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マルチメディアDAISY活用事例要約集

公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会情報センター
2011年8月18日作成
2012年8月16日更新

 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会は、1999年1月に厚生省補正予算事業実施のために「デイジー情報センター」(現在は同協会情報センター内「DAISY研究センター」)を設置して以来、継続して、国内におけるDAISYの普及に努めてきました。
 過去のDAISY関連事業の記録は、「DAISY関連事業のあゆみ」をご参照ください。

 DAISY研究センターの活動の一環として「DAISY関連講演会の企画・開催」を行なってきました。今までの講演会記録・報告書は、「アクセシブルな情報システム"DAISY"に関する取り組み」に掲載しています。
 この記事には、今までに開催したDAISY関連講演会で紹介のあったマルチメディアDAISYの活用事例の要約を掲載します。
 作成日現在で掲載しているのは、マルチメディアDAISY教科書の活用事例です。今後、このページは随時更新していきます。

平成20年度DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業報告書「DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業」成果報告会 ~DAISY教科書提供体制の確立を目指して~(2009年2月11日)

パネルディスカッション「DAISY教科書提供体制の確立を目指して」:山中香奈(兵庫県LD親の会たつの子副代表)

小学校5年生の男の子

読みの特徴

  • 本読みは、平仮名だけであってもすべて拾い読みだけだった。
  • 目線がちょっと外れたら、もうどこを読んでいるか分からなくなる。
  • 一度分からなくなるともう元に戻れない。
  • 内容理解も乏しく、先生の説明も質問もあまり分からない。
  • 学年相当の漢字の読み書きができない。小学校5年生だが小学校3年生の漢字でもあやふやなところがある。
  • 教科書が新しい単元に入ると、親が指導して、漢字に振り仮名を振る作業をする必要があった。振り仮名を振りながら本を読ませて、読み間違いを指摘して一緒に読み進めていた。
  • 文字を見て、それを音声化することが特に苦手なので、読むという作業に労力を使いすぎ、読み終わっても文章内容はまったく覚えていない。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYを使用し始めたのは2007年の年末のころ。
  • 新美南吉の「ごんぎつね」は、3学期に授業でやることが分かっていたので、DAISY図書の「ごんぎつね」積極的に使うように勧めた。
  • 年明けになると、奈良デイジーの会が個人にあわせてもっと読みやすいように改良したCDが届いた。教科書と同じ挿絵と、自分のオーダー通りになっているDAISYに喜び、今まで以上にDAISYで「ごんぎつね」を読んでいた。
  • 他の物語も読んだが、このとき1か月ぐらいは、「ごんぎつね」を読んでいた。

DAISY使用後の変化

  • DAISYで学習した文章は、すらすらと読むようになり文章の理解も進んだ。
  • 大嫌いだった国語が嫌いではなくなったと言う。
  • 「ママ、学校で先生が読んでいるところが分かるようになったよ」と嬉しそうに報告をしてくれた。
  • DAISYの学習を始めてから、目線を外しても、またどこを読んでいるのか探し出せるようになった。
  • 振り仮名を振る作業が必要なくなった。
  • 「ごんぎつね」に関しては、予習期間が長かったことと、お話の内容を気に入ったことなど、プラスの要素がたくさんあったせいかもしれないが、物語のあらすじも、主人公の心情理解までも、しっかりと理解していた。
  • これは音読にも現れており、セリフには抑揚まで付くようになっていた。
  • DAISYの学習を始めてしばらくすると、読める漢字が増えていることにも気が付いた。
  • 漢字に興味を持ち、ドライブ中でも看板の文字を読むようになってきている。
  • さらに昨年秋ごろ、DAISY図書の「走れメロス」を気に入り、毎日枕元にパソコンを持ち込んで寝るまで「走れメロス」を流していた。
  • ある日、学校の図書館から本を借りてきた。よく見ると「走れメロス」だった。
  • 後日息子に本屋に連れていかれた主人は「走れメロス」を買わされていた。息子が本をねだったのは、これが初めてのことだった。

講演会「読みの困難な児童・生徒に向けたDAISYによる支援」(2010年1月9日)

報告者:荒川 一志(栃木県鹿沼市立みなみ小学校 教諭)

全体

読みの特徴

  • 本校は250名弱の学校だが、その中に読み書きに困難を抱えている児童がいる。
  • 児童養護施設から通うお子さんもいて、その子の大半が非虐待児ということもあり、乳幼児期に適切な愛情・教育を受けてきていないために読み書きにかなりな困難を呈している。
  • 外国籍児童も通学しておりまして、保護者のほとんどが日本語ができないために子どもも日本語が十分にできないという面で、かなり混乱を感じているお子さんがいる。
  • DAISYを活用するに当たり、まず保護者の了解を得て、簡単な読み書きの検査、必要に応じてWISC-3(ウィスクサード)などの検査も行って、その子の認知特性等について把握をしている。
  • その後、DAISY教科書を活用した方が有効だと思われるお子さんについては、保護者の了解を得るとともに、スクリーニング検査をもとにその子のアセスメントを立てる。
  • 実際にそれを受けて指導を開始し、約半年ほど経過した段階で、もう一度指導の評価のために検査を行い、指導の有効性について検討する。
  • それをもとにまた個別にアセスメントを立て直し指導に当たる。

DAISYをどのように使用したか

◆一つの読み物の学習の流れ

  • 音声ガイダンスを聞きながら、指でなぞる。
  • 音声ガイダンスを聞いたあと、指でなぞりながら読む。→音と文字のマッチングを図る
  • 音声ガイダンスを聞いたあと読む。
  • 音声ガイダンスを聞かずに読む。→読みの習熟を図る

◆使用する機能

  • フォントサイズの変更・・・単元のよって、児童によって
  • 色の変更・・・フレーズ→テキスト黒、背景:黄色、ハイコントラスト→テキスト:白、背景:紺を主に使用
  • 再生速度の変更・・・音声ガイダンスを消した時に使用

◆機器の操作

  • 単元の初めは教師が行い、次第に児童に行わせる。

A児

読みの特徴

  • 事前検査をした結果、聞いて書くことでは拗音や助詞の誤りが多く、脱字も多い。
  • 書き写しは、促音とか字形とか読点の誤りも多い。
  • 読むときは大半が逐字読みになる。仮名を一つひとつ拾って読んでいく読み方が目立つ。
  • 見た文字を誤って読んでしまう。例えば「パンダ」を「ポンダ」とか、「きゅうに」を「きょうに」というような勝手読みも見られる。
  • 耳からは情報が有意に入ってくるが、文字を見てそれを出力することができない。
  • 聞いたことを出すときに、「トウモロコシ」を「トウモコロシ」と言ったり、「マヨネーズ」を「マネヨーズ」と言ったり、間違った言葉として表す場合も多い。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYを活用しながら、特に音声ガイダンスを活用して、音と文字をマッチングさせていきたいという目標を立てて活用を始めた。
  • 今は週3~4回、活用している。
  • 初めは5分程度だった。
  • 一番大切にしたことは、読むことが嫌いにならないように、子どもが、やりたくないときには早期にやめてしまう。
  • 読みを嫌、嫌いとならないようにと気をつけながらやってきた。

