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「わかりやすいことば」研究所

わかりやすいことば研究所

項目 内容
発表年月 2001年

「私は50年間この問題を熟考してきた今、世界は言葉であるということができる。」

Samuli Paronenサムリ・パロネン

以下のような活動を行なっている

  1. 「わかりやすいことば」ニュースの発行、ホームページをアップデイトする
  2. 教育省と協力して読みやすい文学の促進
  3. プロジェクトの遂行、多方面のサービス、研修の計画
  4. この分野で協同するフォーラム及び情報経路としての役割を務める (「わかりやすいことば」研究所の諮問委員会は30人の協同パートナーの代表者から成る)
  5. 新たな「わかりやすいことば」適用の開発、ロビー活動

ロゴマーク

「わかりやすいことば」出版物にはこのロゴマークをつける

「わかりやすいことば」出版物につけるロゴマーク

  • ロゴマークにより「わかりやすいことば」出版物は識別される
  • ロゴマークは品質の保証をする
  • 教育省の「わかりやすいことば」専門委員会は、「わかりやすいことば」の書籍のためのロゴマークを発行する
  • 「わかりやすいことば」研究所は、他の出版物のためのロゴマークを発行する

「わかりやすいことば」の必要性

フィンランドでは「わかりやすいことば」の必要性はまだ調査されていない。種々の統計や調査から集計したデータに基づいているが、「わかりやすいことば」の必要性は年齢により異なる:

児童や青少年 4-8%
就労世代 約4-6%
65歳以上 10-20%

フィンランドの対象となるグループは約20万から35万人を含む(全人口の4-7%)。

この中の小グループは機能的非識字者であり、話しことばを支援したり代替するような伝達方法が必要である。

対象となるグループは誰か?(Hannu Virtanenハヌ・ヴァータネン

機能的識字障害の理由:

  1. 妊娠時や幼少期に起きた問題、遺伝的影響
  2. 様々な病気による要素または老化(例えば、老人性痴呆)
  3. 社会的環境からの影響(特に少数民族の言語に関連する)
  4. 上述した様々な要因の相互作用

少なくとも、フィンランドの以下の対象となるグループの人々は、読みやすくするサービスから利益を得る:(当該の各対象となる典型的なグループのごく一部)

  1. 様々な障害者のグループ(知的障害、自閉症、失語症、不全失語症、先天性聴覚障害、重複障害を含む)
  2. 読み書きに困難がある者(ディスレクシア)
  3. 高齢者(特に痴呆の人、後期高齢者)
  4. 公用語以外の言語を母語とする人々

適用

  • 書籍
  • インタラクション
  • 雑誌と新聞
  • 演劇、ドラマ
  • パンフレット
  • テレビ番組、映画
  • インターネット
  • 音声制作、ラジオ放送
  • 混合メディアへの適用
  • CD、DVDへの適用

「わかりやすいことば」メディア

雑誌

  • 「わかりやすいことば」ニュース(1990年設立)、最近のできごとを発行
  • LL-Bladet(1990年設立)、「わかりやすいことば」ニュースのスウェーデン語版
  • Leija(1983年設立)、知的障害者のための雑誌
  • その他の様々な雑誌は明快な伝え方を目指し、「わかりやすいことば」についてページを割いている。

ラジオ

  • 1994年から1999年の長期にわたり、スウェーデン語ラジオのアクツエンケルト(Aktuenkelt)が何度か試みている。

テレビ

  • まだ特定の「わかりやすいことば」プログラムはない
  • 手話ニュース及び子供ニュースプログラムは、理解しやすい言葉について注意を向けている。

「わかりやすいことば」ニュース

  • 出版社:「わかりやすいことば」研究所/知的障害者の教育団体
  • 8~12ページで、最近のできごとを発行する
  • 国内外の出来事、文化、スポーツおよび娯楽を扱う
  • 他のメディアが扱う同じものを、より徹底的・総合的な描写で
  • 多様なグループの読者を対象とする
  • 隔週で発行し、購読料はFIM120(20C)である
  • しばしば様々なテーマを掲載する
  • さらにスウェーデンでLL-Bladetの名前で出版されている

