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選択肢

皆さんは、プロジェクトに影響を与える多数の決断を下さなければなりません。
大規模にするのか、小規模にするのか、すべて皆さんの選択にかかっています。
当然、途中で変更することは可能ですが、選択のプロセスが重要なのです。
品質は、新聞の規模とは何の関係もなく、どちらかといえば、意図的な選択の問題です。
品質が、皆さんが望むことそのものを明確にし、それを固守し続けます。
一度選択し、何をするか、そしてどのようにするかをはっきりさせれば、製品の品質を維持することはきわめて容易にできます。品質とは、一貫性のある選択をし、それを固守することです。

ジャーナリストとしての選択:

まずは、ジャーナリストとして望むことと目標とを決定しなければなりません。

  • 何らかの共通点を持つ人々とのコミュニケーション手段としての新聞。組織やグループの会員が対象として考えられるでしょう。会議や決定事項、実績、手続き、お互いに関心がある問題に関するニュースなどについての情報を、インタビューや特集記事と合わせて提供してもよいのです。これは、基本的に、読者自身のための、読者自身に関する新聞となるでしょう。その場合、プロのジャーナリストたちの手を借りなくても、質の高い製品を製作することができます。
  • 不足を補うニュースダイジェスト。目的は、何らかの理由で他のニュースソースを持たない読者に情報を提供することです。それは、地理的、技術的、政治的、社会的、民族的、文化的理由によるかもしれませんし、ターゲットグループが読みの問題や読字障害を抱える人々であるためかもしれません。どのニュースソースを使用するかはっきりしている場合は、ニュースの要約を製作することは、非常に簡単なビジネスです。一般に著作権法では、新聞記事やテレビのレポートを、誰の権利も侵害することのないソースとして使用して、あるテーマに関する短い新聞記事をまとめる自由を認めています。ダイジェストでは、各記事の最後にニュースソースを印刷した方がよいでしょう。この種の仕事では、ジャーナリストとしての経験は、編集、ニュースの評価、ニュースソースの信頼性の評価のいずれにおいても役立ちます。
  • 前述のターゲットグループすべてを対象とした全国紙や地方紙。このような新聞の目的は、むしろ民主主義的な権利の格差を埋めることにあります。自分が理解できる新聞を持つという権利は、誰にでも等しく認められるべきです。この場合、大手の全国紙とほとんど同じですが、特定のターゲットグループのニーズに合わせて改良された新聞を製作するという難しい課題に直面することになります。それには、広範囲にわたるテーマを網羅し、利用可能なあらゆるジャーナリズムの手段を使用しなければなりません。また、おそらくは不可能なプロジェクトであるこの野望を実現するためには、経験豊富なジャーナリストが必要となるでしょう。
  • 現在起こっている出来事について分析し、社会の不正を徹底的に調査し、調査報道に時間を割くことを目的とする場合もあるでしょう。それは時間のかかる仕事で、非常に有能で、熱心なレポーターを必要とします。読字障害がある人々の中から、そのような新聞の読者を得ることは難しいかもしれません。しかし、もし少しでも熱心なスタッフがおり、低コストのアプローチをとり、1か月に1度の発行にするなら、それは可能です。
  • ある特定の問題や集団、政治問題などに世間の注目を集め、政治家や一般大衆の意識を高めることが目的の場合もあるでしょう。これは、ほとんどスタッフがいなくてもできることです。記事は、パーソナルコラム、レポート、政治声明、読者からの投書などの形で掲載できますし、ニュース資料は、一般大衆の見解を変えようとする新聞社の意見や野心を共有する人々に書いてもらえるからです。

ニュースソース:

ニュースソースの選択は、本質的に、ジャーナリストとして望むことと目的の選択であるといえます。それには当然、資金も一部関係していますが、時事問題に関する調査記事の発行が、二次的ソースに基づく短いニュース記事よりも、必ずしも高くつくわけではありません。すべての調査とインタビューを自分自身でこなすことを選択すれば、当然、労力も時間も消費する仕事となります。その場合、低コストを維持するためにごく自然に行えることは、新聞を月刊で発行することで、これによって製作と配布にかかるコストを最小限にまで削減することができます。フリーランスの記事や写真、あるいは通信社の記事に対する版権を買う必要はありません。

一方、読者に常にニュースを提供することが目的なら、コスト効率を高くする方法としては、大手通信社の記事を毎日入手することがあげられます。基本的に、調査やインタビュー、およびデータを得るためにお金を支払うことで、多くの時間を節約し、頻繁に、おそらくは毎日、発行することが可能になります。もう一つの可能性としては、当然、他のニュースソースからのニュース資料を編集することがあげられますが、他社の著作権を侵害しないよう、細心の注意を払う必要があります。

別の新聞社と緊密に連携をとりつつ活動すれば、あるいは他のニュースメディア組織との交渉に時間をかければ、ニュース資料や調査資料を安く入手することに同意を得られるかもしれません。結局のところ、読みやすい新聞は、大手新聞の競争相手ではないのですから。

当然のことですが、やってはいけないことは、著作権法全般を無視することです。しばらくの間は発見されずに済むかもしれませんが、長期的に見れば、それはよい方策とは言えず、新聞業界における評判と読者の評判の両方を損なうことになるでしょう。