DAISY使用後の変化

  • 平均10~15分、長いときでは20分くらい集中して読むことができるようになった。
  • 聞いて書くときは抜かして書く傾向が見られるが、DAISYを半年活用して同じ検査を行ったところ、若干誤りが減ってきている。
  • 見て書き写すという作業でもDAISYを活用する前は、抜かして書いたり句読点も抜いている場合があったが、それも若干ではあるけれども減少してきている。
  • 半年使用して、逐次読みだった読みが改善されてきていて、つかえる場所が減った。
  • 文節や単語、文章を意識しながら読めるようになってきた。
  • 読みが楽しくなってきたようで、最近では自ら絵本を開いて読むようになってきた。

報告者:矢田 勝(静岡県浜松市立神久呂中学校 教諭)

ADHD傾向の生徒の一人

読みの特徴

  • ADHDの傾向が非常に強くて何か珍しいものがあると、すぐに触ってみる。

DAISYをどのように使用したか

  • ハイライト部分が動くので、ずっと集中してみていられた。
  • 30分から1時間近く、DAISY教科書を読んでいた。
  • 試しにDAISYなしで音読させようとしたら15分が限界だった。

通級学級全体

読みの特徴

  • 知的には遅れはないが、下位検査のアンバラスは大きい。
  • 読み取りが苦手。書字が苦手。
  • すぐに忘れてしまう。何度も注意される。
  • 音読していると疲れてしまう。
  • 自分の特性・得意を生かした学習方法が見つからず、授業やテストで苦戦している。

DAISYをどのように使用したか

○英語でのDAISY活用の工夫

1.音読の範囲は教科書の2P分。

  • まず聞く。英文と日本文を塊で記憶。教科書イラストを活用して使用する場面も併せて記憶する。
  • 一緒に読むか、次に読む。

2.キーワードのカードを作る。

  • 耳による小テスト
  • 目による小テスト
  • ロールプレーで、キーワードの活用ゲームで体得
  • 文字を書くことによるよる小テスト。

3.キーワードを生かして簡単な会話・寸劇ができる。

○社会科歴史でのDAISY活用の工夫

1.音読範囲は見開き2P。

  • 小見出し毎に、小テスト。
  • A問題・・・キーワードの穴埋め問題
  • B問題・・・キーワードを使っての質問に対して、分かりやすく説明する問題(教科書イラストを使っても良し)。

2.口頭でB問題ができたら、手書きで文字とイラストで説明→文字だけで論述する。

3.論述したことに対して、自分の意見が言える。

LD周辺の子

  • ADHD傾向・・・注意が動くハイライトに集中できるので音読で飽きない。
  • 自閉傾向・・・何回も聞くと内容が理解できるので、安心。お守りのようにもなっている。
  • 不登校傾向・・・教科書の内容が確実にわかり、補助プリントで内容理解度を確かめ、学級復帰できる自信が徐々に付いてくる。
  • 外国籍の方・・・日本語、特に漢字の読みや日本の歴史がよくわかる。

報告者:山下 公司(北海道札幌市立北九条小学校 教諭)

A君(小学校2年生)

読みの特徴

【担任より】

  • 友だち関係はすごく良好で、休み時間は友達とふざけあったりボール投げしたりして遊ぶことが多い。
  • 会話が難しく、単語で話す。話を聞いたことにしても、何が自分に起こっているかがよくわからないというタイプ。
  • 読むことも書くことも難しい。
  • 音読ははじめからしない。
  • 集中を持続するのが難しいが、好きなことには集中できる。
  • 注意がそれることが非常に多い。
  • 衝動的に行動する。

【保護者より】

  • 家で「学校でどういうことをやったの?」と聞いても全て「わからない」と答える。
  • 毎日宿題等で音読しなさいと出てくると思うが、音読はしない。読むこと、書くことに強い抵抗感があって、教科書は家では開かない。
  • パソコンが好きで、家では自分でパソコンを開いて起動して遊んでいた。
  • 読むことも難しい、書くことも難しいので、学習場面においては、集中を持続することが難しい。
  • WISCで見ると、IQは88。全体の知的発達水準でいえば平均より下だが、下位検査を見るとバランスが悪い。このことは今後検討の必要がある。

DAISYをどのように使用したか

  • 保護者にDAISYを見せる。⇒実際に使用してもらう。
  • 本人に使用してもらい、活用希望を確認する。
  • 家庭訪問し、セットアップを行う。
  • 復習として活用する。
  • 予習として活用する。
  • 操作の指導
  • 読み取り課題の実施
  • 音読の宿題⇒パソコン音読がんばりひょう
     「今日はここを読むよ」ということを約束しておいてシール等を用意してやっていった。

DAISY使用後の変化

  • 教科書を開くことを嫌がっていたが、DAISYには意欲的に取り組む。⇒音読を行う。
  • 漢字も読めるようになってきた。
  • 自分で読んだ時よりも読み取りができる。
  • パソコンを使うということが興味関心によっては大変有効である。
  • 範読としての効果が高い。⇒聞いて覚える。
  • 読む=内容理解ではない。⇒音読させると、読むことに精いっぱい内容理解までたどりつかない。

B君(小学校4年生)

読みの特徴

注意集中が苦手

DAISY使用後の変化

  • 教科書を開くことを嫌がっていたが、DAISYには意欲的に取り組む。⇒音読を行う。
  • 漢字も読めるようになってきた。
  • 自分で読んだ時よりも読み取りができる。
  • パソコンを使うということが興味関心によっては大変有効である。
  • 範読としての効果が高い。⇒聞いて覚える。
  • 読む=内容理解ではない。⇒音読させると、読むことに精いっぱい内容理解までたどりつかない。

C君(小学校2年生)

  • 自閉傾向である。音読がなかなか出来ない。

DAISY使用後の変化

  • 音読をするようになった。

報告者:牧野 綾(保護者・調布デイジー代表)

娘(小学校1年生)

