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第1回公共図書館司書国際会議
「障害のある人々へのサービス提供における図書館の役割」
フィリピン国立図書館後援
IFLA特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会(LSN)
ナンシー・ボルト(Nancy Bolt)による報告

*掲載者注

2014年3月19日から21日にかけてフィリピーン・セブ−で、図書館および情報サービス国内委員会とフィリピーン国会図書館で構成するフィリピーン文化芸術委員会が、「第一回公共図書館員の国際会議」を開催しました。
この会議にIFLA/LSNのMid-Year Meeting に出席をした常任委員会委員が招待されました。
この報告は、IFLA/LSN委員のナンシー・ボルト氏が、常任委員会に提出をしたものです。


私はおもにIFLA関連の会議に参加しているが、このたび、「障害のある人々へのサービス提供における図書館の役割」をテーマとする第1回公共図書館司書国際会議に出席する機会を得た。発言者は図書館司書に限定されず、広範囲にわたっており、特別なニーズのある人々、障害のある人々、あるいは、異なる能力を持つ人々などと呼ばれるターゲットグループに対する図書館サービスについて、体験談や情報が共有された。

会議の目的は以下の4点にまとめられる。

  • さまざまな障害とその特徴を定義すること
  • 各国の当事者団体や障害者支援団体を参加者に紹介すること
  • 障害のある人々への対処方法について、認識の向上を図ること
  • フィリピンおよび世界各地の障害のある人々に、図書館がどのようにサービスを提供しているか、事例を紹介すること

会議には約250名が出席した。そのほとんどが小規模図書館勤務で、現時点では、障害のある人々を対象とした特別なサービスを提供していないようであった。会議全体が学びの場となった。

事務局(図書館員)

会議は、開催地であるセブ市の副知事による発表で幕を開けた。副知事には非常に感銘を受けた。事前に十分な状況説明を受けていたのだろう。よくある短い歓迎の辞だけで終えるのではなく、IFLAのガイドラインについて語り、その上、障害のある人々に対する地域の図書館サービスについても、豊富な知識を持って語ったのである。副知事は、セブ市には障害のある人が約12,000人いると推定し、図書館に対し、「障害者用トイレ」の設置など、館内をアクセシブルにするための資金調達を目的として官僚にアプローチする際には、2006年の国連障害者権利条約(UNCRPD)を利用するよう提言した。彼は図書館にとって、たのもしい味方である。

発言者の多くは、何らかの障害のある人々に言及する最善の方法に焦点を合わせ、常に、障害ではなく人を重視しなければならないと強調した。ある発言者の言葉を借りれば、障害名で言及するのではなく、障害のある人として言及する、ということだ。したがって、決して「読字障害者」とは言わず、読字障害のある人と言う。囚人と言わず、刑務所に入っている人、あるいは、拘置中の人と言う。ろう者ではなく、耳が聞こえない人、または、聴覚障害のある人と言う。普段の会話の中で、言葉に注意を払っていないことがどれほど多いかに気づかされ、目からうろこが落ちた。

今回取り上げられた内容が、いくつか心に残っている。全国障害者問題協議会(NCDA)のネリア・デ・ジーザス(Nelia De Jesus)は、まず、国連障害者権利条約の以下の文言を引用した。

締約国は、障害のある人が自立して生活すること及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にするため、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、都市及び農村の双方において、物理的環境、情報通信(情報通信技術及び情報通信システムを含む。)、並びに公衆に開かれ又は提供される他の施設及びサービスにアクセスすることを確保するための適切な措置をとる。

また、フィリピン全国障害者問題協議会のイニシアティブについて報告があった。

  • アクセシブルなウェブサイトの表彰と認定
  • 障害インクルーシブな情報、研修および就労の機会に関する政策および計画の策定
  • SMARTの原則(具体的、計測可能、達成可能、成果を重視、明確な期限設定)に従った計画、意思決定、モニタリングおよび評価、災害リスク軽減・管理(DRRM)のための警報/発表、訓練および活動の選択、資源動員を目的とした、障害に関するデータベースの開発
  • 公共/学校図書館における障害セクションの開発と周知
  • 地域パートナーの強化のための資源創出に向けた、地域/国際ネットワークの構築
  • SMARTの原則に従ったアドボカシー推進のための資料(教育用の手話のCD、読み方の教材、ICT機器のリストなど)の作成と配布

さらに、現在直面している課題が示された。

  • 障害のある人々のニーズに対する、図書館職員の配慮の欠如
  • アクセシブルではない建物、学校および施設
  • 関連制度および技術に関する知識と情報の欠如

障害のある人々にサービスを提供する図書館のために、以下の測定可能な指標が提案された。

  • 国際的に認められているアクセシビリティ基準を満たしている、アクセシブルかつ利用可能な公的文書およびウェブサイトの割合
  • 支援機器または製品を必要としている障害のある人々の割合と、実際にそれらを所有している人々の割合
  • アクセシブルな図書館の割合(入館および図書館の全面的な利用の両方がアクセシブルな図書館)

