マルチメディアデイジー教科書提供活動について
野村 美佐子
日本障害者リハビリテーション協会
DAISY教科書の提供活動
2008年9月に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(教科書バリアフリー法)」(2008年6月公布)の施行とともに「著作権法第33条の2」の改正が行なわれたことを機にマルチメディアDAISYによる教科書を製作し、小学校と中学校の発達障害等の児童と生徒に提供を始めました。2009年4月に、教科書出版会社からのデータ提供が始まりました。そのことによりスキャンする時間を短縮することができるようになりました。またこの時期、DAISY製作団体に協力を依頼し、ネットワークを立ち上げました。現在は、12の非営利団体の協力により提供活動を行っています。
2010年1月には、著作権法の37条の改正の施行により特別な支援を必要とする児童・生徒のニーズに合わせた形式でのマルチメディアDAISY図書等を複製・自動公衆送信が可能となりました。リハ協は,著作権法第37条第3項について「認められる者」でなく,申請により政令指定を受けました。しかし,教科書バリアフリー法がダウンロードによる配布の想定をしていなかったため,すぐにはダウンロードが認められませんでしたが、多方面からの要請も伴って,同条項と違った条件が課せられますが,8月19日に上記行為が認められました。その結果、同年10月からダウンロードが始まっています。
また、2010年5月からは、教科書バリアフリー法にある「障害その他の特性の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進に資する」ために、次のような提供方法の変更がありました。
- 障害のある児童・生徒は、在籍学年よりも下の学年のDAISY教科書を利用することが可能
- 先生が障害のある児童・生徒の指導のためにDAISY教科書の利用が可能
- 障害のある児童・生徒がいる学級では、先生は、必要に応じて一斉授業でも利用が可能
2010年12月には、先生や保護者にDAISYの効果についてアンケートをとりました。その結果、「大いにそう思う」と「ややそう思う」という回答が多かったのは以下の項目です。
- 読むことへの抵抗感、苦手感、心理的負担が減った。
- 紙の教科書より長時間DAISY教科書を読むことができる。
- 読み間違えが少なくなった。
- 読むことに関心、興味がでてきた。
- 自分から本を読むようになった。
- 文章の理解度が良くなった。
- 授業に自信をもって取り組むようになった。
- DAISY教科書を使用した教科への学習に意欲がでてきた。
現在の時点での提供状況を以下になります。
- 利用者:562名(2011年7月28日現在)
- 在籍するクラスは特別支援学級、特別支援学校、普通学級、普通学級+通級などの取り出し授業
- 利用者の障害:発達障害(LD, ADHD、広汎性自閉症) 眼球運動の障害、上肢障害、脳性マヒ、 知的障害、視覚障害(全盲、弱視)、構音障害など。
- 利用方法:個別学習(通級指導)、家庭学習(一人または保護者と)、通常の学級、テストの準備等
- 製作教科書: 添付を参照
- 配布方法:CD-ROMでの配布、またはダウンロード
課題は、多くの必要な人たちにまだまだ届いてないこと、ボランティアベースであること、DAISY製作ツールの開発などがあり2006年12月に国連総会で採択された国連障害者権利条約で謳う合理的配慮として読むことに困難がある児童生徒にDAISY教科書を国が保障してほしいと考えます。
DAISY教科書の申請につきましては以下のURLを参照してください。
- DAISY教科書に関するウェブサイト:
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/daisytext.html - 再生フリーソフト「AMIS」のダウンロードサイト
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/playback.html