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2. なぜわかりやすい印刷物を使用しなければならないのか?

2.1 想像以上に多くの人々が、視覚の問題を抱えている

世界保健機関(World Health Organization)の視覚障害に関する国際データなどの調査報告書を見ると、世界の眼疾患の有病率、原因および重症度について、一般化することは不可能である。

しかし、イギリスのみに目を向けた場合、国内で200万人が視覚の問題を抱えていると推定される。今後25年間で、代替フォーマットによる印刷物を必要とする人の数は、人口の高齢化と、視力にダメージを与える可能性がある糖尿病などの疾病の増加により、倍増すると見られている。

2.2 視力低下のさまざまな影響

視力低下を伴うすべての人が、まったく視力がなく、点字などの代替フォーマットを使用して読んでいると考えられていることがある。しかし、さまざまな眼の状態とその影響には幅があり、実際には、視覚の問題を抱える人々の多くは、まだ視力が残っており、それを使って印刷物を読んでいるのである。

2.3 印刷物を読むさまざまな方法

視力低下を伴う人が印刷物を読む方法は数多くある。

最も基本的な方法には、何の支援も受けないことも含まれる。残された視力だけを使っている人は、印刷されたページに目をぐっと近づけても、一度にそのページの狭い範囲しか見ることができない。ページの特定の部分に焦点を合わせられるように、読んでいる行の下に色の濃い定規を当てて使うこともある。

視力低下を伴うその他の人々の中には、印刷物を読むために拡大鏡を使用している人もいる。これは、手で持ったり、あるいは机の上に据え付けたりして使用し、拡大の度数も変えられる。それでもやはり、一度に見ることができるページの範囲は非常に狭く、おそらく1,2語にすぎないであろう。

これに代わる手段として、閉回路テレビ(Closed Circuit Television)がしばしば使用されるが、これはテレビやPCの画面のようなもので、印刷された情報がニーズに合ったサイズに拡大されて下に表示される。文字認識ソフトも品質が向上しており、文書をスキャンしてコンピューターに取り込み、読み上げたり、適切なサイズでPCモニター上にわかりやすく表示したりすることができる。

わかりやすい印刷物の原則によって、これらの手段のいずれかを使用して印刷物を利用している人々のために、読むことを一層容易にすることができる。

2.4 すべての人の利益

しかし、わかりやすい印刷物は、視覚の問題を抱えている人々だけに役立つわけではない。

アクセシブルな印刷物を「レベルの低下」と見なす機関もあるが、これらのガイドラインを使用したコミュニケーションは、特定のターゲットグループにとってのみ、魅力的に見えるのではなく、メッセージを真の意味で伝え、可能な限り多くの読者にこれを届けていくものであるということには、論拠がある。

わかりやすい印刷物は、必ずしも画像が全くない簡素なデザインを意味するわけではなく、むしろ、ナビゲートしやすく、また理解しやすい構造に従って、視覚的要素を使用したものであるといえる。

2.5 法律

繰り返しになるが、世界の障害者差別禁止法を一般化することは不可能である。しかし、今ではアクセシブルなフォーマットによる情報を提供する義務を、各機関および企業に課している国もある。イギリスでは、障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act)に、商品とサービスを障害者にとってアクセシブルにしなければならないという法的義務が示されており、これは印刷物にも適用される。

企業は今やほとんどのケースにおいてアクセシブルな情報の提供を目指しているが、これは企業の利益に結びつくからである。公共セクターにおいては、障害者を平等に扱う義務が導入された結果、国民保健サービス(National Health Service)などの機関に対し、障害者が使用できるフォーマットによる印刷物の配布義務が強化された。