Session 1
セッション1
(2)TIGARプロジェクト
マーガレット・マグローリー
(グローバルライブラリー常任委員会議長、カナダ国立盲人協会)
おはようございます。マーガレット・マグローリーと申します。カナダ国立盲人協会に属する図書館がありますが、そちらから参りました。視覚障害者のためにサービスを提供しています。この会議に参加でき非常にうれしく思っております。私は TIGARのプロジェクトの最新状況についてお話をしたいと思います。ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので背景も説明したいと思います。
今日はTIGARのプロジェクトのプラン、TIGARとは何なのかということを説明します。その目的そしてそのスケジュールなどをお話しし、プロジェクトの運営機構について説明をします。
どのようなチームが仕事をしてこのプロジェクトを実施しているのかということ、そしてパイロットが実施されています。その状況について説明し、パイロットプロジェクトの目的を説明し、そして現在の活動状況を説明します。
さて、TIGARプロジェクトとは何でしょうか。
TIGARというのは「信頼のおける媒介機関におけるグローバル・アクセシブル・リソース(Trusted Intermediary Global Accessible Resources)」という非常に長い名前なのでTIGARと呼んでいます。
これは共同パイロットプロジェクトで、出版社などの権利所有者 (RI)、そして先ほどジュリーさんが説明をしたTI(信頼のおける媒介機関)、そしてWIPO(世界知的所有権機関)が参加をしています。
主たる参加組織はこの三つ、RH、TIそしてWIPOです。
このプロジェクトはその前に二つの取り組みがありました。グローバル・アクセシブル・ライブラリーというプロジェクトがありました。GAL(ギャル)というプロジェクト、そしてWIPOにはTIのプロジェクトが先にありました。なぜそれを一緒にしたかと言いますと、お互い共通の目的があるから一緒にやる必要があるというふうに感じたからです。出版会社などの権利所有者が必要なのは環境です。
ガイドラインを実際に試してみたい、国境を越えて他のフォーマットを共有可能かどうかということを見る必要があります。
またGALとしては、グローバルなライブラリーを成功させるためには著作権のかかっているリソースを使ってみる必要がありました。これまでと違った出版のあり方が必要とされている、世界的に印刷物を読むことに障害を持つ人がいるということが強く認識されるようになったからです。
さて、TIGARプロジェクトの目的は、世界各地の印刷物を読むことに障害がある人々のために著作権で保護されている作品へのアクセスを改善するという、シンプルな目的があります。
目指すのは図書館と出版社のサービスを投じて、目が見える人々と同様に、途上国・先進国の、印刷物を読むことに障害がある人々が出版物を利用できるようにするということです。
さて、プロジェクトの主な目的は何でしょうか。著作権で保護されているアクセシブルな作品を効果的で安全な、管理された方法によって、国境を越えてTI間で共有することを可能にする、そしてこれを試験的に実施する。出版物のアクセシブル版の配布をさらに進めるためにTIによる国境を越えた検索とアクセスを可能にし、例えば、視覚障害者の図書館などによってそれができるようにする。
そして最終的には資格のあるエンドユーザーによって直接的にアクセスができるようにしたいと考えています。世界中のどこで作られたものであっても、アクセシブルなものに直接エンドユーザーがアクセスできるようにするということです。
そしてWIPOのステークホルダー・プラットフォームが承認したTIのガイドラインがありますが、これを検証し改訂し、そして実践において全関係者の懸念と利益が何かを確認し、これに取り組むことです。
最後に継続的で持続可能なビジネスモデルを推奨するべく、新たなプロセスと技術解決策を検証し、そしてさらに改善することであります。
これは3年間のパイロットプロジェクトです。
2010年11月に始まったばかりでありまして2013年10月末まで実施します。目標は、プロジェクト終了時に関係者すなわち信頼のおける媒介機関、権利所有者、そしてエンドユーザーを満足させる持続可能な運営制度そして漸次拡大可能な安定した国際TIネットワークを構築することであります。
