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「障害者と情報化社会はこれからどのように進んでいくべきなのか
~Webアクセシビリティを中心に~」

静岡県立大学国際関係学部教授 石川 准

 ウェブの出現で、誰もが情報にアクセスできる可能性が開けてきた。しかし、ウェブが様々な用途に使われるようになり、ウェブアプリケーションや動画を含んだ複雑なものに変化してきた結果、想定された身体的特性からはずれた人たちにとっては、利用しづらいものとなってしまった。ウェブは電子的なメディアであるため、テキスト・画像・音声からなる多元的メディアの情報を様々なスタイルで提示できる可能性があり、その意味で障害のある人にとっても期待が高いメディアと言える。だからこそ、情報アクセスの平等化という観点から、ウェブアクセシビリティの重要性を認識する必要がある。
また、情報交換の新しい仕組みとして期待されているXMLは、アクセシビリティにとっても期待の星である。machine understandableに情報を提供する仕組みがあるところでは、アクセシビリティは飛躍的に向上する。その意味では、たとえばXMLをベースとするマルチメディア提示言語のSMILと、それを用いて制作されているDAISYフォーマットのマルチメディア・コンテンツの普及への期待は高い。情報を必要以上にブラックボックスに入れて隠そうとする社会的傾向は、アクセシビリティを疎外する危険がある。
国際的にはW3Cがウェブアクセシビリティに関する各種ガイドラインを定め、取り組みをリードしてきた。現在はウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)2.0の策定作業を行っている。また、アメリカにおけるリハビリテーション法508条の制定をはじめとして、欧州諸国や、アジアの一部の国でもウェブアクセシビリティに関する取り組みが具体化している。
国内の動向も、ここ数年急速に変化してきている。ウェブコンテンツJISの制定後、自治体や中央官庁などでは、ウェブアクセシビリティを意識するようになってきた。公共のサイトでは、ウェブアクセシビリティに配慮した対応を始めており、ウェブコンテンツJISはその拠りどころとして重要な位置を占めているが、JIS規格の制定だけでは十分ではない。例えば、自治体や中央官庁などが外部発注をする場合、単にJIS準拠を指定するだけで最終目的が果たせるわけではなく、発注者である行政側にも、アクセシビリティについて検収できるだけの知識や方策を持つ必要がある。
「ウェブアクセシビリティ」は共同作業であり、関係するいくつかの立場のプレーヤーが自分の役割をきちんと果たすことが重要である。ここでいうプレーヤーとは、コンテンツ制作者、オーサリングツール開発ベンダー、支援技術開発ベンダー、そしてOSベンダーなどだ。コンテンツ側では、アクセシビリティに配慮した形でのコンテンツ制作が必要であり、そのためには、道具となるオーサリングツールのアクセシビリティ機能も充実していなければならない。支援技術側には、最新の技術に対応した音声ブラウザ等のツールの開発が求められる。