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【世界の動向に視点をあてて】

マーカス・ギリング

DAISYコンソーシアム技術開発部長
スウェーデン国立点字録音図書館(TPB)

皆さん、こんにちは。本日は皆さんとご一緒できて大変嬉しく、また光栄に存じます。既に河村さんとジョージのほうからも話がありましたけれども、現在DAISYの改訂が行われようとしています。DAISY 4というもの、それからEPUBのスタンダードも変更の途上にあります。私は今日、もう少し詳しくその点についてお話をさせていただきたいと思います。DAISY 4と、それから将来のEPUBの中身についてお話をいたします。

資料1

資料1のテキスト

アクセシブルコンテンツを製作していらっしゃる方々、どのようなことが今後ありうるのか、1年、2年、3年後には何が起こるかということを、少し垣間見ていただけるのではないかと思います。

それでは、DAISY 4についてですが、DAISY 4は2008年に改訂が始まりました。このときにDAISYコンソーシアムにおきましては、世界に対して、公的な、何が必要なのかということ話合いを持ちました。これは関係者にも、DAISYコミュニティでなくても、すべての人にオープンで行ないました。私たちがやりたかったのは、いったいどのような組織、あるいはエンドユーザーが何を求めているのか。ユーザーとプロデューサー、将来的にはDAISYをどう変えてほしいと考えているのかということを知りたかったからであります。この会合から明らかになってきたことがあります。それは、いろんな組織、いろんなユーザーが、今のDAISYに満足はしているけれども、もっともっといろいろな機能を欲しがっているということでありました。

資料2

資料2のテキスト

いろいろな要望の中には、いくつかのパターンがあるということが分かりました。二つの明確な分野に分けることができます。一つは製作の部門です。アクセシブルなコンテンツを作っている組織が、新しい機能を要望していたのです。

もう一つの分野は配布、消費と言ってもいいのかもしれません。現在のDAISYのエンドユーザーが求めている新しい特性が分かりました。それからエンドユーザーについてはもう一つ興味深いことが分かりました。それは、いろんな障害を持ったグループの方々は、DAISYのほとんどの機能を使うことができていたわけですが、しかしDAISYに、その人たちにとって欠けている部分があったということです。その部分を補足すれば、新しい形でDAISYを使うことができるだろうということが分かってきました。そこで、このDAISY 4というものが考えられるようになったのです。

資料3

資料3のテキスト

まずXMLのマスタープロダクションを使うということです。一つのXMLドキュメントがあれば、そこからDAISYの本を作ることもできるし、電子テキスト、あるいは点字、大活字など、PDFでも作ることができるということになるということです。これはDAISYが始まったころからあった概念ですけれども、この10年ぐらいの間にDAISY 3を使いながら、DAISY 4では次のステップに進むべき時が来たということを認識するに至ったわけであります。XMLのドキュメントフォーマットを、いろんな形に変換することができるようにしようとしてきました。DAISY、電子テキスト、点字、そしてその他に使えるようにしようということです。

それからディストリビューション=配布に関しては、ビデオのサポートが欲しいということです。DAISYの録音図書の話でもありましたけれども、そういうことが第一でした。それから学校の場におきましては、いわゆるインタラクティブにして欲しいというお話がありました。これについては後ほどもう少し詳しくお話をいたしますが、教育の現場において、テストをするとかワークブックの作業をするときに、DAISYフォーマットでできるようにしてほしいというリクエストでありました。特に興味深かったのが、日本の場合は、日本語にはルビを振る必要があるので、それをサポートしてほしい、それから縦書きのテキストもサポートしてほしいということでありました。これは非常に重要な側面の一つであります。

我々の要件やいろいろな人から寄せていただいた要望の分析をもとにしたDAISY 4の規格は、二つの分野に分かれます。一つはオーサリングの部分のところです。これは、シングルXMLドキュメントフォーマットという単一のフォーマットで、すべてができるようにするということです。二つ目は配布、あるいは消費の部分でありますけれども、この分野ではエンドユーザーフォーマットだけを取り扱います。これについてはもう少し後ほどお話しいたします。

全体像として、いくつかのことを指摘しておきたいと思います。このパートBと言われる配布の部分です。新しい機能として、音声フォーマットの新しいコーデックを追加いたします。録音の質が、ファイルが小さくても向上するというものです。

