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1970年から1979年まで

この10年間に、小分科会は病院図書館に関する研究機関を初めて組織し、これに出資した。また3つ目となる病院図書館の基準と、読書補助具の要覧、画期的な文献目録、そして病院図書館サービスに関する各国の見解を発表した。さらに、議事録に視覚障害者図書館に関する記述を盛り込み、その後このような図書館の認知度がIFLA内部で高まるよう尽力し、対象の拡大を反映するために名称を変更し、知的障害児に対する図書館サービスにも活動を拡大した。

この種の機関としては初めての例と考えられる病院図書館国際研究所(International Institute in Hospital Librarianship)は、図書館学校(School of Librarianship)と北ロンドンポリテクニック(Polytechnic of North London)の共同出資により設立された。ロンドンで開催された1週間にわたるプログラムには、3大陸から参加者が集まった。(64)

『病院図書館の基準(Standards for hospital libraries)』(65) は1973年に発表され、入院患者だけでなく、高齢者、家から外出できない人々、そして身体障害者と知的障害者に対する図書館サービスに関する勧告が盛り込まれた。(66)基準そのものの価値以外にも、それは小分科会の新たな使命を反映し、語っている点で重要であった。

待望の『読書補助具国際要覧(International Directory of Technical Reading Aids)』は、その後まもなく完成した。障害者向けに製作された読書補助具に関するアンケートからまとめられたこの要覧には、さまざまな製品の最新情報が掲載された。(67)

小分科会による注釈が付いた文献目録、『病院・福祉図書館サービス:国際文献目録(Hospital and welfare library services: an international bibliography)』 は、1977年にようやく出版された。収録された2,164文献は、1863年から1972年までに出版されたもので、「あらゆるタイプの病院の患者、家から外出できない人、高齢者、身体障害者(視覚障害者、聴覚障害者など)と、知的障害者…に対し、病院内、地域内を問わず提供される図書館サービスの局面」を紹介していた。(68)

編集された『各国の見解(National Statements)』は、数ヶ国における、入院患者やその他の介護施設入所者、障害者に対する図書館サービスの状況を反映していた。小分科会委員長によって編集されたこの資料は、1974年から1976年までを対象とし、各国の人口、病床率、関連法、図書館サービス団体および蔵書などの情報を掲載していた。(69)

1970年代に議会図書館(Library of Congress)の視覚障害者・身体障害者部(Division for the Blind and Physically Handicapped)(アメリカ合衆国)が小分科会に対し、IFLA内に「視覚障害者図書館の国際的な基盤」を設立するよう支援を求めた際、視覚障害者ユーザーのニーズへの関心は、さらに明確な形となった。最初の反応として、小分科会はそのような「基盤」に対する支援が有望かどうかを決定するために、国際調査を実施した。それが有望であるという結果を得て、1977年のIFLA年次大会(ブリュッセル)で、視覚障害者図書館会議を開催し、その後専門理事会(Professional Board)に対し、そのようなユーザーのための作業部会を設立すべきであるという勧告を提出した。 (70)理事会はこれを承認し、新たに結成された視覚障害者作業部会(71)はラウンドテーブルとなり、その後、視覚障害者図書館分科会(Libraries for the Blind)となった。(72)2008年にその名称は、「印刷物を読めない障害がある人々のための図書館サービス分科会(Libraries Serving Persons with Print Disabilities)」に変更された。

1976年、IFLAは新規約を採択したが、その際に部会(Division)と分科会(Section)が設立された。その後、病院図書館小分科会は、新たに創設された、「一般市民にサービスを提供する図書館部会(Division of Libraries Serving the General Public)」に所属する分科会となった。同時にそれは、「入院患者および障害のある読者に対する図書館サービス分科会(Section on Library Services to Hospital Patients and Handicapped Readers)」という新たな名称を得た。 新名称は、分科会の活動をより具体的に反映するだけでなく、生物および医学図書館分科会(Biological and Medical Sciences Libraries Section)の設立とともに、この分科会が病院内での専門的な医学図書館サービスを対象とするか否かに関する混乱を終結させることになるものと期待された。分科会の新たな使命は、以下の通りであった。

  • 病院やその類似施設の職員、患者および住人に対する、一般的な図書館サービスに関する問題の検討
  • 通常の公共図書館サービスを利用できない、家から外出できない人や障害のある読者に対する図書館サービスに関する問題の検討

最後になるが、小分科会は、障害のあるユーザーをさらに支援するために、ユネスコ公共図書館宣言(UNESCO’s Public Library Manifesto)改訂版に盛り込むべく、障害のある読者に対する図書館サービスに関する声明を作成した。 また、児童図書館分科会(Children’s Section)との合同会議を開催し、知的障害の基準を拡大し、そのような診断を受けた児童に適した図書のリストを掲載した出版物を共同制作することで合意を得た。 これは1984年に出版され、IFLA初の専門報告書となった。