読みの特徴

  • 音読が上手くいかない。
  • 単語の一文字一文字がどの言葉に使われる文字かを探していきながら読み、最後まで行く頃には最初を忘れている状態だった。
  • 個人面談のときに先生から、娘さんは字が読めません、書けません、数字も後ろから読めません、このままではダメですと言われてショックを受けた。

DAISYをどのように使用したか

  • 最初に始めたのが、教科書をカセットに録音して、それを聞きながら1フレーズで止めて、娘が繰り返して読んでいくという音読だった。そのやり方でも普通の音読よりかなりはかどった。
  • 図書館に相談に行ったところマルチメディアDAISYがあると紹介されて、製作講習会にも行き、自分でも作れるようになった。

DAISY使用後の変化

  • 自分で一から十まで音読することができて、私も横で聞いているだけで話がどんどん進むので、「ママできたよ」、「よくできたね」って褒められるのがとてもうれしかったようだ。

報告者:山中 香奈(LD親の会「たつの子」保護者からの声・兵庫県LD親の会「たつの子」代表)

インタビュー1:小学校1年生の男の子

読みの特徴

  • アスペルガー症候群の診断を受けている。学校では特に支援は受けていない。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYを使用して8ヶ月になり、週に2、3回程度利用している。
  • 1学期の間は学校での授業も短いお話ばかりで、学校の授業でも振付をしながら教科書を読んだりしていたようで、その延長で家でも楽しく本を読むことが出来ていたが、2学期に入り、長い文章になってくると、長い文章に対する苦手意識から、音読の宿題を嫌がるようになった。そこでDAISYで聞いた回数をカウントしていいよということにすると、本人の負担も軽減されたようで、自分でパソコンで何回聞いていい? と自ら回数を決めて、DAISYを聞いた後は音読の宿題にすんなり取り組む事が出来ている。

DAISY使用後の変化

  • 自分で本を読むと、文のまとまりや意味などを考えずに一気に読んでしまうが、DAISYを聞いた後だと、音声の真似をしながら、時に音声の口調を真似てふざけたりしながら、しっかり間を取って読むことが出来ている。
  • 意味の理解の面でもDAISYは助けになってくれている。
  • 苦手な事に対する拒否感が強かったり、不安に対する耐性の弱い息子にとって、心理的な負担の軽減の助けとなっている。

インタビュー2:小学校1年生の男の子

読みの特徴

  • 年中の時、小児心療内科を一度受診した。まだ障害名ははっきりとしたことは分からないが、いわゆる、読み・書き・そろばんの困難さをともなっている、広汎性発達障害だと思われる。
  • 年長の一年間は公立の施設で週1回の感覚統合と2、3人のグループ療育を受けていた。
  • 幼稚園の3年間はまったく字を見ようともせず、本を触ろうともしなかった。
  • 小学校ではいろいろ話し合った結果、普通クラスに在籍している。クラスでの支援は席を一番前にしてもらい、担任が声を掛けやすくしてもらっている。
  • 時々、児童支援の先生が付いてくれている。

DAISYをどのように使用したか

  • 2009年4月の入学時からDAISY教科書を使用し、使用開始から8カ月目に入る。
  • 国語の教科書だけだが、パソコンで聞き流しで数回聞いて、話の内容が分かるからか、音声に続いて読み始めた。
  • 覚えているところは先に読んでみたり、また、追いかけたりしている。
  • 現在も逐次読みだが、何とか本も読め、宿題のプリントも母親のサポートを受けながら、読み進んでいる。

DAISY使用後の変化

  • 国語の時間、担任の先生が物語の主人公の気持ちを問う場面で、自分から手を挙げて発表した。先生から「よくわかったね。」とほめられ、私の方を笑顔で振り返り、満足そうな顔をしてた。
  • 板書も遅いながら書けている。連絡ノートも毎日自分で書いてきている。

インタビュー3:小学校4年生と小学校3年生の男の子

読みの特徴

兄:

  • 1歳1カ月の時にかかった突発性発疹の後遺症で肢体不自由児である。
  • アテトーゼがあるので、身体が揺れる。
  • 行が飛んだり同じところを繰り返し読んだりすることがあった。
  • 肢体不自由児学級で授業を受けている。
  • 主に支援学級では、国語・算数を重点的にやってもらっている。
  • 交流学級で社会や理科を受けている。

弟:

  • 広汎性発達障害でどちらかというと高機能自閉という診断が下りている。
  • 国語の関係が弱く、語学に関してちょっと遅れがある。
  • 本を読んだりするときに同じところ同じ行を読んだり飛ばしたりということがあった。
  • 普通学級で授業を受けている。
  • 週に何時間か支援員の先生が付くという話だが、実際に支援員の先生が授業に付いているかどうかは不明である。

DAISYをどのように使用したか

兄:

  • 大体週に3回位、本読みの宿題がある時にDAISYを聞きながら一緒に読むという形で使っている。

弟:

  • まず新しい単元に入る時に集中的に3、4回聞いて、あとは週に1回、2回、聞きながら読みながらという形で使っている。

DAISY使用後の変化

  • 行を飛ばしたりすることなく、言い回しがおかしくなく、その言葉言葉が文節文節で切れて、意味が分かって、文章のここを読んでいるんだなというのが分かるようになってきた。

インタビュー4:小学校2年生の女の子

読みの特徴

  • 広汎性発達障害と診断された。
  • じっと座っている事が難しい。
  • 集中しているときは1時間でも2時間でも座っていられるが、少しでも興味の外れることになると、じっとしていられない。
  • 先生が本読みをしていてちょっとでも詰まるようなことがあったら逃げ出してしまう。
  • 学校では特別支援学級に所属している。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYを使用し始めて、2年弱位になる。
  • ほぼ毎日、DAISY教科書を開いて、聞かせたり、時々私が横について止めたりして、それを輪唱させたりしている。
  • DAISYの教科書以外にDAISYの物語(はなさかじい等)も聞かせている。

DAISY使用後の変化

  • 関西弁以外の言葉は理解できなかったのだが、DAISYを聞かせるようになって、他の県の人の言語も理解できるようになった。
  • もともと音過敏があり、DVDやCDの話を聞かせると、効果音がいやで耳を塞いでしまったりしていたのだが、DAISYの場合は、それが一切無いので、嫌がらずに見たり聞いたりしている。

インタビュー5:小学校6年生の男の子

読みの特徴

  • アスペルガー傾向、ADHD傾向。一応読むことに困難はないが、字面を追っているだけで、ほとんど内容の理解が出来ていなかった。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYを使用するようになって、一年ほど経った。
  • 最初は興味を示さず使用していなかったが、3カ月程経った頃から、物語の単元から使用するようになった。それからは週に3日程度使用している。

