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パネルディスカッション 寺島 彰 (浦和大学 こども学部 教授)

皆さま、こんにちは。ご紹介いただいた寺島と申します。毎年ここに呼ばれているんですが、あまり進歩がなく申し訳ありません。

私は大体ユーザーとしての立場、ユーザーといっても大学の教員としてのユーザーとしての立場でいつも語っているので、ある意味で事例報告になると思います。こんなふうなことに困っていますというのを、お聞きいただいて、どなたか何とか解決してください。特に河村さん解決してください。そういう要望を毎年出しているわけです。

高等教育における課題

資料01


先ほど来、小学校の先生方から DAISYを活用した指導法についてのお話がありましたけれども、私ども高等教育では、具体的に指導するとか、教育するという機会はあまり多くありません。むしろ、どんなふうに今あるシステムを活用するかを、支援していくか、そういうところが中心になります。
私も、昨年までは視覚障害や聴覚障害の学生を担当したのですが、こんなことをやっていたという話とこんなことが不足しているという話をします。

例えば、私どもはそもそも社会福祉士を養成する学部ですが、教科書に関して言えば視覚に障害のある学生のためのテキストがないのです。ではどうするかということで、結局、自分たちで大学の中に障害学生支援委員会というものを作って、ボランティアの学生に少しだけお金を払って、対面朗読などをやっています。

しかし、なかなか難しいのは、同じ学部学生が支援しているために、同級生がやると、とんでもなく間違っていることがあることです。結局、私が作ったりしていると、異常に時間がとられてしまいます。大学教員も今は非常に忙しいので、さらにその負担がかぶってきますと、何とかしてくださいという気持ちになります。

先ほどの河村先生の話にありましたように、もともとテキストが作られる前提になっていれば、それを取り寄せるだけで済みますが、今は各大学でそれぞれ取り組んでいるような状態です。

また、即時性の問題もあります。例えば、すでに出版されたものでも、改訂されることがあります。特に、厚生労働省関係の制度などすごく早く変わっていくので、教科書なども改訂される回数が増えています。それにきちんと追いついていけていないので、これもどこかでやってほしい。我々も一応はやっているんですけれども、とてもついていけない。

また、専門の図書・文献についても、何とかしてほしい。私が、授業の中で、こういう雑誌が出ているというのを紹介しようとすると、一人でも視覚障害の学生がいると、全部、スキャナでとって、テキストに変え、Wordにしてというふうにしないといけない。スクリーンリーダーで読めなければ、その学生は情報にアクセスできないことになります。視覚障害の学生、特に全盲の学生が一人でもいたら、その授業の準備のために、授業期間中の土日はないということになってしまいます。

障害学生における情報化の課題

資料02

また、いろんなところで教材の音声化、点字化が不足しています。例えば、最近、検索システムがいろんなところにあります。スクリーンリーダーに対応していないために視覚障害者が検索できないということもあります。

図書館を利用する場合についていえば、すべての図書館共通のデータベースが利用できればいいんですが、そうなっていないので、やはり、直接大学に出向かなければならなかったりすることもあります。そういうときは、全盲の方などは移動の問題があって困難なときがあります。

聴覚障害者については、直接教科書とは関係ありません。例えば、ビデオ教材には字幕や手話がついていないので、それを別に作り、横に別のディスプレイを用意して字幕や手話と表示するシステムを作らなければならなかったりします。これは著作権法の問題で、既にできあがっているビデオに字幕を入れることはできないということです。

障害学生における情報化の課題

資料03

手話などは、それを挿入すること自体が難しいということもあります。手話については DAISY4で対応されると聞いていますので、期待しています。ただ、その時にまた著作権のことをごちゃごちゃ言われないようにお願いしたい。

それから、授業場面では、手話通訳などの問題もあります。要約筆記や手話を保障するシステム自体を作るのも難しい。ノートテイクは、学生ボランティアにやってもらっているんですけれども、それを希望する学生の時間に合わせてうまく配置するのがなかなか難しい。また手話通訳は通訳者の数自体が少なくてむずかしい。結局、実質的にはできていない。そういうものもシステム的に何とかならないのかという要望です。

私は、聴覚障害者の学生には、自分でパソコンで打って自分でノートテイキングして、自分でしゃべったものを画面に出したり、あるいは他の学生がしゃべったのを僕がパソコンで打ちながら、授業をしたことがありました。1年間やりましたが、一番最後にその聴覚障害の学生が評価してくれたのですが、「あれはわかりにくかった」ということでした。

肢体不自由の方は、重度になりますと、ページをめくるのが大変なんです。だから横にいてもらって、授業をしながら私がページをめくるんですが、授業をしながらページをめくるのは、少々大変です。僕がしゃべることに熱中していると、向こうは何ページか前のページを見ていることがよくあるんですね。「申し訳ない」と言いながら4ページくらいめくったりしているんです。情報保障ができていないんじゃないかと、反省はしつつ、そういうことはシステム的に解決していただけないだろうかと思います。

障害学生における情報化の課題

資料04

発達障害の方は、残念ながら、今はちゃんと対応できていません。その大きな理由は、その方が発達障害かどうかがわからないということです。というのは、身体障害者手帳を持っていたりすると障害者であることがわかるんですが、発達障害の人は自分から言っていただかないとわかりません。こちらから「あなたはそう?」とは聞けません。それは人権の問題です。もし発達障害の学生がいれば、マルチメディア DAISYが使えるのではないかと期待はしています。

障害学生における情報化の課題

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最後にまとめますと、システム整備、例えばDAISY出版の話、ネットワーク、大学の相互利用、情報交換、著作権の処理などのシステム整備ができないだろうかということです。技術開発も必要ですが授業にフィットできるようなシステムができないだろうか。

システム整備の必要性

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それから広報です。私は教員の中では多分、非常に変わっているのだと思います。ほとんどの教員は多分こんなことはしていないと思う。よくケンカします。「何でやってくれないんだ」と言うと、相手にしてくれない人がすごく多い。障害のある人の情報保障をするという意識を大学の教員が皆持てるような形に広報していく必要があると思います。

以上です。どうもありがとうございました。