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Session 1

セッション1

なぜ新著作権条約が必要か

(1)WIPOの活動

ジュリー・レイ
(IFLA/LPD常任委員会議長、ビジョンオーストラリア)

テキスト 1

テキスト 1

おはようございます。本日このような機会をいただき、ありがとうございます。少し世界の状況また印刷物を読むことの障害について、それから少し条約についてと、そしてその後WIPOについて、世界知的所有権機関についてお話をさせていただきたいと思います。

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情報へのアクセスは、人格の発達また知識の形成において基本的な要素であります。世界では約100万の印刷物のタイトルが毎年出版されています。

印刷物を読むことに障害のある人は、印刷物の情報にアクセスすることに対してしばしば困難を持っています。視覚障害があるからです。

世界では3億1,400万人以上の人たちが視覚障害を持っています。非常に多くの人たちが印刷物を読むことに障害を持っていたり、また生涯の中では一時的また恒久的に従来の印刷物を読めなくなります。これによって彼らは貧困のリスクがさらに高まり、また教育が欠如したり、病気の可能性が高まります。

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全国的なレベルでは、特殊な組織、例えば視覚障害者向けの図書館が、本をDAISY、点字、音声、また特殊なデジタルフォーマットに、それぞれ費用を出費しながら適用させています。国際的な協力をこのような図書館の間で促進していくことによって、このような代替の形にする作品が増えていきます。

そして中期的においては、このような作業をすることによってコストを削減することができます。例えば新しいタイトルの変換や、また印刷物を読むことに障害を持っている人たちへのアクセシビリティを高めることができます。

今までのところこのような国際交流は難しかったと言えます。それは著作権法の問題があったからです。

国際的な調整また協働を、出版社と図書館の間で行っていくということによって、特殊なフォーマットを世界的に交換することができます。これによってコストを削減することもできますし、またアクセシブルなコピーといった共通の目標をさらに近づけることが可能になります。それも非常に速やかに、また出版のプロセスにおいて効率的に製作をすることが可能となります。

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デジタル出版が同じタイミングで、また同じコストで、障害を持つ人やそうでない人たちに提供されるということを望んでいることを考えますと、図書館も、同じように視覚障害もしくは印刷物を読むことに障害を持つ人たちに対して、この目標に時間をかけてこの段階に到達できることを考えていかなくてはなりません。

アクセシブルなフォーマットで出版されている作品は5%以下

ではこれから幾つかの数字を見ていきたいと思います。世界では3億1,400万人の人たちが視覚障害を持っています。これを、印刷物を読むことに障害のある人ということにしますと13億の人たちになりますので、これは中国の人口と同じ規模となります。印刷物を読むことに障害を持っている人たちに対してアクセシブルなフォーマットで出版されている作品は5%以下になります。

世界195ヶ国のうちの57国

57ヶ国は国内法として例外の条項を持っています。日本は国内法を変えたということで、これは58に変えなくてはならないかもしれません。この58ヶ国というのは世界195ヶ国のうちの58国ですので、まだまだ先は長いと言えます。

約60万の本がアクセシブルだが、世界では毎年100万タイトルが出版されている。

視覚障害のある人々の90%は発展途上国に住んでいます。世界では200を超える組織がオルタナティブなアクセシブルなフォーマットでの製作を行っています。約60万の本がアクセシブルであります。しかし世界において毎年100万のタイトルが出版されています。これに追いつくことはありません。

テキスト2

テキスト 2

さて、世界盲人連合は提案をWIPO=世界知的所有権機関に対して行っています。

視覚障害また印刷物を読むことに障害のある人たちに対してのアクセスを改善するという条約の提案をしています。この条約のメリットとしましては、アクセシブルな出版物の共有について、また印刷物を読むことに障害のある人に対してサービスを提供する上での条約となります。また著作権例外に関する国際条約というのは最も効果的な方法であります。

また全世界において協力をして達成をしていくという意味で非常に重要な条約となります。この条約によっては限定的な例外が与えられ、また著者の独占的な権利に対しての例外が与えられることになりますので、アクセシブルなフォーマットを障害のある人に対して配布することが可能となります。またこの条約によって、アクセシブルな出版物の国境を越えた輸出入が可能となります。