DAISY使用後の変化

  • DAISYはハイライトで視覚的にどこを読んでいるのか分かりやすく、適度なスピード、聞きやすい音声で読んでくれるので、ストレスが軽減されたためか、次第に内容を理解できるようになってきた。
  • 内容を理解出来るようになってくると、学校での授業にも積極的に参加できる場面も増え、むらはあるものの少しずつテストの点数にも反映してきた。一つ出来ることがあると自信を持つことができ、他のことにも意欲的に挑戦するようになってきた。

インタビュー6:小学校6年生の男の子

読みの特徴

  • 高機能自閉症。社会的なやり取りが分かりにくいということと、国語に関して言えば、読解力に課題があり、特に物語などの主人公の気持ちなどを読み取ることが苦手である。読みには困難性はない。
  • 学校での支援は、先生に障害特性を伝えている。席を前の方にしてもらったり、声をかけてもらう時には出来るだけ簡潔に分かりやすく説明してもらうように心がけている。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYを使用してから1年3カ月位だと思う。
  • 夏休み等、お休みの時には1日おき位で使っている。普段はなかなかきっちりと時間を取れず、週1回位。

DAISY使用後の変化

  • 本を読みながら理解するという2つの作業をするのに困難性があったが、DAISYの場合、画面で見ながら本を読んでいるので、読みではなく、内容の理解の方に集中することができる。
  • 読解に関しては、DAISYを使いながらの方が本人が良く分かっているように思う。本人もこの方がわかりやすいと言っている。

インタビュー7:小学校2年生の男の子

読みの特徴

  • 診断名は広汎性発達障害。
  • 不注意衝動性が強く、文字の細部や形を捉えにくく、特に書くことに困難がある。
  • 読み飛ばし、勝手読みが多い。自分の言動で相手がどのように感じるかの推測が難しく、思いつくままの言動をしてしまうことで、対人関係がなかなかうまく行かない。見通しの付かないことへの抵抗感、なかなか取り組まない、人の輪に入って行かない、というようなことがある。
  • 1対1でのサポートで教員免許を持った先生が週に4日、スクールサポーターの学生が週に1日、担任と相談しながら、学習面と生活面での支援をしている。算数を一日一回個別指導として1対1で別室で行っている。その中で一部国語の対応もしてもらっている。
  • 本人のレベルに合わせたプリント、宿題をサポートの先生が準備している。
  • 長期の休みの際にも彼専門の彼のレベルに合わせた宿題を出してもらっている。
  • 前日に翌日の授業内容を担任から連絡をもらい、本人に登校前に説明し、だいたいの流れをつかんで、学校へ行くことを続けている。

DAISYをどのように使用したか

  • 2008年の7月頃から使い始めて、1年6カ月。
  • 頻度としては、週4回~5回、音読の宿題と予習を主に行っている。
  • まず音を聞く、それからシャドウィングを行う、音を文節等の区切りごとに止めて本人が読み、その後でDAISYの音を聞く、ということで確認をしている。
  • 余裕のある時は段落ごとに何を書いているか内容確認を親子で行う。

DAISY使用後の変化

  • セリフの抑揚がとても上手になったことで、音読の発表会などで、みんなからほめられたりして、自信が大きくなっている。
  • 文末の勝手読みはまだまだ続いているが、読み飛ばしは少なくなった。特にセリフが上手で、これはとても本人としては喜ばしいことだと思う。

インタビュー8:小学校3年生の男の子

読みの特徴

  • ADHDと軽度知的障害。聴覚が過敏で気がそれやすく、集中がしにくい。飛ばし読みや思い込み読みが多い。漢字を覚えていてもその場に応じての読み方がすぐに出てこなかったり、言葉の意味や言い回しが、だんだん難しくなってきて、読んでいても意味が分かりにくくなってきた。
  • 通常の学級で、担任の先生、友達から個別に噛み砕いた説明を再度してもらったりして配慮を受けている。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYを使い始めて約1年3カ月程。
  • 最近は他の宿題やテストのやり直しなどでじっくりする時間がなくなってしまい、週に1、2回位。

DAISY使用後の変化

  • 音読の宿題への負担感が軽減された。
  • 楽しんで読んでいる。
  • 行の最後まで読む事を気を付けているようだ。

DAISY教科書を活用した読みの困難な児童・生徒に向けた支援報告書(2010年12月23日)

報告者:山下 公司(北海道札幌市立北九条小学校 発達障害通級教室教諭)

Aくん【4年生の男児】(通級指導教室で週1回1時間)

読みの特徴

  • 読むと文節で区切らないことがある。
  • たどたどしい読み方になったり部分的に逐次読みになる。
  • 教科書を読んでいくときは、逐次読み以外に勝手読みもあった。
  • 文末のところを勝手に読んだりすることが割と多い。
  • 一斉音読の時は周りのスピードについていけない。
  • 衝動性があり、周囲と合わせることも苦手。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYの一時停止機能を使って、文章のまとまりを意識できるように指導する。
  • 紙の教科書でも文章のまとまりを意識できるように指導する。
  • 予習に活用する。
  • 読みのスピードを変える機能を使って、本人に合わせながら使用する。
  • 勝手読みにならないように同じように読むと意識できるように指導する。
  • 4年生の2学期に12回使用

DAISY使用後の変化

  • 自分からDAISY読みに意欲的に取り組む。「DAISYやっているから○○が読めたんだよ」と言ったり、予習で読むところを決めてきたり、自信が出てきて意欲もみられるようになってきた。
  • 予習のDAISY読み後の教科書読みで文章単位を意識するようになった。
  • 完全にはなくならないものの、「今日は気をつけて読むんだ」と言いながら、自ら勝手読みに気をつけるようになった。

Bさん【3年生の女児】

読みの特徴

  • 音読はできるが、読んでも意味がわからない。
  • テストは適当に答えを当てはめて回答している。

DAISYをどのように使用したか

  • 一時停止機能を活用して、語彙の確認していったり、段落ごとに内容理解を確認したりする。
  • 予習、復習に活用した。(特に復習に活用した。)
  • 本人の希望に合わせて、下の学年の教科書を活用したり、テストのやり直しをDAISYを使って理解できるまで丁寧に時間をかけて行なったりした。
  • 2学期から5回使用

DAISY使用後の変化

  • 自分からDAISY読みに意欲的に取り組む。
  • 今まで習ったものを復習しようとする。
  • 「次は~よむからね!」と約束して帰る。

Cくん、Dくん、Eくん【3年生の男児】

読みの特徴

  • 板書するのが苦手
  • 文章をそのまま写すことが難しい。
  • 周りのペースについていくことができない。
  • 黒板のどこに注目していいか分からない。
  • 細部への注意が苦手
  • 板書スピードが遅い。
  • 書字への抵抗が大きく、取り組みに消極的

