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シンポジウム「デイジー教科書の現状、課題、そして将来に向けて」

講師のコメントおよびまとめ

野口 武悟(専修大学文学部 准教授)

先ほどのグループ発表のなかで、AグループとFグループでしたでしょうか、公共図書館で、マルチメディアデイジーの教科書や図書を置いて使えるようにしたらどうかといった意見があったかと思います。公共図書館でのマルチメディアデイジーの実際の所蔵率は、文科省では調査していないのですが、国会図書館から委託を受けて私たちのグループで2010年に全国調査をやったところ、1.3%でした。13%ではなくて、1.3%です。ほとんど所蔵していません。

もう1つ参考になる調査として、2013年4月~5月に、電流協(一般社団法人電子出版制作・流通協議会)という電子出版の団体が公共図書館を対象に電子書籍の導入について調査したものがあります。それによると、公共図書館が電子書籍に期待する機能として、「文字拡大」や「音声読み上げ」、「文字と地の色の反転」などのアクセシビリティの機能が上位にあがりました。7~8割くらいの公共図書館がこれらの機能に期待していると答えています。その一方で、電子書籍を導入することを具体的に検討しているかというと、半数以上の館は「全く検討していない」ということです。ここでいう電子書籍の中に、図書館側がマルチメディアデイジーを含めているかというと、多分含めていないのではないかと思います。

そもそも、図書館や学校にとって、デイジー以前の問題として、ICTに対する抵抗感や、利用する環境を整えることへの意識の低さが指摘できます。デイジーの普及を考えるのと同時に、その前提として、図書館や学校の意識をどう変革していくのか、そして、ICT環境の整備をどう進めていくのかを、考えていかなければならないと思います。

そういう意味で、マルチメディアデイジーの普及に向けて、私のいたグループから、ACジャパンの広告を活用してはどうかという意見が出ましたが、私も一つ有効な方法かなと思います。過去に読書に関するACの広告が流れたことがあります。ちょっと調べてみたら、過去、日本自閉症協会とか文字・活字文化推進機構などもACジャパンの支援団体になっていたようです。ですから、日本障害者リハビリテーション協会にも、ぜひ、ACジャパンの支援団体になっていただいて、キャンペーンを展開するということをできなくもないのかなと思います。

このほかに私が考えたのは、各地の都道府県立図書館とか教育委員会とタイアップして、47都道府県すべてでシンポジウムや普及の講演会などを開催するというものです。いわば、マルチメディアデイジーのキャラバンです。

どうしても普及や認知度は都道府県間でのばらつきがあります。先ほど野村さんから紹介があったように、普及率は全体的に西日本で高い傾向があります。東日本はもう少し頑張って欲しいという状況にありますので、都道府県間のばらつきを解消し、認知度の全体的な底上げを図っていくために、47都道府県すべてで知ってもらう機会を作ることが重要なのではないかと思います。