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図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン

10. 課題と展望

本ガイドラインの今後の課題と展望について以下にまとめる。

10.1. 読書のユニバーサルデザイン

読書における「わかりやすさ」は、自然科学および人文社会科学の知識と、社会生活に必要なスキルをわかりやすく学ぶための読書にも及ぶ。アクセシビリティとわかりやすさに配慮した電子出版物は、読むことに障害がある人々のみでなく、ほとんどすべての人に歓迎される。特に、防災や保健衛生、防犯、交通、商品情報など、すべての人々を対象に無償で提供される資料は、最初からアクセシビリティとわかりやすさに配慮して製作することを図書館として推奨し、図書館のネットワークのアクセスポイントを通じて積極的に提供されるべきである。そうしておけば、改訂版の発行もサーバーに置くコンテンツの更新のみで済み、最小のコストで常に最新版の情報を提供できる。

著作権を制限して図書館等が製作して提供する代替資料の提供にも、このような図書館のネットワークを通じた提供態勢を構築し、著作権法の制約に留意しつつ、先に述べた公的情報のアクセスポイントと共に、わかりやすい資料を必要とする利用者にサービスを提供することが望まれる。

10.2 今後の課題

これまでに蓄積されてきた紙の出版における「わかりやすさ」を実現する手法と、日進月歩の電子的技術を統合すると大きな可能性が開けてくることは誰もが認める。図書館の環境が整備されて、わかりやすい資料を求める利用者も整備された読書環境を満喫できるようになる日を現実のものとするためには、まだ確認すべき課題は多い。なぜならば、わかりやすい資料を必要とする利用者の多くは、どうすれば自分のニーズを満たすことができるかをまだ知らない。実際に障壁のない読書を体験し、それが可能であることがわかって初めて、その解決策を手に入れたいという要求が利用者から出てくる。

すでに利用者によって有効性が確認されている成功事例を広めると共に、アクセシブルでわかりやすい資料の製作から提供までの全過程のコスト分析を含む、持続的なエコシステム(持続する仕組み)としてのわかりやすい資料の製作と提供に関する研究開発を進めることが重要である。