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ディスレクシアへのDAISY の有効性-発表2

田中和美
公立中学校特別支援教育コーディネーター

 

 田中でございます。公立中学校特別支援コーディネーターとだけ書いています。具体的な話もしますので、情報だけが一人歩きすることを懸念しました。そういうことで、ご了解いただきたいと思います。 コーディネーターとして発表するような取り組みが出来ているわけではないですが、ただ、教科書DAISYと縁があって、それを使わせていただいた事例ということで、お聞きください。 教科書のDAISY化ですが、教科書DAISYに私が出会ったのは、2005年、市の支援事業が縁でした。その時、校内の特別支援コーディネーターをしていました。今後の特別支援教育をどう進めるか悩んでいたとき、その事業に、特別支援のアドバイザーとして、LDセンター、そして現在は、大阪市の特別支援のスーパーバイザーをしていらっしゃる、西岡有香先生が来てくださるということで、手を挙げました。19校のうちの2校に来ていただけるということでした。 その西岡先生が、民間の奈良DAISY、今はNPOになっていますが、そのDAISYの会につないで下さって、教科書が本校の生徒の手に入りました。 支援対象者ですが、2006年度から、1名が、中2、中3の教科書を作っていただきました。2007年度も3人、今年度も3人の生徒がお世話になって、教科書のDAISYを使用しています。 まず、お話しするのは、卒業しました中2と中3と2年間DAISYを使った生徒のことです。

教科書のDAISY化

支援対象者

*報告

DAISYとの出会い、本人の使った有効性、生活の変化の報告 また、ディスレクシア以外、広汎性発達障害ADHD、聴覚障害、知的な障害の生徒にも有効だったという報告。(ここでは、個人情報の保護上、詳細を控えます。)

通常の学級の生徒の事例

*中学生でのデイジー

西岡先生から、なぜ中学校のDAISYか、教えていただきました。 「周囲やお母さんにはいちいち聞けない、でも、自力で読みたい。聞いたら、意味理解はできるという子どもに向いている。目標は、一人で読む力を付ける、読むことに慣れること。意味のまとまりで読むことを身につけると、学習の力がつき、DAISYなしでもがんばれるようになる。」 「中学生に学習機会の保障ということで、DAISY教科書を読むことによって、情報を得る。つまりDAISYをトップダウンで使う。古典、社会、理科の教科書にDAISY図書がいいのではないか」ということでした。お話した生徒もデイジーの効果が出た例だと思います。

*アンケートから

奈良デイジーの会によるアンケートがあります。 その中で、子どもたちが継続して使いたいと言っています。これが、子供にとって有効だということを証明していると思います。 保護者からもいろんな意見を寄せられています。 生徒の様子とアンケートの結果から、学習面のみならず、生活面でも、自信や意欲がついた。読みに対する意欲や、自尊感情や自己評価が高まるとも言えると思います。

アンケートから使った感想

生徒の様子とアンケート結果から

*DAISY図書の広がり

DAISY図書の広がりですが、今、私のところにも問い合わせが来ています。 特別支援教育がスタートし、2年目になりました。コーディネーターがどういうことをやったらよいか、各学校で悩んでいます。その中で、DAISYはどうやったら使えるのか、DAISY図書をうちの生徒に使えるかもしれないが、体験できるか。通級教室からも連絡がきました。1回使ってみたいのですが、と。 それから、卒業した学校から、次の高校との連携をとります。その時、そういうものを使っていたのなら、うちでも作ってみようかという問い合わせもあります。 目下、奈良デイジーの会に連絡をして許可を得ながら、いろんな人に使ってもらっています。

DAISY図書の広がり

*コ-ディネーターとして

今日、もう一つ、特別支援コーディネーターからということで、少しだけお話します。 特別支援というのが、去年から始まっています。もちろん通常学級の生徒にも支援していこうということです。でも、そう簡単ではありません。 今、私は、週6時間特別支援のために動く時間をもらっています。 ところが、1学期には国語の教師が病休にはいり、その6時間は全部、国語の教師として全クラス受け持つことになりました。現場ではハプニングが起こります。 今、2学期から私はいろんな教室に入って、生徒たちの様子をみていますが、読み書きが苦手な子、困難を持つ子はたくさんいます。 その子どもたちの様子を見ると、自信なさそうであったり、自分の評価が低かったりします。すごく気になります。