「わかりやすいことば」ニュースの読者

「わかりやすいことば」ニュース(1998年/ハヌ・ヴァータネン)の読者調査によると以下の層になる:

知的障害者(特別教育を含む) 30%
要介護老人 18%
他国からの移住者 14%
就学者(特別教育を除く) 13%
他国への移住者 10%
聴覚障害者 7%
図書館および他の公共機関 6%
その他の障害者グループ 2%
 合計 100%

わかりやすいことばニュースおよびLL-Bladetの総数(1988年読者調査/ハヌ ヴァータネン)

中学校および高等学校 40%
知的障害者 20%
要介護老人 12%
他国からの移住者 9%
他国への移住者 7%
図書館および他の公共機関 5%
聴覚障害者 5%
その他の障害者グループ 2%
 合計 100%

その他のコミュニケーション

公共部門と民間部門の協同により、2000年には以下のものが出版された

  • 「わかりやすいことば」についての法律
  • 歩行者のためのパンフレット
  • 携帯電話についてのパンフレット
  • 家庭での火災防止のパンフレット
  • フィンランドのマークからユーロのマークへの変換に関する資料

インターネットは将来ますます重要な役割をはたす。「わかりやすいことば」のコミュニケーションに専念する特別なサイトがある。

その他のヨーロッパの国々での「わかりやすいことば」出版物

ヨーロッパで出版される「わかりやすいことば」ニュースやLL-Bladetに類似している5社の「わかりやすいことば」出版社がある。

  • 8 Sidor (スウェーデン、1984年設立)
  • Klar Tale (ノルウェー、1990年設立)
  • Pa Let Dansk (デンマーク、1987年設立)
  • Wablieft (ベルギー、1986年設立)
  • L’Essentiel (ベルギー、1990年設立)

多くの国に知的障害者を対象とした「わかりやすいことば」出版社がある(例えば、スウェーデン、ドイツおよびオランダ)。さらに、移民のための読みやすい書物が出版されている(例えば、スウェーデンのSesam)。

「わかりやすいことば」の定義

標準言語の定義(フィンランド国語調査研究所)
標準言語は、ひとつの言語共同体の中で異なる年齢や職業のグループに共有される言葉の形式である。その形式は書き言葉の規準に従っていて、一般的に理解される用語を用いており(少なくとも使用されている特別な用語を説明する)、簡潔な文章構造を持っている。
「わかりやすいことば」の定義(「わかりやすいことば」研究所)
「わかりやすいことば」は、読むことや理解(または両方)が困難な人々が、標準言語よりも容易に読み理解できるように、内容、語彙および構造が書き直されている。

読解力に影響を与える要因 (Ahvenainen,Ossi - Holopainen,Esko: Lukemis- ja kirjoittamisvaikeudet, 2000)

読者に固有の要因

  • 読む動機、テキストへの関心の程度
  • 読者の話題についての背景的知識、過去の経験
  • 話題に関する内容の理解力
  • 基礎的な読書能力の熟達度
  • 解釈力
  • 読書環境

テキストに関連する要因

  • 語彙:単語の長さと共通性、難易度
  • 文章構造:長さ、修飾語の数、節の数、むずかしい構造
  • 本文の構成:内容の統一性、テキストの言語構成要素の結びつき
  • 印刷の読みやすさ:フォントの種類、見出し、段落の区分、レイアウト、さし絵

読みやすい図書のための国際的指針

“Guidelines for Easy-to-Read Materials”(読みやすい図書のための指針)

IFLA (国際図書館連盟)作成

“Make it Simple European Easy-to-Read Guidelines”(簡単にする ヨーロッパの読みやすくするための指針)

ILSMH (European Association of Inclusion International=(インクルージョン・インターナショナル・ヨーロッパ連合)作成

  • 欧州NPO
  • EU(欧州連合)及び他の欧州諸国の知的障害者とその家族の権利と利益を守る-読みやすい図書のための指針は、EUの全ての公用語で出版された

「わかりやすいことば」への4つの段階(指針、Tee se helpoksi, Ari Sainio 2001)

第一段階

出版の目的を決定する:述べたいこととその理由

  • 読者または聞く人に何を学び、記憶し、または悟って欲しいかを考える
  • 常に最も重要な目標を心の中に留めておく
  • 出版の対象となる読者を決定する
  • 可能ならば計画の中で対象となる読者のひとりを含める

あなたの言うことが理解されるか確かめる!

