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平成20年度 DAISYを中心としたディスレクシアキャンペーン事業
~DAISY教科書提供体制の確立を目指して~

パネルディスカッション 「DAISY教科書提供体制の確立を目指して」

河村宏氏の写真

モデレータ:河村宏(DAISYコンソーシアム 会長)

河村●
皆さん、こんにちは、河村です。パネルディスカッションの前に、大変多岐に渡るこれまでの歴史と今日の状況、そして、今日はディスレクシアの皆さんがテーマですので、ディスレクシアの皆 さんのニーズということが明らかにされたと思います。

パネルディスカッションは、これからLD親の会、そして図書館、そして大学、さらにLD親の会のメンバーですけれども実際にDAISYユーザーのお母さんとしてのお立場、そういう形で、パネリ スト4名の方が、これからそれぞれ、最初に10分の、やや短いご発表をいただいて、それから議論にさせていただきたいと思います。

テーマは、DAISY教科書をどうようにしたら必要なときに必要なものが手に入るようにできるのか、それについてみんなで考えるということがテーマでございます。私のほうからは、この体制の 確立というときには、今、状況はどうなっているのかということで、やや国際的な動き、背景を少し補足させていただいて、そしてスピーカーにお話をいただくようにしたいと思います。

先ほど、野村さんのほうからご紹介のありました、先週1週間、京都で、あるいは東京で、そして長野、信州大学でもやりましたけれども、様々な対話、集会、プレゼンテーションがありました。 DAISYの今日の状況について、さらに確認をするということがその中でできたわけです。

要点を申し上げますと、今、世界的にDAISYはいよいよ出版のメインストリームと緊密に連携をすることが確実になってきたということが一番大きな要点です。これは世界の話です。日本の中で個別に見ると、またちょっと別なんですが、世界的に見ると、「ePUB(イーパブ)」、アルファベットのeに、PUB、PublicationのPUBです。eだけ小文字で書いて、PUBは大文字で書くというのが普通の書き方です。皆さん、「ePUB」と入れて、あと「ソニー」と入れて、検索をGoogleでやってみてください。そうすると、いろんなことが出てきます。その中で、多分皆さんがびっくりすると思うのは、ソニーのアメリカで主に売られているeブックリーダーというものが、ePUBをサポートすることによって、大きく電子出版の動きが変わっていくであろうという予測記事がたくさん出てくると思います。このePUBというのが1つの大きなキーワードです。

ePUBを制定しているIDPF(アイ・ディー・ピー・エフ)、IはInternationalのIですね。DはDigitalのDです。PがPublishingのPです。FはForumのFです。このIDPFという団体がありまして、DAISYコンソーシアムというDAISYの開発と維持にあたっている団体は、このIDPFの理事を務める加入団体です。ePUBの中身は、よくよく見ると、「DAISY3」の規格から音がない、そして音とテキストを結びつけるための「SMIL(スマイル)」という、先ほど中村さんからお話のありましたSMILというファイルがない。つまりテキストだけでできているDAISYの規格と、ほぼイコールです。

そして実際に、今もう何百万冊というふうに売られている電子ブックは、だんだんePUBのフォーマットに移行していくというふうに私どもは考えています。もう一歩で、この電子ブック、やがてGoogleが提供する、Googleの電子図書館というのがありますけれども、版元で絶版になっている本を中心に、Googleが提供している大きな電子図書館があります。これが最終的にはDAISYと共通のナビゲーションの規格を持つであろうというふうに私たちは考えて、今協力をしているところです。

このように、何百万冊という規模で、もうあと1年、2年で予測される、DAISYとほぼ同じ規格の、DAISYリーダーが読めるであろうコレクションというのが、今予定をされているというのが国際的な状況です。

それでもう一方、Adobe社と、Microsoft社は、それぞれAdobe社はデスクトップ出版のInDesignというソフトをつくっておりますけれども、このInDesignのマニュアルをよく見ると、最後にファイルを出力するときのオプションに「DT Book」、DenmarkのDに、TalkingBookのTですね、DT、それにそのまま本のBookというふうに付けますが、「DT Bookの形式で出力しますか?」というオプションがあります。これはマニュアルを見ると、そのように書いてあります。つまりDT Bookというのは、DAISYトーキングブックのことです。あるいはデジタルトーキングブックのことです。これはDAISY規格が定義しているフォーマットです。つまり最終的にデスクトップ出版のツールもDAISY規格をサポートしていく。最初はなかなかうまくいかないかもしれません。技術の問題ですから。でもゴールとしてサポートしていくということをAdobe社は既に表明をしています。ですから時間の問題で、これは実現するだろう。

さらにMicrosoft社は、MSWordですね。MicrosoftWord、これがDAISYでセーブできるためのツールを既に発表しておりますし、もうじき、あと1週間ぐらいで、さらに便利なツールができます。それこそワンタッチで、最後はボイス・シンセサイザーでテキストとシンクロしたDAISYフルテキストが付いた、ただしシンセサイザーの音ですけれども、それでDAISY図書ができるというふうな見込みです。その声を人間の音声で後で入れ直すことは十分できます。それは編集ツールによるわけです。

このように申し上げているのは、メインストリームと私たちが言っています、普通に世の中のみんなが使っているツール、その中に、やっぱりDAISYに最後は変換できるようにしていくということによって、誰もが読める社会をつくっていくということが、産業界の支持を得てきているという流れを皆さんにお知らせしたいということです。

これまでなかなかそれが難しかったというのは、やはり技術の問題で、ずっと長いこと、一緒にいろんな議論をしながら、そのほうが産業にとっても商売になるし、そして産業界が市場を確保しながら、しかもそこで印刷から阻害される、出版から阻害される人がいない社会をつくることができるということが支持を受けてきたというふうに考えております。

もちろんその背景には、障害者の権利条約、障害者に対する差別を許さないという法律が各国で制定されるための国際法が発効したということがとても重要な背景になっています。そういうふうな背景の中で、みんなで、じゃあ教科書をどういうふうに必要なときに必要な形式で必要な生徒が手に取るようにできる日本を目指すのかという議論を行うことになったという点で、私はこの流れが、やっと私ども先週の会議で、ああ、こういう流れになってきたねということを、国際的にやっと確認いたしました。それまではちょっとよく分からない部分もあったんですが、そういう確認できた直後に、こういう大変有意義な、これまでの取り組みの集大成として、こういう議論を行って、教科書をとにかくみんなが手に入れるというパネル討論ができるということは大変意義深いというふうに思います。