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特集/IFLAダーバン大会レポート


アクセシブルな図書館サービスを目指して
  -盲人図書館分科会報告-

項目 内容
転載元 日本図書館協会発行「図書館雑誌」2007年12月号 「特集/IFLAダーバン大会レポート」

野村美佐子

 盲人図書館分科会(以下LBS)の 常任委員会と公開セッションに参加 したので報告をする。


LBS常任委員会

 委員が所属する団体の多くがDAIS Yコンソーシアム(以下DC)の会員 でもあることから,アクセシブルな 情報および図書館サービスの提供を 目指して,LBSとDCが連携した活動 が始まっている。今回のLBSのプレ コンファレンスでもDCの理事が講師 として参加し,委員会では,DCの現 況について,LBSの委員であり,最 近会長となった河村宏氏によって報 告された。また来年のクロアチアで の中間会議は,DCとの合同会議およ び共催のワークショップを予定して いる。

 また委員会において,LBSが昨年 ,IFLA(国際図書館連盟),BL(英 国図書館)/MLA(英国博物館・図 書館・文書館国家評議会)からの助 成で行ったプロジェクトの報告がな された。これは,視覚障害者図書館 および情報サービス事業の資金調達 および管理システムにおけるさまざ まな取り組みの国際的な比較と,こ れらの要素がその成果に及ぼす影響 の解明を目的としていた。この調査 には,オーストラリア,カナダ,ク ロアチア,デンマーク,日本,韓国 ,オランダ,南アフリカ,スウェー デンの関係者が協力をした。日本で も日図協の障害者サービス委員会( 関東)が中心となって回答を行った 。この報告書については,障害者に 配慮してフォーマットのCD-ROMで配 布され,その要約は,日本語で当協 会のウェブサイト

(http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/info/rightscom.html)に掲載。


LBS公開セッション

 8月23日に開催された公開セッシ ョンは,子ども・ヤングアダルト図 書館分科会との共催で開催された。 「印刷字の読めない障害児(print- disabled children)への図書館サ ービスの好事例」をテーマでクロア チア,インド,スウェーデン,そし て英国から,それぞれの図書館また は点字図書館での経験に基づいた事 例発表があった。

 最初に,クロアチアのDijana Sab olovic-krajina氏より,「Koprivni ca公共図書館における印刷字の読め ない障害児への図書館サービス-ク ロアチア公共図書館の特殊なケース またはロールモデルなのか?」につ いて発表があった。

 続いて,LBSの議長であったスウ ェーデンのビアトリース・ショール ド氏(スウェーデン国立録音点字図 書館)は,「視覚障害児にアクセシ ブルなさわる絵本」について発表し た。スウェーデン国立録音点字図書 館は,既存の絵本を,視覚的な認知 と弱視の色彩に対する認知に関する 研究を基本とした製作ガイドライン に従って修正を行い,さわる絵本を 製作している。スウェーデンの著作 権法の改正で修正が可能となったた め,さわる絵本は,オリジナルの絵 本とは必ずしも同じではない。その 手法に関しての具体的な事例での説 明はわかりやすく,とても興味深か った。

 次にインドのRatna Bandyopadhya ys氏(カルカッタ大学)は,「イン ド・ウェストベンガルでの視覚障害 者のための開発志向型図書館サービ ス」について発表した。

 最後に,英国のマリオン・レプレ リー氏(クレア・ビジョン・プロジ ェクト)は,「視覚障害がある幼児 向け貸出用コレクションの構築」に ついて発表した。6年かけてクレア ・ビジョン・ポスタル図書館での貸 出しのために,1,000冊というさわ る絵本を収集したと述べた。外国か ら購買したさわる絵本もあるが,多 くは,視覚障害や点字などについて 知識のないボランティアが指導を受 けながら製作した。現在,これらの 図書は,120の学校に貸し出しが行 われている。レプレリー氏のプレゼ ンは,このプロジェクトがいかに楽 しいものであったかを感じさせてく れた。

 スウェーデンと英国からの発表の 詳細については,発表者がIFLAに提 出した原稿を日本語に翻訳し,日本 障害者リハビリテーション協会のウ ェブに掲載予定である。


(のむら みさこ:財団法人日本障害者
リハビリテーション協会情報センター)
[NDC9:010.6 BSH:1.国際図書館連盟
         2.障害者サービス]