第二段階

わかりやすいアウトラインにする

  • 主題について読者がすでに知っている情報は何かを考える
  • 内容、アウトラインおよびテーマを決定する
  • 出版の重点を一覧にする
  • 構成が論理的か確認する
  • 主となる目標に直接関係のないテキストは削除する

第三段階

テキストを書く

  1. 一般的な話し言葉を使う
    • つづりの長い語を避ける
    • 外来語、専門語、方言、略語を避ける
    • テキストの中の難解な語や表現を説明する
    • 大きな数は慎重に扱う
  2. 簡潔な構成を使う
    • 難解な語形変化を避ける
    • 難解な動詞型を避ける
    • 受動態を避ける
    • 人物を引用する語を使う
  3. 短い文を使う
    • 一文に一つの重要な話題
    • 主節に最も重要な話題を含み、従属節に修飾語句をおく
    • 直接的な語順を使う
  4. 論理的な主題構成を念頭におく
    • 一般的に文の始めに身近な話題を述べ、終わりに新しい話題を述べる
  5. 文を互いにつなぐ様々な方法を使う
    • 繰り返し、比較、類語、同じ概念をもつ類語:食物―食べ物、食用魚―魚
    • 人や物を言及する:ジョン―彼、ロンドン―そこ
    • 節の結びつきを示す用語(接続詞):そして、しかし、従って
    • 文の一部を別のものと代用する:だから、それから
    • 省略的な表現、読者が欠けている語義の内容を完成させる:考えている政治家もいれば、考えていない政治家もいる
  6. 内容に時と場所を結びつける
  7. 具体的に書き、抽象的な表現を避ける;多くの実例をあげる、比喩的表現は気をつけて使う
  8. 明白な言葉を使う
  9. テキストの他の部分の参照を避ける
  10. 成人向けに書くときは成人の言葉を使う

第四段階

テキストをチェックする

  • 必要に応じてテキストを訂正し改善する
  • 可能ならば対象となる読者から得たフィードバックを使う

注:

わかりやすい書き言葉は単なる技術や指針に従うことではない。著者の創造的な努力が全ての書物と同じように最も重要である。

「わかりやすいことば」出版物のレイアウト

「わかりやすいことば」出版物について

  • 文は左側にそろえ、行の長さをそろえない(ハイフンを使わない)
  • ワードラップとラインの分割には特に注意する
  • 基本のフォントは通常より大きくする(11―16ポイント)
  • 基本のフォントはユニバーサル紙と同じ、本文はタイムズ紙と同じにする
  • 行間は通常より広くする
  • 文字間はフォントのサイズにより決定する。文字間の空きすぎは読みにくい。

レイアウトに関するその他の注意点

  • 「わかりやすいことば」出版物においても、読みやすくする全ての一般的指針を活用する
  • 余計な枠、色や線を過度に使うなど、全ての不要な細部を省く
  • 目標は、簡潔でわかりやすくスマートなレイアウトである

グラフィックの明瞭性

特殊なグループがさし絵を理解する方法について、いくつか研究がなされた。 情報を提供するグラフィックを使うためには、幾つかの要件が必要である:

  • 印刷は上質である
  • グラフィックはテキストと一致している(矛盾していない)
  • 一般的でない角度は避ける
  • 象徴的表現は避ける
  • 不要な細部は切り落とす
  • 絵同士の関係をチェックする(例えば、並んだ絵が虎と象)

注:

全ての指針は“芸術的な”さし絵には適用されない。

「わかりやすいことば」の本

「わかりやすいことば」の本とは
もともと分かりやすいことばで書かれたもの
すでに出版された本を分かりやすく書き直したもの
「わかりやすいことば」の本の出版範囲は
ノンフィクション
文学:フィクション、小説、詩、演劇を含む