DAISYをどのように使用したか

  • ハイライトされた部分を板書するように指導し、注目する機能を活用した。
  • そのまま写すこととし、句読点等の細部への注意を促した。
  • DAISY版教科書は昨年度から1年間から活用していた。
  • 読むことは抵抗なく使えたので、書くことにも活用できるのではと考えた。
  • グループで活用し、周りの子の板書のスピードを意識し、互いに見守りあえるグループづくりを目指している。

報告者:村瀬 直樹(奈良県立明日香養護学校 中学部教諭)

1年生女子Aさん、1年生男子Bくん、2年生女子Cさん(2009年度3学期:DAISYと出会う。)

読みの特徴

  • 文字がほとんど読めない。(Aさん、Bくん)
  • 文字は読めたが、文章になると正確に読んだり、内容を理解したりすることがとても難しい。(Cさん)
  • それまでの文章を扱う学習は、絵本を読んでもらうような受身的な学習か、どれくらい理解したかを確かめるような学習がほとんどだった。生徒自身が文章を読みながら学習することができないので、録音した教員の声を流しながら、スキャナでとった絵本をプロジェクターで映して、「なんちゃってDAISY」のようなもので学習していたこともあった。

DAISYをどのように使用したか

  • 感情など行間を読むことが難しいので、物語文よりも事実が簡潔に書かれている説明文のほうが学習しやすいと考え、小学校1年国語の教科書にある説明文「どうぶつのはな」をDAISY化し、教材として使用することとした。
  • DAISY化する際、ハイライトと音声を全て分かち書きで区切ってもらった。(製作は奈良DAISYの会)
  • 速度は、ゆっくりすぎるくらいで生徒たちには丁度よかった。
  • まず、分かち書きにされた言葉一つ一つを丁寧に読ませることに専念した。そうすることにより、自分が読んでいる声と表示されている言葉がマッチングするので、読んでいるという実感をもつことができた。
  • 次に音声を消して、読む練習をした。再生と一時停止の機能を使うと、生徒が読む速度にあわせて練習することができた。
  • 生徒たちは、肢体不自由があり、あまり体力がないので、読む声が次第に小さくなる。途中、一時停止して休憩をとりながら、生徒の体力に合わせて読むこともできた。 ・中学部学習発表会と全校集会で、「どうぶつのはな」の音読の発表もした。皆に伝わるように、大きな声でゆっくり読むことを意識して発表することができた。見ている人にもどこを読んでいるかわかるように、DAISYの画面をプロジェクターで映した。発表もプロジェクターもよかったと好評だった。

DAISY使用後の変化

  • DAISYを初めて生徒たちに見せたとき、流れてくる音声にあわせて自然に声を出して読み始めた。しばらくすると、Cさんが、「私(書いてあることが)わかる」と言って笑顔になった。Aさん、Bくんも笑顔で読んでいた。
  • AさんとBくんは、ほとんどひらがなが読めなかったが、憧れていたひらがなで書かれた文章を読んでいるという喜びにあふれた笑顔で学習していた。Cさんは飛ばし読みや勝手読みが減り、落ち着いて読めるようになってきた。
  • 読む練習を積み重ねると、自然に文章を覚えていた。昼休みに「読みたい」と言ってくれた生徒もいた。
  • 生徒たちが、最も楽しみながら取り組んでいたのが「群読」だった。例えば「どうぶつの」のハイライトと音声が出たら、「どうぶつの」と、「はな」と出たら「はな」と皆で声を合わせて読んだ。笑顔で声を合わせて楽しそうに読んでいる様子は、まるで合唱のようだった。
  • 教材は説明文なので、答えは全て文章の中にある。問われたことについてわからないときは、読み返して答えを探すことができる。Cさんは、1ページ分読み返して答えを探していた。答えに当たる部分にくると、声の調子が上がり、笑顔になっていた。教員側にも、Cさんが答えを見つけた瞬間がよくわかった。紙の本であれば、読むことで精一杯になり、内容を考えることはできないが、DAISYであれば、余裕ができ、内容を考えながら読むことができた。
  • 音読や群読、内容理解などの指導を繰り返して何度も学習することにより、習熟が深まりまった。繰り返すたびに、新たな「わかる」や「できる」機会がやってくるので、生徒たちにとって、とても充実した学習になった。
  • Aさん、Bくんは、実際に文章を全て読むことはできないが、覚えた文章と知っているいくつかの文字をヒントにたくさんの人の前で発表できたことは、とても大きな自信になった。
  • Aさんは、今まで模写ができなかった。しかし、正確ではなかったが、DAISY学習後、初めて模写することができた。DAISYで学習したことをきっかけに、視知覚の力が向上したのかもしれない。
  • 2009年度の3学期の学習を終えて、DAISYを使った学習に関わった教員の感想として、準備や操作が容易であったこと、評価がしやすかったことが挙げられた。

報告者:泉 恵子(東京都狛江市立緑野小学校 教諭)

ケース1:2年生(教育相談所の言語聴覚士の先生とクラス担任による指導事例)

読みの特徴

  • 担任から校内委員会へ国語の教科書がはっきり、しっかり読むことができずに指導上配慮が必要ということで、言語聴覚士の先生と月1回の言語訓練を始めた。
  • その指導の中でDAISY教科書を利用して音読練習があった。

DAISYをどのように使用したか

  • 月1回では授業に間に合わず、家庭学習へのシフトを考えたが、自宅にパソコンがないため学校のパソコン室にて学級担任と音読練習を始めた。
  • 放課後30分程度の指導時間も行事や会議等の都合でとれないこともあった。「読むのが苦手」だからなんとかしたいという本人と保護者の意識が強まり、来学期より通級指導学級への就学につながった。

ケース2:3年生(通級担任による指導事例)

読みの特徴

  • 不注意による読み飛ばし、語尾の勝手読みが多い。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYのほかに個別指導で視知覚のトレーニングも併せて行なっている。
  • 20101月に日本障害者リハビリテーション協会で行われた講演会で栃木県鹿沼市立みなみ小学校の荒川一志先生が報告されたものを参考にした。
  • 活用の仕方としては(1)音声ガイダンスを聞きながら指でなぞる。(2)音声ガイダンスを聞いた後、指でなぞりながら読む。(3)音声ガイダンスを聞いた後、読む。
  • 荒川先生の報告では(4)に音声ガイダンスを聞かずに読むことになっていましたが、このお子さんの場合、自分の勝手なペースで読み、通常学級の中で、みんなで声を出して読もうというときにまったく読まずにいたり、勝手に一人だけ早いペースで読んだりということがあったので、声を合わせて読むということを指導の狙いにして、今回は(4)として、音声ガイダンスを聞きながら声を合わせて読むことを行なった。

