ディスレクシア及びこれに合併する特異な学習困難
IFLA(国際図書館連盟)年次大会2012
印刷物を読むことに障害がある人々のための図書館分科会(LPD)
プレカンファレンス"Let's Read! Reading and Print Disabilities in Young People"
2012年8月8~9日 タリン(エストニア)
エディンバラ大学 パメラ・デポニオ
発表者の紹介と抄録
パメラ・デポニオ(Pamela Deponio)
パメラ・デポニオは、小学校教師として就職後、学習支援に携わるようになった。識字能力の獲得に困難があると思われる生徒に特に関心を持ち、エディンバラ大学の教育学修士課程で特異な学習困難について学び、特殊教育のポストグラデュエイトディプロマを取得するに至った。
現在は、エディンバラ大学モレーハウス教育学部講師で、インクルーシブ教育と特異な学習困難について学ぶ教育学修士課程の教務主任を務めている。
パメラの最近の活動は、インクルージョンと特異な学習困難に対する教師の理解を支援する、スコットランド政府出資によるプロジェクト(DVD及びウェブサイト)が中心となっている。
パメラはごく最近、「GATE(幼稚園児及び小学校低学年児童のディスレクシア現象の理解)」と称する欧州(コメニウス)プロジェクトを完了した。このプロジェクトは、欧州六カ国(ブルガリア、イタリア、ルクセンブルグ、スコットランド、スペイン及びトルコ)の各機関の連携により実施された。
パメラは現在、「ディスレクシア対応ツールキット(Addressing Dyslexia Toolkit)」という、ディスレクシアの学習者の認定と支援にかかわる教師に役立つウェブサイトの開発に取り組んでいる。
DVD(スコットランドのすべての学校に配布)
『私も入れて‐ディスレクシアへの対応(Count Me In- Responding to Dyslexia)』(2007年):プロジェクトチームメンバー
『移行期のディスレクシア(Dyslexia at Transition)』(2007年):プロジェクトリーダー
ウェブサイト
GATEプロジェクト
http://www.gateproject.eu/
ディスレクシア対応ツールキット(2012年9月から利用可能)
http://www.addressingdyslexia.org/
インクルージョンの枠組み(Framework for Inclusion)
http://www.frameworkforinclusion.org/
ディスレクシア及びこれに合併する特異な学習困難
「特異な学習困難」とは、児童の学習能力において、高い能力を示す分野と、深刻な困難を示す分野とのばらつきがあることを示す、包括的な用語である。
マッキンタイア(Macintyre)及びデポニオ(2003年)
「特異な学習困難」という言葉が使用されるとき、専門家はディスレクシアを想定する傾向がある。しかし、今日では、特異な学習困難は複数あると理解されている。今回のプレゼンテーションでは、ディスレクシア、協調運動障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)及び特異的言語発達障害(SLI)などの特異な学習困難について論じる。研究によれば、ある特異な困難を抱えている学習者は、別の困難の兆候も示す可能性が極めて高い。このため、これらの困難は同時発生するものと考えられる。これらすべての困難に共通する中心となる困難を明らかにし、学習の個別化に役立つ情報を提供するとともに、生徒の印刷物利用への影響を検討する。
最後に、エディンバラ大学に拠点を置くCALLスコットランドが、スコットランド政府に代わって実施した「すべての人のための図書(Books for All)」プロジェクトを紹介する。このプロジェクトは、教師及びその他の実践家を支援し、視覚障害や身体障害が原因で普通の印刷図書を読むことが困難な生徒、あるいは識字力や言語能力が不十分で印刷様式の情報を理解できない生徒のために改良された、アクセシブルな代替フォーマットによる教材を提供するものである。