クリス・フレンドさんのほうからは、「ハリー・ポッター」についてのお話がされます。世界では英語で6つのコピーが作られていますが、我々がしなくてはいけないのは一つだけであります。
そしてその一つだけを作って、それを英語を話す人たちの間で共有すればいいことになります。
このような条約があれば、そのような教材なども共有することができます。我々がオルタナティブなフォーマットを視覚障害またその他の印刷物を読むことに障害のある人たちに提供していけることが重要なのです。この条約はWIPOに対して提出されています。そしてここでは議論がされています。

ジュリー・レイ

テキスト3

テキスト 3

ここで簡単にWIPOについての説明をさせていただきます。世界の知的所有権を管理している機関です。単純に本だけではなく、映画やまた音楽、クリエイティブな作品を見ています。特許やビジネスの機会などにも責任範囲があります。さまざまな規格や法律などを検証しています。また世界の知的所有権に関する保護も行っております。知的所有権を経済的な発展に関して使用するということを奨励しています。

また我々が複雑な、また非常に、知的所有権に関して、著作権に関しての難しい部分を理解できるように手助けをしてくれる機関です。

また、その他行う内容としましては議論をする公開討論場の提供です。世界盲人連合は1973年からこの議論に参加をしています。

このWIPOは、この議論の一部といたしまして、ステークホルダーズ・プラットフォームを作っています。WIPOはさまざまなステークホルダーを招待し、視覚障害者の観点からも、また権利保有者からも招待をし、そしてさまざまな問題について取り組んできました。

テキスト4

テキスト 4

三つのプロジェクトが決定されています。

イネイブリング・テクノロジーズ・プロジェクト(実現のための技術)。

キャパシティ・ビルディング・プロジェクト(能力開発)、そして、TIのプロジェクト(信頼のおける媒介機関)です。

イネーブリング・テクノロジー(実現のための技術)のサブグループもしくはプロジェクトは、出版社との協力をすることによって、製作の段階からアクセシビリティを盛り込んでいきます。つまり本が出版されるときには、もう既にアクセシブルになっています。

今年の10月ぐらいにはサミットを予定しています。イーブック=電子書籍の出版社、ハードウェアのメーカー、ソフトウェアのメーカー、出版社、また著者、トラステッド・インターミディアリ-(TI)、もしくは印刷物を読むことに関して障害のある人たちに関わっている機関の人たちが集まって、どういったアクセシビリティの問題があるのかということを議論します。

二つ目のグループはキャパシティ・ビルディング・グループ(能力開発)です。先ほど90%の視覚障害者は発展途上国に住んでいるとお話をしました。58ヶ国しか著作権法の例外が適用されていないというお話もしました。キャパシティ・ビルディングのサブグループは発展途上国に対してオルタナティブなフォーマットが提供できるように支援をしています。例えばスキルを学んだり、DAISYについて理解をしたり、またどのように教材などを作成すればいいのか、また、その他の機関などと協力をして、どのようにして著作権法の改定に動けばいいのかという動きを取っています。

最後の点というのがTIと呼んでいる、トラステッド・インターミディアリーズ(信頼のおける媒介機関)です。グローバルにリソースを共有しようということです。このグループは、今、名前が変わりまして「TIGAR(タイガー)」というふうに呼ばれています。

テキスト5

テキスト 5

国際的な著作権の例外というコンセプトは、TIの関係をどのように構築していくのかということと調整をとりつつ作られています。アクセシブルなバージョンを製作するコストは、コンピュータファイルが出版社からTIに転送されれば、またTIからもう一つのTIに対して転送されればコストが劇的に削減できます。しかしエンドユーザーを忘れてはなりません。エンドユーザーもアクセシブルなバージョンを早く、それも速やかに、世界中のどの機関からも手に入れられるようにしたいのです。

テキスト6

テキスト 6

オーストラリアでは非常に多くの国籍の人たちがいます。日本から来ている人たちもたくさんいます。オーストラリアに住んでいる日本人も多くいます。

そういった人たちも、母国語の教材などにアクセスしたいのです。

条約があればそれが可能となります。共用することが可能となります。

条約を推進するために政府に対して支援をしてもらうように働きかけることが必要ですし、またそれを擁護する人も必要です。

今日はご清聴いただきましてありがとうございました。