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患者・受刑者・障害者分科会(Libraries Serving Disadvantaged Persons. LSDP)
-難読症会議と病院患者図書館ポスター会議-

菊池佑
日本病院患者図書館協会、IFLA患者・受刑者・障害者分科会常任委員

項目 内容
転載元 日本図書館協会発行「図書館雑誌」2006年12月号 「特集/IFLAソウル大会レポート」

はじめに

当分科会の名称はIFLAの中で中身がわかりにくい分科会であり,筆者はこれまで日本語訳に苦慮してきた。筆者の知らない所で「障害者分科会」と訳されていたこともある。

日本では障害者と言えば図書館員の大半は「肢体不自由,視覚障害(盲,弱視),聴覚障害など」を思い浮かべるようであり,実態と大きくかけ離れている。

そこで,これまで無理に訳さずに原文をカタカナ発音にそのままに訳したりしたがますます実体がわからなくなる。そこで,分科会の名称の説明の付記が必要となった。

1.名称の変更の議論始まる

筆者が指摘するまでもなく名称の不都合性を感じる分科会委員が増え名称の変更の議論が始まっている。LSDPという名称になった経緯を理解するためにはIFLAでの当分科会の歴史を述べなければならない。

1930年代に公共図書館の「病院図書館小委員会」(Hosptal Libraries Sub-Section)として始まり,その後,病院内医学図書館を含めて「病院の図書館委員会」(Libraries in Hosptals Section)として独立し,時代は下って地域に住む障害者をも含むようになり,「病院図書館・障害者分科会」(Hospital Libraries and Handicapped Readers Group)と改称して1980年代を迎えた。

1980年代半ばに視覚障害と多文化が独立分離した結果,名称はLSDPとなり病院図書館と障害者の名は消えた。その後,視覚障害と多文化を除いた多くの主題が論じられている。難読症もその一つである。

2.難読症会議

難読症(dyslexia)とは,知能には障害がないが読み書きに障害を持つことを言う。行や単語の飛ばし読みなどが起こるために文章を理解することが困難となる。

発表は,最初に,医学的見地からの難読症について韓国人医師が,次に北欧の図書館員が難読症全般について,3番目に韓国人が難読症の世界調査を,最後に日本人(野村美佐子氏)が,難読症の人の読書支援機器としてDAISYを紹介した。

早朝の会議にもかかわらず,会議の後半にはサリーを身にまとった人など含めて多くのアジア人の参加が目立ち,最終的には約200人の参加者があり盛況であった。中でも印象 的であったのは,DAISY用のCDの無料配布では,アジアの参加者が殺到し数分で品切れになった。

3.病院患者図書館ポスター会議

病院患者図書館が発表に取り上げられたのは,約10年ぶりである。

これまで刑務所,聴覚障害者,easyto readのテーマが盛んに論じられてきてたために,病院患者図書館のテーマは発表の機会を逸した。

筆者が担当のポスター会議では,予想どおりアジア諸国からの参加者の関心を大いに引いた。中でも開催国の韓国人の来訪者が多く,その中に,ぜひ韓国の病院にも患者図書館を作りたいのでそのときは助言をお願いしたいという人まで現れた。

おわりに

さまざまな主題を含む当分科会は,社会の新しい問題点や主題を先駆的に取り上げてきており,これらは公共図書館をはじめ学校,大学など他種の図書館にも影響を及ぼし続けている。