それから単一ファイルの配布フォーマットというものも提供したいと考えています。単一のファイルで対応できるというものです。特にユーザーがWebを利用して、コンテンツを得るには、これが重要だと思います。

それから検索インデックスを追加いたします。事前にコンパイルされた検索インデックスです。これは音声DAISYでも使用することができます。特定の言葉を検索することができるというものです。

それから単純化を図ろうと考えています。できるだけ低価格で提供することができるように単純化を図ります。

このパートA、パートB、両方の分野において、非常に多様なユーザーコンテンツに対応することができるようにしたいと考えています。

DAISYというのは途上国でも製作のために使われています。しかしその人たちの資金というのは非常に限られています。また、先進国でももちろんDAISYは作られています。またたくさんの資金がある団体もあります。したがって我々にとっての課題は、これほど多様な製作分野の人々がともに使えるように単純なもの、なおかつ非常に様々な機能を使えるようなアドバンストのもの、両方に対応できるようなものにしたいということです。

これまでのDAISY、DAISY 3 XMLフォーマットもそうですが、書籍が中心でありました。もちろんこれは今後も続くと思いますけれども、その他のタイプのコンテンツもこのDAISYでサポートできるようにしたいと考えています。特にオーディオです。あるいはアーカイブのコンテンツ。したがって、例えば書籍ではなく、雑誌とかジャーナルとか手紙とか、あるいは政府の文書、そういうようなものをXMLフォーマットで再生することができるようにしなければならないわけであります。

資料4

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ここにあげたのがプロファイルでありますけれども、それぞれのプロファイルは特定のタイプのコンテンツに焦点を当てています。それからこのプロファイルを特定のニーズに適用させる、特定の組織のニーズに合わせることができるようにするということが重要です。例えば日本においては日本語の点字書籍をXMLファイルで作らなければいけない、特定のニーズがあるとしましょう。例えばライン、線ですね。線を途中で切ってしまってはいけないというような場合には、そういう情報をこの XML フォーマットに入れると、それにも対応することができるようにしようというようなことを考えています。

それからできるだけ既存のスタンダードを使いたいと思っています。既に行われたものを再開発するような無駄は避けたいということです。

それから高等教育での数学もDAISYサポートが非常に重要となってきています。また、SVG(スケーラブル・ベクター・グラフィクス)、イメージやグラフというものをもっともっとアクセシブルにし、これをサポートするつもりです。それから合成音声など含めて対応できるようにしたいと思っています。

それからルビです。それから、点字に関しては一番難しいところでもありますが、RDF(リソース・ディスクリプション・フレームワーク)というのを使います。適切な点字のニーズに対応できるようにしようというものであります。

つまり、そして必要であれば、リッチなコンテンツのマークアップができるようにしたいと思うのです。つまり、これらの機能が必要ない場合にはスキップできる形式にしたいと思っています。

次が配布、ユーザー側の問題です。この面では、やはりプロファイルという概念を使っています。これも非常に多様なユーザーというものが考えられるので、ニーズも多様です。非常に単純な娯楽用の書籍の読書から、数学とかSVGなどのさまざまな非常に高度な大学の教科書や、あるいは書籍を読まなければならないというようなこともあります。様々な要件がそこにはあるわけで、それも可能にしなければなりません。したがって、ユーザー、それからプロバイダー、そしてツールのプロバイダーにとりましても、特定のDAISYのプロファイルに焦点を当てて対応することができるようにしたいと思っています。現在のDAISYでも単純化されたオーディオプロファイルがありますが、今のものよりも単純化するつもりです。特に低価格のハードウェアを使う場合には、これを適用したいと考えています。ツールを作る側でも安くすることが重要だと思いますので、コストを低減できるようなプロファイルを提供したいと思っています。

二つめのプロファイルは、今のところ仮の呼び名ですが、「クラシックプロファイル」と呼ばれるものです。オーディオと、それから同期化されたテキスト、それからイメージを伴うものです。例えばルビがサポートされているというようなものも提供することになるには、バクの修正が必要となるのです。しかしながら非常に革命的なことが起こっているのは、次の二つのプロファイルです。今、暫定的に「プロ・プロファイル」と呼んでいますが、あまりいい名前ではないので最終的には名前が変わるかもしれません。これは次世代のDAISYで、まさに革命的な特徴と言いますか、機能を持ったものです。これについても次のスライドでお話をしたいと思います。

