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特集/IFLAソウル大会レポート
「新アクセス技術」合同セッションに参加して

河村宏
国立身体障害者リハビリテーションセンター(NRCD)研究所 障害福祉研究部長

項目 内容
転載元 日本図書館協会発行「図書館雑誌」2006年12月号 「特集/IFLAソウル大会レポート」

情報技術,AV資料およびマルチメディア,国立図書館の3セクションが合同で主催した「新アクセス技術」のセッションで,DAISYコンソーシアムを代表してDAISY(Digital Accessible Information System)の現況と将来について発表した(http://www.ifla.org/IV/ifla72/papers/091-Kawamura-en.pdf)。

今日DAISYとして国際的に確立されているデジタル録音図書の規格は,IFLAの一セクションであった当時のSLB(Section of Libraries for the Blind)のメンバーが1996年にDAISYコンソーシアムを設立して国際共同開発に着手した。95年にSLB議長としての任期を終えた筆者はその設立を推進した。

従来のカセットテープに代わるデジタル録音図書の国際標準規格を作らなければ,国際交換で図書を借用しても規格の違いで読めなくなる恐れがあり,また,デジタル技術を活 用してより使い勝手の良い録音図書を実現するチャンスでもあった。幸い,97年のIFLAコペンハーゲン大会までに(財)テクノエイド協会の助成を得て進めた国際評価試験に基づいて機能に関する国際合意が成立し,さらに一年かけてW3Cの勧告を技術基盤にした今日のDAISY規格を開発した。

1999年には世界に先駆けて厚生省が日本の点字図書館の録音図書を全国的にDAISYに転換するための事業を予算化し,筆者はその実施を担当した。国際的には日本の動きが呼び水となってその後のDAISYの普及と規格そのものの電子出版技術との融合を加速した。

今日ではDAISYは米国のANSI Z39.86-2005として知られ,W3CのWebアクセシビリティー・ガイドラインをさらに充実させる役割を果たしている。米国の教科書教材のアクセシビリティーに関する法律はDAISY規格のファイルの提供を出版社に義務づけている。

障害者のみならず,高齢者や先住民族そして非識字者も含めて知識を共有できる21世紀を切り開くべく,図書館関係者が利用者と共に創り出したDAISYが活用されることを期待している。