これからTIは増えてくるということを想定しているのです。漸進的なアプローチで進めていきたいと思います。それはまず少数のTI機関で開始をするということです。
いろいろなタイプのTIが最初に参加することは必須だと思っています。何がうまくいき、何がうまくいかないかということをはっきりさせた上で、このプロジェクトを拡大したいと考えています。
さまざまなTIと言いましたが、英語を使っている組織、英語以外の言語を使っている組織、途上国からの参加TI、あるいは先進国のTIも参加するということがパイロットプロジェクトの第一段階で必要だと考えています。
五つのプロジェクトの流れを同時進行させていきます。最初のストリーム、これは、どのようにしてファイルを共有できるかということ。新旧のタイトルをTI間で共有していく、そのために必要なインフラストラクチャーの構築を考えます。
また権利所有者との契約を締結し、そしてそのあり方を検証していきます。
WIPOが今検討しているのは、国際的な条約をもって国境を越えたファイルの共有が最終的にできるようにしたいと言っていました。
国境を越えて書物を共有するためにはまず契約をするということが必要であります。
出版社など権利所有者と各国において契約を結ぶということでこのプロジェクトでは問題を解決しようとしています。
ストリームの2では、読みやすく改良されたコンテンツについて検索とアクセスを、TIを通じてエンドユーザーが配信を受けるようにし、そしていずれはエンドユーザーが直接できるようにする。
そしてストリームの3では、今回のプロジェクトが終わった後の持続可能性が重要だと考えています。TIGARのネットワークはプロジェクトの終了後も続いて、そして継続的に運営され、グローバルな形で印刷物を読むことに障害を持つ人がリソースにアクセスできるようにしたいと思っています。
ストリームの4はTIの支援です。特に途上国のTIに対して、TIネットワークの有効な参加者となれるように支援したいと思います。世界中いろいろな視覚障害者を支援する機関がありますが、著作権の状況も違う、そしてそれぞれの組織が持っている能力も違います。今回のパイロットプロジェクトの中でTIに対して支援をして、TIGARへのアクセスがすべてのTIによって可能になるようにしたいと思っています。
ストリームの5。これはICTコンポーネントを開発する。いろいろなことができるような技術的な開発です。
これがプロジェクトの運営機構です。この運営組織でプロジェクトを進めています。一番上にありますのが、エグゼクティブ・スポンサーであるWIPOのステークホルダー・プラットフォームです。
TIの組織の代表者、消費者の代表、そして権利所有者の代表、そしてWIPOの事務局長が委員長を務める非常に重要な委員会となっています。そのもとに運営委員会があります。運営委員会にはいろいろな代表が参加をしておりまして、TIの代表も参加します。WIPOの代表者、そして WBU、そして権利所有者の代表も参加しています。全体で10名おりますが、私は運営委員会の共同議長を務めています。
運営委員会を支援する諮問グループが二つあります。権利所有者、出版会社の諮問グループ。権利所有者としては何が必要かということ、どのように問題を捉えるのかということを意見を出しますし、そして WBU からもこういったフォーマットが必要だという意見をエンドユーザー代表として出してもらっています。
そしてプロジェクトを実際に運営していく運営チームが運営委員会のもとにあります。プロジェクト運営チームは、WIPOの方がプロジェクトのマネージャーとして引っ張っていっています。国際ICT作業グループというのは各トピックの専門家で、世界中の専門家が集まってプロジェクトの運営チームに必要な助言をし、例えば技術的な問題の開発、メカニズム、ツール、ソフトウェア、こういったことが整えられるように助言をしています。
そして私たち各視覚障害者のための組織の中で、それぞれの組織の中にプロジェクトチームとプロジェクトリーダーを置いています。TIのプロジェクトリーダーがそれぞれいます。技術とかカタログ作り、目録作り、あるいは規格に関するもの、そしてどのような形で国内共有できるのかということなどをプロジェクトのために情報集めをしています。