DAISY使用後の変化

  • 音声ガイダンスの一定のペースや間を意識して、勝手読みが少なくなった。
  • 視知覚に課題がある生徒だが、ハイライトがあるので、文字を追いやすいと本人も言っていた。

ケース3(通級担任による指導事例)

読みの特徴

  • 難聴のために教室ではFM補聴器を使っている。初めて耳にする言葉は聞き誤りが多く、誤った言葉で覚えてしまうことがあった。

DAISYをどのように使用したか

  • (1)予習単位を決める。(2)音声ガイダンスを流しながら聞く。(3)述語・単語の確認を必要に応じて再生を繰り返して行なった。

DAISY使用後の変化

  • 成果として聞き取りの精度が上がった。
  • 発達障害があるお子さんでは聞きやすい声と聞きにくい声があるので、DAISYの声が選べたらいいなという話をしているところ。

ケース4:6年生(通級担任による指導事例)

読みの特徴

  • 漢字の読み書きに困難がある。

DAISYをどのように使用したか

  • 自主学習ができるようにするために、国語と社会科の両方を使用した。ケース3と同様に(1)予習単位を決める。(2)音声ガイダンスを流しながら聞く。(3)熟語・単語の確認を必要に応じて再生をしながら聞くという方法で活用した。

DAISY使用後の変化

  • 国語は、文章を何度も繰り返し耳にすることで内容が理解できるようになった。
  • 社会科では学習意欲が出てきた。社会科の歴史、人物調べなどを頑張りたいというようなことを目標に今、頑張っている。
  • 通常学級で使っている教科書には、6年生では3年生、4年生で習った漢字にはルビ等が振ってありません。自分の教科書は教室では読めないこともある。担任の先生と相談してルビを振ることがあるが、そのルビがDAISY教科書にあればいいなという話を先生たちとしている。

報告者:大山 英子(島根県浜田市立松原小学校 通級指導教室)

全校で18名のA小学校のBくん

読みの特徴

  • 国語を苦手としている。読みが苦手なことが他の教科にも影響している。

DAISYをどのように使用したか

  • 5~6年生5人が机を並べている。
  • ホワイトボードが3つ、黒板以外にある。
  • 前と後ろ、場所を分けて勉強する。
  • 自学も含めて分からないことを教え合う黒板、学級の中に子どもが使っていいパソコンがある。
  • 学級の中に電子黒板を持ち込んでいる。
  • Bくんは国語を苦手としていてDAISY教科書を使っている。

DAISY使用後の変化

  • 彼は今まで苦手としていた国語以外にも、読めないからわからないというところから脱却しながら、僕もできるかなということで教科に取り組んでいるところ。
  • みんなで彼の誕生日を祝っているときに、抱負として、「僕は字が読めません。でもたくさん読んでみたい本があります。知りたいことがあります。だからパソコンを使って読む練習をしています。そこを頑張ってこれからも工夫して、うまく読めるようになりたいと思います。」と全員の前で発表した。

報告者:LD、ADHD児の保護者

中学3年生の男子

読みの特徴

  • 学校では普通学級のみ在籍している。
  • 漢字は小学校3年生レベル。カタカナは長くなると書けなかったり読めなかったり。読めても、違う言葉を書いてしまうということがある。
  • ローマ字と英語に関してはまったく書けないし読めない。
  • 表を見ながら、パソコンなども使用している。
  • 聴覚系の認知困難もあり、学校の教室のガヤガヤした中で話を聞いたり、たくさんの声から一番重要なものを聞き分ける力に弱さがあって、音や声がみんな同じように聞こえてしまって、教室の中で先生の話に集中できなかったり、集団の中で指示が聞き取れなかったりする。
  • 短期記憶にも弱さがある。
  • 目に入る多くの情報の中から一番必要なものに注目する力が弱いため、教科書の文字を追えなかったり、行を飛ばし読みしたりする。
  • 漢字の構成をつかむのに苦手さがあって、漢字を書くと線が足りなかったり多かったりする。細かい、はねたり伸ばしたりする場所に集中がいかなかったりして、正確に書くことができない。
  • 空間認知の困難もある。
  • 社会的自覚の問題では対人関係に困難を見せることが多くある。

DAISYをどのように使用したか

  • 学校で認めてもらっている教科書は紙の教科書のみ。教科書をただの荷物にしか思っていない。忘れ物が多いので、学校に教科書を隠しておいている。
  • 家での教科書はiPhone。いつでもどこでも見たいときに見ることができ、調べたいときに調べ、見ることができ、聞きたいときに聞ける。自分の時間で自分の力で勉強ができるようになった。
  • テスト1週間前に入ると、自分用のパソコンとノートとiPhoneを使って勉強する。
  • 教科書はマルチメディアDAISY化をしてもらっている。
  • 学校でのプリント類は私が打ち込んで、読み上げソフトで読んでみたり、Wordで作成できるDAISYでプリント類を使用している。
  • テストで社会と理科は本人なりに頑張っていたので、理科の教科書を提供してほしいと息子が言い、当時は国語と社会のみの提供だったので、奈良デイジーの会に理科の教科書のDAISYを作っていただけないかということを、相談した。
  • 奈良デイジーの会の方が製作してくださることになり、息子がどうしたら読みやすいのか、どういうふうにしたら勉強しやすいか等、いろいろと聞いてくれた。
  • 息子がカタカナが苦手なことと話したら、カタカナ表をDAISYで作ってくれた。それを見て、自分のためにこんなに一生懸命にしてくれる人がいることに驚き、感謝していた。

DAISY使用後の変化

  • 今まで以上に努力し、自分のできることを一生懸命するようになった。そして自分の居場所も見つけることができた。その居場所では、ありのままの息子を受け入れてくれた。自分を認めてくれ、理解し応援してくれる人がたくさん増えた。環境が変わればこんなに違うのかと思うほど、息子は成長した。
  • 自分のやりたいことを見つけて、目標に向かって頑張るようになった。そして将来についても考えているようで、勉強は苦手だけど勉強したいと言っている。たくさんの方が、息子を支えてくれたおかげだと感謝している。
  • 自分なりに頑張れているのは、僕に教科書を作ってくれる人がいるからと、教科書と一緒に、製作していただいているたくさんの方の優しさやいろんな思いを受け取っているからだと思う。
  • 息子は自分のやりたいことで、スポーツ推薦で高校が決まった。
  • 夏休みの宿題で、税についての作文があり、1ヶ月かけて仕上げた。マルチメディアDAISYでたくさんの本を読むようになり、そこから引用したり、かっこいい言葉を使って1,200字を書き上げた。その作文で初めて学習面で賞をいただいた。学校では褒められることがなかったので、とてもうれしそうだった。そしてこの賞は息子にとってすごく自信につながったようだ。
  • 高校になったらDAISYの教科書がなくなってしまうことが不安。

