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図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン

2. わかりやすい資料の3つの製作プロセス

「わかりやすい」資料の製作プロセスには、次の3つの場合が考えられる。

① すでにある出版物を、わかりやすくする場合

原作を理解するために必要な生活年齢相当の読書能力と、対象とする読者が持っている読書能力とのレベルの違いに配慮して、必要に応じて図版の追加や文章のリライト、文字の大きさと書体、行間およびカラーデザインの調整等を行う。紙の資料あるいはDAISYやEPUB形式のアクセシブルなマルチメディア資料を製作する。DAISYとEPUBについては、6章で詳しく解説する。

② わかりやすい資料をオリジナル出版する場合

生活年齢や読む人の読書能力レベルに沿って、内容の構成、文章構造、語彙、そして、読みやすさを重視したレイアウトなどを考慮して作成された資料は読みやすくわかりやすい。

③ マルチメディア版も含めてオリジナル出版する場合

わかりやすい資料を出版する場合は、読み上げ等の紙の出版物では実現できない支援を必要とする人々への配慮も要請される。出版の企画の段階から紙による出版とマルチメディア版の両方を出版するワークフローを工夫しておけば、マルチメディア版も含むわかりやすい資料を最小のコストで提供することが可能になる。

LLブックを出版してきたスウェーデンにおいても、上記の2つの異なる形態の出版を想定している。前者は、ベストセラーなどの今まさに一般に読まれている出版物を読みたいという希望に沿った代替出版4)であり、後者は普通の出版の仕方では読んで理解することが困難な人々を主たる対象にしたオリジナル出版である。

現在の日本の著作権法は、知的障害を含む幅広い障害を理由として著作物へのアクセスが困難な人々のために著作権を制限して、図書館等の団体がその人々のために無許諾で一部または全部の代替資料を製作し、図書館のネットワークを通じて全国的に提供することを認めている。この場合、図書館等が製作する代替資料は、障害を理由としてオリジナルの出版物を自分で読み理解することが困難な人々にのみ提供できる。もちろん著作権者との契約に基づいて、障害の有無と関係なく、外国人等を含むすべてのわかりやすい資料を必要とする人々を対象に行われる代替出版の推進も重要である。


4) 原本を変換して出版形式を変えることで、たとえば点字、録音図書、リライトした形式で出版すること