ターゲットグループ:

読みやすい新聞を発行する場合、それは、何らかの理由で他の新聞を読むことができない、あるいは読まない人々を対象として書くことを選ぶということであるのは明らかです。ヨーロッパにおける読みやすい新聞は、知的障害者から学童、移民、十分な教育を受けていない人々に至るまで、幅広いターゲットグループを対象としていると考えられます。

これらすべてのターゲットグループの興味を引き付けることができる新聞を編集することは、可能であるように思われますが、それは決して簡単な仕事ではありませんし、ましてや好ましい選択でもありません。読者の好みや能力、そして関心が、お互いにぶつかりあってしまう場合が多いことに、皆さんはきっと気付くでしょう。

例えば:

知的な困難を抱えている人々は、抽象的なことや、自分たちがじかにかかわっている世界以外のことについては、限られた知識しか持っていません。ですから、ノルウェーが国であり、ベルリンが都市であり、イラク戦争は近所で起こっている戦いではないということ、また、選挙とは人々が政治家を選ぶために投票することである、などと、説明しなければならないのです。一方で、ディスレクシアの読者は、そのような方法で書かれたテキストのせいで、興味を失ってしまうことがよくあります。

失語症の高齢者は、過去のことについて読むとき心が休まり、より現代的なトピックについて読むとき、疎外感を味わうことがよくあります。学童は、過去の様子や出来事についての記事は、さっぱりわかりませんが、目新しい、今風のことについては、何にでもすぐに興味を持ちます。

大卒の移民は、複雑な政治の出来事を理解するのには少しも困りませんが、国民の祝日や古くからの信仰について一つ取り上げただけで、何のことかわからなくなってしまいます。

わかりやすく、読みやすい新聞記事を必要とするすべての人々を対象とした新聞を発行することは、実は可能なのです。しかし、その新聞は、ジャーナリズムの世界の鋭さを一部失ってしまうので、その点について、ある程度妥協しなければならないというリスクを常に負っているわけです。理想は、それぞれのターゲットグループが独自の新聞を持つことですが、それはとても実現できそうにありません。そこで、前述のターゲットグループから、同じようなニーズや能力、関心を持つグループを一つか二つ選び、それだけを対象とすることによって、おそらくジャーナリズム的には最も適切な新聞を製作できると思われます。しかし、もしターゲットグループすべてを対象として選べば、(理論上では)人口の25%が読者となる可能性があります。

財政

財政面で選択しなければならないことは明らかです。とは言うものの、さまざまな財政的アプローチに関するアドバイスを2、3あげておきます。

  • 第一に:利益を生むことは目的の一つですか? 利益を、新聞の発展、事業の長期的な安泰、個人的な収入の増加のための手段と考えるなら、活動のすべてにおいて、商業的アプローチを取る必要があります。すべての事業は財政的な面を備えており、何らかの見返りを得ることなしに、すべてを無料で提供する余裕はありません。
  • オーナーと潜在的な投資家。 報道の独立性が重要であれば、誰が事業に資金を投資するかについて制限が生じます。投資者の基本方針が、新聞発行者側の独自の目的と相容れない場合もありますし、あるいは、少なくとも一般とは見解を異にする場合もあります。
  • 広告を財政手段と考える場合;十分な読者はいますか?そして営利企業は、新聞のターゲットグループを獲得するためにお金を出す価値があると考えそうですか? もしそうでないなら、広告を入れることは、まったくもって時間とお金の無駄に過ぎません。広告を出す側は常に最高の品質を期待しますし、もしそれが得られないなら補償を要求してくるでしょう。印刷会社が小さなミスを一つでも犯せば、補償金を支払わなければならないのです。
  • ともに働く同僚として、献身的なアマチュアを採用しますか?それともプロを採用しますか? これは全面的に意見が分かれる問題ですが、プロを採用すれば、財政面に大きな影響を与えるでしょう。
  • 全国紙?地方紙?それとも地元の新聞? 多くの点で、地元で活動する方が簡単であり、コスト効率も高くなるでしょう。
  • 新たな製品を開発しますか?それとも従来のフォーマットを固守しますか? これは選択の問題です。これまで通りにすることが、可能な方法の中で最も悪いわけではありません。
  • すべてを編集事務所内で行いますか?それとも購読者の管理やマーケティングなどを専門家に任せますか? 長期的に見れば、購読者の管理は専門家のサービスに任せた方が安くつくかもしれません。購読者が何千人もいる場合、購読者の住所や支払いの問題を解決するためにすべての時間を費やす危険があります。
  • マーケティング活動をしますか?それとも口コミに頼りますか? これは、見解、目的、目標および経済力によって違ってきます。

配布

下記の選択肢のほとんどは自明のことです。

  • 会議、セミナー、路上などで、パンフレットとして配布
  • 購読者に郵送で配布
  • 別の出版物(機関誌、地域の新聞、あるいは類似の製品)と一緒に配布
  • インターネットあるいは電子メールで配信
  • 新聞スタンドに配布
  • 配布は一切せず、買いに来てもらう。
  • 他の新聞社が印刷して読者に配布できるよう、すぐ印刷できる状態で配布