山中 香奈(兵庫県LD 親の会「たつの子」代表)

中学1年生 長男 (通常の学級在籍)

読みの特徴

  • 読み・書き・計算に特に困難があり、視覚認知、短期記憶も弱いことから学習にかなりの困難が生じている。
  • 小学校3・4年生で習う簡単な漢字は読めるが、読むために使う労力はかなり大きく、疲労も感じている。
  • かろうじて読めた文章も読むことに精一杯で、理解や記憶ができないことが一番の困難である。
  • 長男は 読む=音声化する だけで精一杯で、時には、自分が何を読んでいるのか分かっていないこともあるという。

DAISYをどのように使用したか

  • 小学校4年生の12月にマルチメディアDAISYに出会い、それ以降は家庭学習で常に利用している。
  • うちの場合は、全くの家庭学習のみ。うちの子はよく勉強する。毎日やる。記憶は弱く、字も読めないけれど、それが音読で抑揚がつくぐらいまでやる。読書は「面白い」と言う。「読みたい」とも。勉強は嫌いじゃない。勉強は好き。でもうまくいかない。

DAISY使用後の変化

  • 先生と上手く意思疎通ができたりするとニコニコしている。
  • 国語の授業は嫌いだと言っていたがDAISYでの学習で理解ができるようになり、国語の授業に参加することができ、(先生の質問に答えられる、発表ができるようになる)「嫌い」から「好き」に変化していった。
  • 中間期末テストでは毎回大変な状況であるが自分で勉強する姿勢はできている。
  • 国語では古文も勉強するようになってますます必需品となっている。(竹取物語の暗唱の課題ではかなり助けられた)
  • 英語ではどこを読んでいるかが分かり、大活躍している。
  • 「読む」ことを助けてもらえることが分かると読みたい本が出てきた。法律改正された現在、点字図書館で借りたり、サピエ図書館からダウンロードした物語を読んでいる。(ハリーポッター各巻・赤毛のアンなど)
  • 夏休み、学校では読書感想文の課題が必ずある。課題図書のDAISY化は必須である。
  • 興味のある「ちらし」の内容が中々読めないと嘆いていた。

小学校4年 次男

読みの特徴

  • ADHD、知的に高いため学校では全く学習困難児と認識されていないが読み書き困難があり未だにひらがなカタカナの間違いがある。

DAISYをどのように使用したか

  • 今までは、一回聞いたら覚えることができたので、DAISY教科書があってもさほどは使っていなかった。
  • ところが4年生になって、最近またよく使うようになった。なかなか覚えられる量ではなくなってきている。
  • 中学、高校、大学と進学したらどうなるだろう。DAISY教科書が早くたくさん作られるようになって欲しい。

シンポジウム「届けたい、読める教科書、DAISY教科書を!」(2012年2月5日)

報告者:山中 香奈(兵庫県LD親の会「たつの子」副代表)

長男(中学2年生、通常学級在籍)

読みの特徴

  • 学習障害、特に読み書き・計算がとても困難。重度のLD。
  • 週に2時間、2回ほど、スクールサポーターの学生がサポートに入っている。
  • 小学校1年生に入学して、ひらがなを習ったり簡単な漢字を習っている頃は、鏡文字、字を反対に書いたり回転していたりという字を書いて、自分の名前ですらきれいに書くことができなかった。
  • 小学校3年生ぐらいになると、1年生の漢字は既に覚えているだろうと思いきや、全然読み書きができなかった。3年の夏休みの頃には1年生の「一、二、三」の漢字から練習をした。
  • 見る力が弱く、どこを読んでいるのかわからなくなってしまう。例えば先生に読んでもらっていても親に読んでもらっていても、今自分がどの行を見ていたのかが全くわからなくなってしまうという特性がある。
  • 見た文字を音声と結びつける力がとても弱いので、ひらがなの「あ」を見て「あ」という音が出てこなかったら、その後わからなくなってしまう。
  • 読むこと自体に時間がかかってしまって、読めたとしても、中身がよくわからない。

DAISYをどのように使用したか

  • 4年生のとき(2007年の冬)に、西宮のYMCAのサポート教室の療育の先生の紹介でDAISYに出合った。最初にたまたまサンプルでいただいた「ごんぎつね」が、小学校で今から習う場所だった。とても興味を持って毎日のようにそれを習い、自分で再生を繰り返したことで、「ごんぎつね」の授業が始まったときに、今までは国語が全然中身がわからなかったのに、授業についていけるまでになった。先生の質問や問いかけにも的を射た答えができるようになったということで、授業にとても前向きになり、実際に自尊心もだんだん回復してきた。
  • 現在、DAISYを丸4年使っている。当時は国語だけだったが、今は英語、社会、理科も使っている。
  • 基本的には予習として使い、テストになると復習用に使う。
  • 夏休みは読書感想文用の図書を読むのに、日本ライトハウス情報文化センターが製作しているマルチメディアDAISY図書を利用した。自分で読むと読書感想文もなかなか書けないが、田中先生から指導を受けて、DAISYで読んでもらって理解をして、自分の感想文にまでまとめることができた。中学校1年生と2年生の2回、両方ともマルチメディアDAISYで読書感想文を書くことができた。

次男(小学5年生、通常学級在籍)

読みの特徴

  • ADHDで、特に読みのみに困難がある。
  • 初見のものは拾い読みになるが、一度聞くとすらすらと読める。
  • 読みに時間がかかるため、長文読解が出てくると、テストの前半はできているが後半は白紙状態になる。

DAISYをどのように使用したか

  • 小学校3年から2年ほど国語のDAISY教科書を利用している。
  • 記憶力がいいので、毎回、毎日使うというタイプではなくて、新しい単元に入ったり、長文の物語文を学校で習うときになると引っ張りだしてきて、音読の宿題をする。
  • サピエ図書館を利用している。音声DAISYをインターネットでダウンロードして、小説や物語を楽しんでいる。

