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基調報告 日本デイジーコンソーシアムの課題と本日の会の進め方

河村 宏(日本デイジーコンソーシアム運営委員長)

 今日のこれからの講演と、それから、意見交換の流れをもう1回まとめてみたいと思います。
 国際的な動きは、今日の会議の表題の一つになっております。
 マラケシュ条約について、かいつまんで申し上げます。著作権、商標、それから特許を管理しているWIPOと略称される世界知的所有権機構には186の加盟国がありまして、その全ての国の代表が、今年の6月にアフリカのマラケシュという、世界文化遺産の都市に集まって新しい著作権条約を作りました。その条約をマラケシュ条約といいます。
 趣旨は、視覚障害者と普通の印刷物を読むことが難しい人たちの読む権利を保障するための国際条約です。それぞれの国で、日本でいうと著作権法の37条等で、合法的に図書館などは著者の許諾を得ることなく、DAISYとか、点字とか、録音図書とか作ることができるわけです。そうやって合法的に作ったものを国際的に交換できるようにするというのが趣旨です。
 186の国全部がそれに賛成したというところが大きいことです。これまでは、それぞれの国の国内法でそういうことを決めていました。例えば、日本では2010年から施行されている現在の著作権法の37条ですと、視覚障害以外にディスレクシアや本を持つことが難しい方とか、あるいは法律の趣旨からいくと、例えば、手話を普段使っている方は日本のろう教育の制約の結果普段あまり活字の本を読まないので、できれば手話でもって本の中身を伝えてくれたらいいのにというニーズがあります。
 そういういろいろな意味で、普通の出版物を自分が読んで理解することが難しい人たちを対象に、そういうプリントディスアビリティの人たちにそれぞれの国の法律で著作権を制限して特別に作られた資料を国際的に交換できるようにしよう、そのための具体的な仕組みも考えようということを決めたということです。
 考え方がここで統一されたというのは非常に大きいことで、法律の整備とか条約の整備まではちょっと時間がかかりますけれども、考え方としては非常に大きなよりどころになると、この運動を進めてきたデイジーコンソーシアムを始め、世界中の人々は考えているところです。
 しかもそれがWIPOに参加する全ての国が賛成しているということが、なんとも心強いことです。そのもう一方で、いつまでも、出版された後に、そうやって権利を保障するための製作活動が続くのだろうか、それでは時間的に遅れてしまうではないか。そこをもっと根本的に解決できるのではないかという障害者の権利の立場からの考え方と、著作権者あるいは出版社から見ると、なんでいつまでも権利を制限され続けのか、そういうアクセシブルな出版ができるならば、それを販売してマーケットとしていく活動があってもいいじゃないかという出版社の立場、この両方が一致できるのが、アクセシブルな出版をこれから大いに進めていくという方向です。
 マラケシュ条約では、そういうアクセシブルな出版がされた場合には、同じものを、無許諾で作るという行為は禁止されます。つまりそこに出版物があるのであればそれを買って使うということが前提になります。
 今日は、このマラケシュ条約で国際的に合意された、そういう二つのこれからの障害のある人たちの読書を保障する保障のあり方、それを、それぞれどういうふうに具体化して支えていくのかについて、講演を3人の方からしていただき、その後、かなり時間をとって、意見交換をします。非常に意見交換しがいのあるメンバーが、集まっておりますので、皆さん、今日は黙って帰るっていうことなしに、ぜひ、意見を言って、参加をして、きょうのこの会を、有意義なものとしていただければ幸いです。
 それでは、私は、後半の意見交換のモデレーターとして、また皆さんのご協力をいただくことになりますけれども、これからの流れとしては、このような話で先へ進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。