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序論

インターネットおよびワールドワイドウェブ(ウェブ)は、今ではほとんどの人々にとってなじみ深い言葉となった。「グーグル世代」と呼ばれることが多い、1993年以降に生まれた人々は、ウェブが存在しなかった時代を覚えていないであろう!彼らにとって、(少なくとも先進国では)ウェブは情報とデータにアクセスし、これをやり取りし、保存し、そして共有するための、もう一つの手段にすぎないのだ。2017年までには、インターネットがすべての年代の人々に受け入れられるまでに十分な発達を遂げ、ほとんどの家庭で完全に導入されるものと予測されている(CIBER 2008年)。

印刷字を読めない障害(全盲、弱視、ディスレクシア、学習障害など)がある人々は、オンライン情報にアクセスするために、デスクトップやブラウザビューの調整(フォントサイズの拡大、色のコントラストや反転)から、画面拡大ソフト、画面読み上げソフト、あるいは点字出力器等の支援技術の利用に至るまで、さまざまな方法を駆使している。これらは、デスクトップコンピューター、ラップトップ、あるいは携帯機器など、このような人々が使用しているいずれの機器にも適用することができる。アクセシビリティの問題は初期のウェブにはあまり問題ではなかったのだが(ウェブサイトのデザインはおもにテキストベースであり、支援技術ソフトを使用したアクセスやインタラクションをかなりうまく行うことができたからである)、数々のウェブデザインが開発され、それが印刷字を読めない障害がある人々に難題を突き付けてきた。おもな開発には、次のようなものがある。

  • 画像と図の使用の増加(グラフィカルユーザーインターフェース)
  • ウェブコンテンツ作成ソフト(Font Page およびDreamweaverなどのオーサリングツール)の登場により、非構造的なHTMLの使用が可能になる ・ ウェブ標準から逸脱するウェブブラウザ (ハウエル 2008年 p58-59)

上記の開発は、特に印刷字を読めない人々や支援技術ソフトを使用している人々のためのウェブサイトのアクセシビリティに、悪影響を与えてきた可能性がある。たとえば、

  • 画像や図のテキスト代替が提供できなければ、画面読み上げソフトを使用している人々にとって問題となるだろう。このようなソフトは画像や図を解説できない(単に「画像」「画像」「画像」などと読み上げるだけ)からである。
  • 非構造的なHTMLの使用は、画面上では十分基準を満たしているように見えるが(たとえば、見出しレベルの誤用など)、画面読み上げソフトを使用している人々にとっては、ナビゲーションが困難になる。
  • 非標準的なウェブコーディングでも表示できるウェブブラウザでは、コーディングが悪くてもウェブサイトが表示されるが、支援技術との互換性に問題が生じる可能性がある。

    1999年、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)は、ウェブアクセシビリティに関する認識を高め、アクセシブルなウェブサイトの作成ガイドライン(WCAG)や、アクセシブルなオーサリングツールの作成ガイドライン(UTAG)、そしてアクセシブルなブラウザの作成ガイドライン(UAAG)を提供するために、ウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ(WAI)(www.w3.ofg/WAI/)を設立した。また、いくつかの国と機関でも、独自のガイドライン(たいていの場合WAIの原則にもとづいていた)が開発された。たとえばイギリス規格協会(British Standards Institute)は、公開仕様書(Publicly Available Specification)78:アクセシブルなウェブサイトの発注における優れた実践ガイド(PAS78)(BSI 2006年)といわれるガイドラインを作成したが、これには、アクセシブルなウェブサイトの発注のために取るべき手段に関するアドバイスや、W3Cのガイドラインと仕様の採用方法、開発ライフサイクルにおけるガイドラインと仕様、ソフトウェアツールおよびユーザーテストの役割などが記されている。

    アクセシビリティステートメントおよびアクセシビリティ指針もまた、アクセシビリティにどのように対処しているか(あるいは対処していないか)を、ウェブサイト訪問者に伝えるために各機関によって開発されてきた。たとえば、アメリカ図書館協会(ALA: American Library Association)の情報技術政策室(OITP: Office for Information Technology Policy)は、アクセシビリティ指針の開発方法に関し、「地域のニーズと考えられるあらゆる障壁を明確にするために、地域の声を聞く」「この分野の他機関の指針を調査し、適応かつ採用できる優れたアイディアがあるかどうか検討する」「図書館が責任を持って取り組むべきことを明確に述べた支援主旨書を作成する」「責任者を記載する」「アクセシビリティに関する情報がどのように発信されるかを記載する」などのアドバイスを発表した(ブロフィー 2008年 p100-102)。

    アクセシビリティの向上に役立ったその他の活動の中には、2010年までに「成長と雇用のための欧州情報社会」を建設するというi2010戦略(欧州委員会2005年)に取り組む、eヨーロッパアクセシビリティ行動計画があった。この行動計画では、ICTの公的調達におけるアクセシビリティ要件、アクセシビリティの認証、およびウェブアクセシビリティの評価方法とツールに、特に重点が置かれていた。

    また、教育技術と相互運用標準センター(CETIS: Centre for Educational Technology and Interoperability Standards)などによって作成されたアクセシビリティ標準規格や仕様、eラーニング技術標準規格のためのIMS仕様などを利用した情報のデジタル化に関する勧告もなされた。