通常の学級の生徒の事例2

でも、支援がすぐにはスタートできません。 不登校気味の生徒もいます。今、少し不登校気味で、読み書きに困難を持った生徒がいます。 不登校の場所から個別の指導をしましょうかという話をしました。その生徒は、憮然とした表情で、「どうして僕はこんなところに来なければいけないのですか? 個人の指導なんか結構です」ということで、彼は不登校の支援の教室を去っていったそうです。 やはり生徒も、自分が苦手なことは分かっていても、特別に何かしたり、わざわざ勉強できないことをもう一回言われて目立ちたくない、という心情があります。それは、自分の自尊感情とも関連していると思います。 そういう本人や保護者の気持ちに、寄り添った支援ということでも、DAISYはいいのではないかと思います。 通級で、個別教室で、自宅で、あなたが使いたかったら使いたいところで使えるよ、それから、特別ではなくあなたなりのやり方で、ということでもあります。 先ほどから環境を考える、とか、合理的配慮ということもありましたが、そういう意味で使えるのです。不登校で休んだときも、学力の保障としても使えます。 あなたへの1枚の思い、と書いてありましたが、個のニーズに応じて作っています。その生徒のスパン、意味のとりやすい読みの速度で作っています。製作者から、コーディネ ーター、担任、教科担任、保護者、本人と手渡る時、その一枚の願いも届く気がします。

本人保護者の気持ちに寄り添った支援

*自己理解と自尊感情についてです

子どもにはこういう気持ち(パワーポイント)でDAISYを使ってもらえたらいいなと思います。こういう話をしながら、子どもたちに自分に合った支援を考えて依頼できるようになってほしい。 そして、お互いの違いを認め合えるような社会、学級づくりができればいいなと考えています。

自己理解と自尊感情

*DAISYを見る機会・どうやって届けるか

1、通常の学級で、例えばDAISYをお使いになってみたらどうでしょう。 実物を見せて、「これは使えそう、欲しい!」と思う人は申し出てください。という。気になる生徒にデイジー学習にチャレンジしようと声をかける。 2、本校では学びングといって、テスト前に大学生や地域のボランティアの方達が、勉強を教えてくれる教室があります。1週間前です。そのときにちょっと声をかけてみる。 3、「やる気ング」という学習クラブというのが本年度、市で学習ソフトを買い、基本的にはプリントがどんどん出てくる教室を作りました。学校によって違いますが、月木、3時半から5時半で、学習できるようになっています。そこにパソコンを3台置いてもらいました。そこに来る子どもに「使ってみる?」と、個別指導の場でその子に届ける方法もあるかなと思います。 4、支援学級、通級学級で使うのはどうでしょうか。 5、(その子の自尊感情ということで)自宅で。先ほど言った不登校ぎみの生徒のことですが、その生徒も実はパソコンが得意なんです。彼も、DAISYは受け取りました。彼の支援になればいいなと思います。

学びング・やる気ングで

*最後に

DAISY図書は自我が芽生えた生徒の家庭学習として、有効です。 望めば、いろいろな形で、しかも、本人の望んだ時期からスタートできます。 DAISY図書の願い、1枚のDAISYが届けられて作った人、届ける人、もらう人、保護者、みんなの願いがDAISYに込められていると思うんです。 その思いが伝わると私は思います。 特別支援だけでなく、たくさんの生徒に役立つと申しました。 聴覚障害の生徒、2年後本校には視覚障害の生徒が入ってきます。またこれが使えるかなと思います。 それから、教室には学習に遅れている生徒(、読み書きの障害という、「ディス」という言葉にはとても抵抗があるのですが、なにかもっと適切な言葉はないかとも思いますが、それは置いておいて)、いろいろな困難を持った生徒がいます。困った子なら誰でも使えるツールになるのではないかと思います。 DAISY図書が有効な生徒に届くようになり、そして合理的配慮を必要な人が受け取れ、周囲もそれを温かく見る学校、違いを認め合う心豊かな社会になればいいなと思います。 ご清聴ありがとうございました。

最後に