDAISY録音図書のインフォーメーションを望む人々や、技術に関して支援が欲しい人々のためには図書館が1ヶ月中に一度、火曜日のどれかにDAISYの溜まり場を設定する。
 この時に貸し出し利用者はプレイヤーを試したり、アップグレードしたりでき、また図書の情報ももらうことができる。溜まり場のアイデアはウプサラ市立図書館から得た。

ダウンロードする職員

カールスクーガ図書館には5600冊のDAISY録音図書がある。しかし国立録音点字図書館のデジタル図書館を通して、約75000タイトルのデジタル録音図書を入手している。 「私達はかなり多くのタイトルの録音図書を購入しています。ですからダウンロード件数はものすごく多くはないのです。しかしダウンロードはそれでも私達にとって重要です。利用者にすばやくサービスができるように、職員たちは全員ダウンロードができます。」
ヘレシーネ・タイロールは言った。

小学校のDAISY

図書館はDAISY録音図書と読書プログラムAMISを、小学校でマーケティングすることに力を入れている。その責任者は、学校図書館改善担当のサンドラ・スピューツである。
「私達は学校図書館のある全ての学校に、DAISY図書館を築きたいと願っています。残念ながらカールスクーガにおいてはそれには1つ問題があります。まだそちらの方向には努力をしていない学校がたくさんあることです。できれば私のサービスの一部を、学校で図書をダウンロードすることに振り分けられたらよいのにと思っています。私はダウンロードを用いてこの事業がうまくいくことを確信しています。」

図書とDAISYを見せる

カールスクーガ図書館の子どもと青少年課では、録音図書はかなり人目につくようになっている。彼らは一部、自分たちで図書とDAISYのパックを作るが、CDは図書のカバーについているビニールのポケットに入っている。
「この方法によってDAISYがより魅力的に見えますし、人目につきやすくなります。」
課長のマリア・ロベルは言った。
「私達にとってはDAISY録音図書が他の図書と同じように公開されていて、対等の立場であることが大切なのです。図書であることに変わりはないのですから。」

●デジタル録音図書の中には、テキスト、音声、画像がついたDAISY録音図書と、音声のみのデジタル録音図書が含まれる。

掲載者注:
りんごの棚(Äppelhyllan)については、下記の記事をご参照ください。

「りんごの棚」物語
特別なニーズのある子供たちを公共図書館サービスの対象とするための一手段
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/ifla/jenny_nilsson/appelhyllan.html


原本書誌情報

Boqvist, Lena. “Två vinnare i Årets DAISY-bibliotek”. Bibliotek för alla. 2009, No.4, p.12-15.
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/bfa42009.pdf (accessed 2010-05-18).

写真は原本を参照のこと


14頁 写真
カールスクーガルームで。後ろに立つ人々の左側から:マルガレータ・エークルンド、エンマ・エーロフソン、サンドラ・スピューツ。前に座る人々の左側から:マリア・ロベール、ヘレシーネ・タイロール、レーナ・ペッテション