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読みやすい新聞のマーケティング方法について

本章では、スウェーデンにおける8 SIDORの経験から、およそ7,000人の購読者と、13,000部の週刊発行部数をどのようにして獲得したかについて解説します。本章は、どのマーケティングの教科書でも見つけられる、新製品のマーケティング方法についての基本的な知識を扱うものではありません。ただし、マーケティングの教科書を読むことは、皆さんに強くお勧めします。

当然のことですが、新聞のマーケティングを忘れてはなりません。新聞の製作にあまりに力を入れすぎたため、マーケティングの時間がほとんど、あるいはまったく無くないというのは、非常にありがちなことです。しかし、マーケティングをしないということは、読者が全くいない(あるいは非常に少ない)ということを意味し、それは新聞の製作を、無利益なものにするのは言うまでもなく、何か無意味なものにまでしてしまいます。

購読者がすべてではない

購読料を支払う購読者に販売する以外にも、新聞発行のための資金を調達する方法はあります。社会や組織に、事業の全体あるいは一部の資金を負担してもらい、そのメンバーに新聞を配布することも考えられます。政府の補助金があれば、基本的な財政は保障されるでしょう。(8 SIDORの収入の50%は政府の補助金です。)複数の財源に、新聞のための資金提供を働き掛け、購読者や広告主を募り、政府からの補助金を確保し、大手機関と提携するのもよい考えです。しかし、本章の残りの部分では、購読者を通じての資金調達についてご紹介します。

ニーズvs.購入

読みやすい新聞を必要とするグループをリストアップするのは、きわめて簡単で、知的障害者、失語症患者、最近入国した移民、ディスレクシアの人々などがあげられます。皆さんは、最もニーズの高い人々が、読みやすい新聞の購読を始めるだろうと考えるかもしれませんが、おそらくそれはないでしょう。8 SIDORの発行は、もともと知的障害者のために始められました。確固たる決意を持ったFUB(スウェーデン全国知的障害者協会)のロビー活動により、政府からの資金を獲得しましたが、23年たった現在でも、購読者のうち、知的障害者はたった2%-3%にすぎません。実際、自分自身のために8 SIDORを購読している人々は、購読者の10%にも満たないのです。残りの人たちは、仕事の一部として8 SIDORを購読しており、この人たちを仲介者と呼びたいと思います。仲介者には、図書館司書や教師、デイセンターで働いている人々などがいます。

読みやすい資料を必要としている人たちは、なぜ読みやすい新聞を購読しないのでしょうか?簡単に答えれば、このような人たちは読みの問題を抱えており、読むことに慣れていないため、読むことを避けるから、あるいは、そこまではしなくても、少なくとも、720スウェーデンクローネを支払って8 SIDORを購読しようとは思わないからです。

一方、仲介者は、自分の仕事に役立つツールを必要としていますから、そのためにお金を支払う意思があるのです。生徒に読むことを学ばせるのが教師の仕事であり、来所者に、時事問題について関心を持ってもらうことが、デイセンターで働く人の仕事だからです。

8 SIDOR購読者のおもな内訳(2005年)

  • 学校(7歳から18歳までの青少年対象) 65%
  • 知的障害者のための作業所、グループホーム、学校 11%
  • 成人学習者のための学校  6%
  • 図書館  3%
  • その他  6%
  • 個人購読者  9%

ご覧のように、購読者の中で、教育部門がはるかに大きな割合を占めています。

結論として、読みやすい新聞を仕事に役立つツールとして必要とし、予算がある人々を対象とするとよいでしょう。このような人々を通じて、読みやすい新聞を必要としている人々に手を差し伸べられるでしょう。

マーケティング予算

読みやすい新聞の購読に、最も意欲を示すグループとコンタクトを取る最善の方法は、国により異なります。しかし、一般的なアドバイスとしては、お金のかかる広告や一般の展示会は避け、ターゲットグループだけと出会えるような場を見つけることがあげられます。

例えば、さまざまな指導者のグループが、「成人学習者指導者年次総会」などの全国的な会議を開いています。このような会議では、会議の内容と関連した小さな展示会が開かれることがよくあります。そのような展示会では、ターゲットグループの中でも、何百人ものやる気のあるメンバーとじかに接する機会が、比較的低コストで得られます。

さまざまな指導者のメーリングリストはありますか?読みやすい新聞に関する情報を、そのメーリングリストで配信するよう手配できますか?何か役に立つコネはありますか?

読みの問題と、その解決策は、大変興味深いトピックですから、読みやすさの重要性に関する短期セミナーを、読みやすい新聞にかかわるおもだった人々のために開くのもよいでしょう。