国立図書館で盲人図書館のマネージャーを務めているマリア・ヴィルヴァー(Maria Vilvar)からは、同図書館が提供するサービスについて話があったが、それは、アメリカ合衆国のほとんどの州立図書館で提供されているサービスと非常によく似ている。ただし、フィリピンではアメリカ合衆国と比べて、いまだに点字の方が広く普及している。おそらく、この国の島々では相対的に技術が不足しているためであろう。

フィリピン総合病院リハビリテーション科の医師、ジョセフィーヌ・ロブレド-ブンドック(Josephine Robredo-Bundoc)博士は、木曜日の最初のセッションを担当し、手話の言葉に加えて、手話の歌まで教えてくれた。今、私は手話のアルファベットが描かれたTシャツを持っている。博士は、それぞれの障害について、その特徴と、その障害のある人との最も好ましいコミュニケーション方法を説明してくれた。

盲ろうの子どもを持つエドガルド・ガルシア(Edgardo Garcia)は、フィリピンにおける障害のある人々の状況について、障害のある子どもが学校で遭遇する困難と、障害のある子どもにサービスを提供する際に学校が直面する課題(未登録、特別なサービスを提供する費用、通学の困難、社会参加の困難、アクセシブルな施設の欠如、教員の研修や理解の欠如、特別な学習ツールや機器の欠如、生徒の留年など)を中心に論じた。また、障害のある人々がサービスを受ける権利を保障するフィリピンの法律と、それらの法律のうち、フィリピン社会で認められていない、あるいは実施されていないものがいくつあるかを説明した。

IFLA特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会(LSN)の野村美佐子は、「ディスレクシアおよびその他の読字障害のある子どものための図書館サービスの促進」について発表した。IFLAのLSNの歴史と活動内容の紹介に続き、ディスレクシアの解説が行われた。ディスレクシアの定義、ディスレクシアの人々を対象とした図書館サービスの事例紹介、印刷されたテキストと音声を伴い、読み上げと同時にテキストがハイライトされるマルチメディアDAISY図書の説明があった。最後に、LSNによって新たに作成された『ディスレクシアのための図書館サービスのガイドライン』の解説と、フランスのリヨンで開催予定のIFLA年次大会におけるLSNのプログラムの予告が行われた。

私は、「特別なニーズのある人々にサービスを提供するためのコミュニティ機関との協力」について、特に、LSNのどのガイドラインが、どのようにコミュニティ機関との協力を呼びかけているか、おもにアメリカ合衆国の図書館が、障害のある人々にサービスを提供するために、どのようにコミュニティ機関と協力しているか、事例紹介を中心に話をした。

日本からフィリピンを訪れ、地震で被害を受けた図書館に協力した経験のある河村宏は、「持続可能でインクルーシブなコミュニティ開発における図書館の役割」について語った。発表では3つのテーマが取り上げられた。すなわち、地震や台風などの災害への備えと被災者支援における図書館の役割、DAISY技術を利用している図書館のネットワーク、そして、プリントディスアビリティのある人々のために、さらに多くの資料をアクセシブルかつ利用可能にする、最新のWIPO条約である。

プレゼンテーションを行う河村宏氏

その晩は、晩餐会と文化の夕べで締めくくられた。地域の図書館団体から多くの人が参加し、民族衣装を着てパフォーマンスを披露してくれた。言うまでもなく、素晴らしいひと時であった。

図書館員によるダンス

3月21日(金)は、フィリピン図書館司書協会(PLAI)のエリザベス・ペラレホ(Elizabeth Peralejo)会長の発表から始まった。ペラレホ会長には自閉症の息子がおり、この診断を受けた後、彼女は障害のある人々に関する情報を熱心に探した。会長は早期介入の必要性を強く訴え、障害のある人々の多くが低所得世帯出身であり、早期介入が行われていないことを指摘した。この対策の一つとして、図書館が親に正確な情報を提供することが挙げられる。また、会長は10種類の障害を定義し、障害のある人々に対する図書館サービスの事例と、広範囲にわたる配慮と支援技術も紹介した。

結論

全体として、会議では、障害に関する幅広い情報、障害の定義、障害のある人々に対する図書館による支援方法が示された。また、実際にサービスを提供している図書館の事例も紹介された。最後に、障害のある人々のニーズと、彼らにサービスを提供する図書館の義務およびその機会に対する認識の向上が図られた。

発表内容はすべて、http://web.nlp.gov.ph/nlp/?q=node/8424で入手可能。

関係者と講師