2人のコメント:DAISYを利用してよかったこと

  • 内容が理解できる。「自分で読むとわからないんだけど、DAISYに読んでもらったらどんなことを言っているのかよくわかる」。
  • 自分で学習が進められる。母に読んでもらわなくても、予習・復習ができる。
  • 自分の好きなところから読んでくれるのもいい。
  • DAISYだったら読めない漢字も読んでくれるので、たとえルビがなくても大丈夫。
  • 英語は特に発音がわからないので、読んでくれてとてもうれしい
  • 覚えやすい。(目から入ってくるよりも耳から入ってくる方が覚えるのが得意なので。)

DAISY教科書、DAISY図書は彼たちの学習には必要。単に読むことだけでなくて、学習への意欲や向上心に直接、結びついている。

報告者:赤瀬 瞳(大阪府富田林市立富田林小学校 発達障がい通級指導教室)

児童A(小学校5年生の男児、3年生からDAISYを使用)

読みの特徴

  • 教科書の本読みの宿題がなかなかできない。
  • 逐次読みがたどたどしい。とても時間がかかるので疲れる。
  • 文字の形が悪くて漢字がなかなか正確に書きにくい。

DAISYをどのように使用したか

  • 初見で読む場合は音声ありで聞いたり、音声といっしょに読んだりする。
  • その後は消音にして読む練習をする。
  • DAISYのパソコンの画面と教科書を見比べながら読む。
  • ハイライトになるスピードが自分の読みのスピードと合わないので、文字数の多いハイライトを止めて読み、読み終わったら再生にして次を読み進む。
  • 矢印キーを使ってPCを自分で操作した。
  • プロジェクターを利用して、黒板にかけたスクリーンの文字を読む。
  • クラスでやる前に通級でDAISYで読み込んでいって、クラスでは、紙媒体の教科書で読んでいくようにしている。(みんなと一緒の場所では紙媒体の教科書で読んでいくようにしたいというのが本人の望みだった。)

本人のコメント(4年生終了時):マルチメディアDAISY教科書を使ってみてどうか

  • 文字が読みやすくなった。(はい)
  • 文字を読む時、疲れにくくなった。(いいえ)
  • 正しく文字や文章を読めるようになった。(はい)
  • 集中して文字を読めるようになった。(はい)
  • 何度も同じところを再生できるので、確認(復習)しやすくなった。(はい)
  • 自分から、本や教科書を読もうと思う機会が増えた。(はい)
  • 前より、文章を読みたいと思うようになった。(はい)
  • これからも、マルチメディアDAISY教科書を使いたい。(はい)

DAISY使用後の変化

  • 使い始めてすぐの3年生の頃は、通級ではDAISYを使っていても、家では本読みの宿題に取り組めなかったが、4年生に上がるころから家でも本読みに取り組めるようになった。
  • DAISYとビジョントレーニングにより、読みへの抵抗感が減った。
  • 国語の長い作品も嫌がらなくなってきた。
  • 読む力が育ち、紙媒体のものも読めるようになってきた。
  • 以前は勘で答えていたが、プリントの問いをきちんと読むようになった。
  • 問題文を読むようになったらテストの点数も良くなってきた。
  • 自己肯定感が高まってきて精神的に落ちついてきた。以前は、誰かに何かを言われたらすぐに切れたり、カーッとなったりしていたが、聞き流したり、おおらかに考えたりできるようになってきた。

報告者:細川 恵未(奈良県香芝市立関屋小学校 教諭)

A君(小学校6年生の男児、4年生からDAISYを使用)

読みの特徴

  • 読み書きに大きな困難があり、小学校3年生時点でひらがなの読みができていなかった。

DAISYをどのように使用したか

  • DAISYは3年生の段階ですぐに出合っていた。「三年とうげ」を通級の時間に見て、好印象を持っていた。(通級の指導で使うには読みのレベルが追いついていなかったので、まだ使っていなかった。)
  • 3年生が終わる頃、学習意欲が上がってきて、4年生になったらみんなと一緒に勉強をして同じテストを受けたいという本人の発言を契機にDAISYの導入を決めた。
  • 母親に読んでもらわなくては、宿題ができないという状態を脱したいという本人の意思があった。
  • 教室でDAISYを使おうと考えていたが、なぜA君だけパソコン使ってるのとか、ずるいなあという思いを周りの子どもが持たないように、A君に対する支援をみんなにも自然と知ってもらう。またDAISYは特別なものではなくて、使いたい人が誰でも使えるものだということを、周りの子どもたちにも知らせていく形をとった。
  • 導入として、学校全体で取り組んでいる朝の読書の時間にDAISYを使って大きな紙芝居のように、みんなでお話を読んだ。電子黒板を使ったり、教室で大きなスクリーンを持ち出して映したりした。他の子どもたちにも印象が良く、楽しみにしているようだった。
  • 誰でもいつでも使っていいよということを知らせていきたかったので、教室の中にDAISYコーナーを作った。パソコンを置いてCDを置いて、休み時間にいつでも使っていいよということで子どもたちにお知らせしておいた。パソコンの使い方は最初は教えたが、1人に教えておけば、みんなどんどん覚えて休み時間に使ってくれた。
  • テストもDAISY化した。A君は今まですべて問題文を読んでもらってから解いていたが、DAISYでテストも自分で取り組むこともできるようになった。

DAISY使用後の変化

  • 2年生の頃、「俺アホやもん、勉強なんかどうせできひんし、死にたい」とよく口にしていたそうだ。その彼がこの3年間の中で自尊感情を高め、最近では「俺はアホやないで。勉強の仕方が違うだけやんな、先生」ということを言うようになった。
  • 4年生になってから教室でDAISYを使い始めて、4年生の最後、「ごんぎつね」を勉強したときにクラスで音読大会をした。A君はこのとき、DAISYを使って家で音読の練習をして、本番では紙の教科書だけを持って最後の場面をすべて読み切ることができた。今まで音読をクラスでしていても、グループで発表したり、A君は1行だけとか3行だけだったりしたが、今回は長い文章を1人の力で読み切った。これも彼の自信につながり、また周りの子どもたちからも、「A君すごいな!」「やったな!」という声が上がった。
  • 授業に対する意欲が上がり、DAISYを使っていない算数にも意欲的になった。
  • テストに一人で取り組める。
  • 読みのレベルも上がっていると思われる。
  • 「読もう」とする姿勢が見られるようになった。
  • 5年生の「大造じいさんとガン」では、紙の教科書に全ルビをふり、紙の教科書だけで朗読の練習をして、本番の朗読大会も見事に読み切ることができた。
  • Aくん以外の他の読みに課題を持つ子どもたちに効果が見られた。
  • DAISYを新しく使い始める児童も出てきた。
  • 授業で1人にかかりっきりになることが減り、教員にとっても負担が減ることになった。