翻案

翻案された「わかりやすいことば」の本は、原本から独立した解釈である。

翻案は
要約して含まれるべきテーマを選ぶ
テキストを「わかりやすいことば」に改訂する
翻案者は
「わかりやすいことば」の基本を覚えておく
印象や感情、原本の主な内容が読者に伝わるようにする

理想的には、「わかりやすいことば」の翻案は著者と翻案者の協力の成果である。

「わかりやすいことば」のノンフィクション作品― 作家のための指針(Pertti Rajalaペッティ・ラヤラ)

書き始める前に
題材の輪郭を描く、全体の概略を描く
核心に焦点を合わせる
テキストを書くときに
テキストをわかりやすく構成し、論理的に進める
詳細な記述が多すぎないようにする
生き生きとしたおもしろいテキスト、読者の意欲と興味を心に留めておく
日常生活に実在するものを選ぶ
テキストは以下によって改善される
個人的で主観的な方法で話題を取り上げる
異なる見方や取り上げ方を強調する
テキストの特質や対象となる読者を考慮する
以下のことを心に留めておく
ノンフィクションのテキストは高圧的で“教育的”である必要はない
説明を要するテキスト
グラフィックはノンフィクション作品に重要である
ユーモアや感動を忘れない

文学作品のなかの「わかりやすいことば」(ペッティ・ラヤラ)

文学作品では以下のようにすると良い
テーマを論理的に進め、言葉をわかりやすく組み立てる
詳細な記述が多すぎないようにする
生き生きとしたおもしろいテキスト、読者の意欲と興味を心に留めておく
登場人物の数を制限する
時と場面の変化をわかりやすく表わす
以下の場合に理解が高まる
登場人物を目立つように紹介し、簡単に見分けられるようにする
芸術的・情緒的コミュニケーションでは抽象的概念を多くしない
テキストの助けとなるイラストがある

「わかりやすいことば」の本の配布

  • 「わかりやすいことば」研究所は、最新の「わかりやすいことば」の本を直接供給する
  • 「わかりやすいことば」の本は本屋に特別注文できる
  • 出版社および特定の団体で「わかりやすいことば」の本を販売する
  • 図書館で「わかりやすいことば」の本を貸し出す

「わかりやすいことば」の本および図書館

多様な図書館には、いろいろな「わかりやすいことば」の本がある
通常「わかりやすいことば」の本棚を設ける
「わかりやすいことば」の本棚を通常見やすく表示する
探している本が見つからない場合いつでも助けが得られる

教育省の作業班

作業班
「わかりやすいことば」の本の作家、イラストレイターおよび出版社に助成金を出す
「わかりやすいことば」の本の研修、促進および調査研究を援助する
本のための「わかりやすいことば」のロゴマークを発行する

フィンランドの国家予算には、年間約25万FIMの「わかりやすいことば」の本のための助成金が含まれている。

「わかりやすいことば」研究所の諮問委員会に所属する人々だけでなく、様々な文学協会関係グループが作業班の一員となっている。

多用途の「わかりやすいことば」の本

「わかりやすいことば」の本はひとりで読むことが出来る。

「わかりやすいことば」の本はグループでも使うことが出来る。
議論のきっかけとして
感情を伝える手段として
読書経験のため
情報を伝えるため

「わかりやすいことば」グループ

「わかりやすいことば」の本と雑誌はグループで読み議論される。

グループ活動の主要な目的は、勉強することではなく、グループメンバーの相互作用を援助することである。指導者の役割は、グループ活動および相互作用を教えることである。

「わかりやすいことば」の読書材料は議論の情報源であり、非識字者のグループメンバーにも知識と洞察力をもたらす。

1995年から1997年の間、「わかりやすいことば」プロジェクトにより知的障害者および高齢者のためのグループ活動が推進された。

スウェーデンの読みやすい本

スウェーデンは読みやすい本の出版において先駆者である
1960年代には最初の出版活動を始めていた
独立した財団(LL-Stiftelsen)が出版に専念する
市場での販売:エレンブッククラブ(年間に4回発行)