音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

背景

LSNの前身である病院図書館小委員会は、1931年8月29日に設立された。 (2)これはIFLA自体の設立からわずか4年後のことである。(3)病院図書館小委員会は、IFLAが結成した7番目の小委員会で、特別なユーザーグループに対する図書館サービスに、初めて焦点を絞ったものであった。(4)

小委員会は、国際的な病院図書館団体への期待が大いに膨らんだ時代に結成された。この時代、入院患者に対する図書館サービスへの関心の高まりが認められるようになっていたが、(5)現象は一つには、第一次世界大戦中および大戦後、入院中の軍人に対し、本と読書が好ましい影響を与えたことを受けて、ブームとなったのである。(6)偶然にも、1800年代後期に始まった多国的な取り組みの結果、時代はさらに図書館の組織的な国際協力の幕開けを告げ、その中心となったのがIFLAの設立だった。(7)

小委員会の結成は、当時、英国赤十字社・聖ヨハネ騎士団病院図書館(British Red Cross and Order of St. John Hospital Library)の運営責任者であったマージョリー・E・ロバーツ(Marjorie E. Roberts)によって提案された。(8)ロバーツは、政治的洞察力のあるエネルギッシュな女性で、入院患者に図書館サービスを提供する必要性について、深い情熱を抱いていた。病院内での図書館活動には、特に読書が治療手段として利用される際には、独自の専門知識と技術が必要であると認識していたロバーツは、この分野における特別な研修の必要性も熱心に提唱した。そして最終的に、患者向けの図書館サービスは、国によって運営方法が大きく異なる場合が多いことを知り、さまざまな方法を研究し、アイディアを交換できる国際会議に価値を見出すに至った。

ロバーツの提案をさらに推し進めたのは、1930年にケンブリッジで開催された(英国)図書館協会(Library Association)会議であった。患者向けの図書館サービスに関する協会初の会議がそこで開かれたのである。(9)そしてロバーツを主任幹事とし 、(10)デンマーク、イギリス(UK)およびアメリカ合衆国(US)における活動の説明がなされた。(11)これに続く会議参加者による非公式会談では、ドイツおよびスウェーデンにおける患者図書館サービスの再検討が行われ、公式会議と合わせて、多国間協力がもたらす恩恵を、参加者は感じたようである。討議終了時には、国際同盟を結成する提案が出された。(12)ロバーツがのちに記したように、それは「国際的な情報収集と意見交換」のニーズを満たすものとなる。(13)

IFLAとの連携を進めることを決めたのが、ロバーツなのか、あるいは参加者全体なのかは定かではないが、いずれにせよ、IFLAという組織が完璧な場であると思われたのは間違いない。IFLAは国際組織であり、それゆえ、既存の病院図書館サービスへのルートを広く提供し、またそのようなサービスがまったく存在しないところでは、サービスを促進することができた。また、国によっては患者に対する図書館サービスに地方自治体の図書館が責任を負っており、IFLAとの連携は、そのような図書館と連絡を取り合う効果的な手段でもあった。そして最後に、IFLAには専門教育小委員会があり、おそらくロバーツにとってはこれが特に重要であった。