四つ目がジョージのほうから話がありましたテキストだけのプロファイルで、e-ブック・プロファイルというものです。商業的なEPUBスタンダードというものです。

資料5

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では先ほどのプロ・プロファイルに戻ってお話をしたいと思います。ユーザーグループというのは障害を持った人。この10年ほど、DAISYフォーマットを使いながら、もっとよくしてほしいと言ってこられたわけであります。例えば、聴覚障害を持った人、それから認知障害を持った人などです。グレゴリーさんのほうからお話がありましたように、ディスレクシアの人たちも色々なタイプの方がいます。画像と動画がとても重要な情報となる人たちもいます。

そこで DAISY 4 においては、DAISYブックの中にビデオをサポートすることにしたいと思います。You Tubeに行きますと、ビデオがあってプレイボタンがあるページがあります。DAISYでは、これとはまた違うものとなると思います。DAISYブックの中に、ビデオを完全に同期化したマルチメディアの方法で提供いたします。ここに人間が手話で通訳をしている動画があります。それからこのビデオの左側には、まず本のテキストがあって、イメージが描かれています。そして手話とテキストがお互いにシンクロナイズされています。ですから、DAISYでは、同期化というコンセプトで行なってきて、それにビデオがプラスされるということになります。

資料6

資料6のテキスト

もう一つ大きな革命的な特徴として挙げられるのは、インタラクティブなフォームです。幼児期から大学まで、テストを受けることができる、また学校から与えられたワークブックの作業をすることができる、あるいは学生が必要な場合には情報を入力することができる、こういうようなことがまだ行われていないのです。DAISYによって、まさに文明社会においては、このような機能をすべての人々に提供しなければならないと考えています。学校でテストを受けるとか、あるいはインタラクティブな作業にアクセスすることができるということは、すべての人に担保されなければならないと思います。したがって、これが二つの新しい主要なDAISY 4の機能であります。

さて、テキストだけのe-ブックですが、DAISY2、3においては、テキストのみのフォーマットもサポートしてまいりました。しかしジョージが話をしたように、今、非常に大きなメインストリームのe-ブックとの統一のチャンスがあると思います。基本的に我々のやってきたことの代わりに、EPUBをアクセシブルにするということがあると思います。

私は今日のスピーチは20分しかありません。20時間はないわけですから、簡単なお話しかできないわけですけれども、しかし朗報があります。EPUB2.0は既にDAISYナビゲーションをサポートしています。それからDAISYのXMLもサポートしています。今年、EPUBの改訂が始まっています。「EPUB3.0」が、おそらくそういうふうに名前がつくと思いますけれども、作られようとしています。これに対してDAISYが参加をするということになります。アクセシビリティの要件はきちんと、それからまた国際的な要件も満たされるということを担保にしたいと考えています。EPUBの場合にはルビと縦書きのテキストで問題がありました。明らかに次のバージョンではこれに対応したいと思います。継続的なアクセシビリティ、たくさんの人がアクセスすることができるようにということを担保しながら、それをやっていきたいと思っています。

資料7

資料7のテキスト

まとめですけれども、今年、それから来年にかけてでありますけれども二つの改訂が並行して進みます。DAISY 4がその一つ、EPUB 3がもう一つです。この二つを調和化させていくということ、それが成功すれば、これは非常にアクセシビリティに関する重要性があり、大きな出来事になると思っております。この点での合同作業が進んでいるということは、非常にすばらしいことだと思います。非常にリッチな、同期化されたフォーマットが提供されます。EPUBというのはテキストのみになりますが、DAISYはこれをDAISYのテキストプロファイルとして採用することになります。

一つ大きな期待と言いますか、DAISY 4のバージョンでは、DAISY XMLフォーマット、次世代のフォーマットを豊かなものにして、DAISY、EPUB、それから点字、大活字、一つのファイルですべてが作り出せるようにしたいというふうにすることであります。したがって一つの単一のファイルから様々な形に、ユーザーのニーズに従って、読書環境を作ることができるようにしたいと思っているわけです。

資料8

資料8のテキスト

私どもは、オープンで、そして特定のものに限定されていないコンテンツを作成するということを奨励したいというふうに思っています。この意味におきましては、DAISY 4とEPUB 3が非常にいいソリューションになる、完璧なソリューションになると考えています。以上です。ありがとうございました。