既に試験的な実施を行う段階に来ています。まずファイルの転送のプロセスを試験したいと思っています。国境を越えて著作権で保護されている作品ですが、少数のTIで開始したいと思います。4つぐらいの機関で行っていきます。
目的はTIとRH(Right Holder(権利所有者))の信頼関係を築くということです。ファイルを転送する対象となるリソースの権利所有者との信頼関係を作るということです。
ここをしっかりと確認してからアクセスができる組織の数を増やしたいと思っています。技術的なインフラも確認したいと思っています。
一番重要なのは、一番よい、いわ
ゆる検索と発見のメカニズムは何なのかということを知りたいと思います。どこに情報があって、どこに本があって、世界のどこにあって、それが見つかったときに、どのような権利が関わっているのかということを知らなければ、情報を得ることはできません。そのメカニズムを検討したいと思います。
そしてコンプライアンスとモニタリングが重要です。権利所有者は、作品を世界的に利用可能にしても構わないけれども、同時に著作権法に則った形で行われなければいけません。したがって、このそれぞれの国の著作権法によって認められた資格のあるエンドユーザーにのみサービスが提供されているかどうかをモニターし、報告しなければいけません。
12のTI機関が参加を希望しています。12機関のうち6機関をパイロット検証プロセスに招いています。英語圏と非英語圏、先進国と開発途上国の組み合わせで構成されています。
さて現在の活動状況ですが、契約同意書の素案を12のTI機関のCEOに送りました。また、その同じ国に属するRHにも送っています。具体的な内容はTIGAR参加基準であります。TIになりたいという組織があったときには、その参加基準は何かということを示しています。
このプロジェクトのTIになるための参加基準です。またファイル転送のための使用許諾、そして、国境を越えた貸し借りのための著作権処理に関するものなど、契約同意書の素案を12の機関のCEOに対して送りました。
プロジェクトの運営チームはTIと個別に協議をして、この契約素案で、そのままでいいかというような意見を聞いて、そして他のTIとファイルを共有するというプロセスに進めるかどうかを検討しています。
ICTの作業グループがあるという話をしました。各トピックの専門家は12の機関に留まらず世界中から参加をしてくださっています。世界のいろいろな組織、IFLAやDAISYの経験が既にWBUで蓄積されています。そういった専門的な知識を持っている人たちに助けてもらって、どういった方に、どのようなお仕事をお願いできるのかということを検討しています。
また、今、Webサイトを開設しようと考えています。WebサイトとWikiページと両方作りまして、フォーラムを作って、今、TIGARのプロジェクトはどこまで来ているのかということを知ることができるようにしたいと思っています。
また、プロジェクトに関して質問が来ると思いますので、それをFAQのような形で情報を提供したい、インタラクティブに情報を得ることができるサイトにしたいと思っています。
今後3か月、4か月の予定でありますが、まずプロジェクトのWebサイトを開設するというのは優先課題です。そしてパイロット検証に関してTI、そしてその国におけるRHとの契約を進めていくということです。そして、各TIにおいてプロジェクト運営チームが仕事を始めます。どういったプロセスで自分たちのTIが実施するのかということを確認します。重要なのが2011年の4月にステークホルダー・プラットフォーム、WIPOの会議が開かれます。そこで初めて進捗状況を報告することになります。WIPOに対して説明をします。また同時期に私たちは初めてのファイル転送試験を行いたいと思います。まずRHからTIへ、そしてTIからTIへという形でファイル転送の試験を行います。
間違いなく野心的なプロジェクトです。グローバルなライブラリーそしてアクセス可能なコンテンツを持っているものを作りたいというふうにずっと話をしてきました。これが初めて実施されることになります。プロジェクトが実施するときがやっときたと思います。
連絡先もここに掲げています。私は運営委員会の共同委員長です。アンドリュー・トゥーさん、WIPOの方、TIGARプロジェクトのマネジャー、そしてジュリー・レイさん、IFLA、LPD常任委員会の議長さんはこの場にいらっしゃいます。誰でもお答えしたいと思っておりますので連絡をお待ちしています。ありがとうございました。