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高等教育のためのアクセシブルな出版物

カリフォルニア・コミュニティカレッジ 代替テキスト製作センター(ATPC)の試み

Robert Martinengo
レコーディング・フォー・ザ・ブラインド・アンド・ディスレクシア(RFB&D),アメリカ

項目 内容
会議名 2005年 C-SUN会議(障害者支援技術会議”テクノロジーと障害者”)
発表年月 2005年3月 カリフォルニア州 ノースリッジ(アメリカ)
備考 英語版:原文

米国では、普通の印刷字を読めない障害を持つ大学生は大きな課題に直面している。学生は学業についていくために教科書、専門書、テストなどの教材のアクセシブルなフォーマットを要求する。多少の進歩はあったものの、全ての学生に平等な情報のアクセスを保障する包括的な解決策はない。アクセシブルな教科書とは、点字、音声版、電子テキストなどである。

この問題を解決するため、1999年にカリフォルニア州で新たな道が切り開かれた。出版社は障害のある学生に学業で使用する教科書の電子版を供給しなくてはならないという法律が可決した。これにより他の州でも同じような法律が可決し、現在多くの出版社はどの州の出版社であろうと要求に応じている。

これは前向きな発展であるが、プロセスの過程にはなお多くの困難がある。第一の困難は電子ファイルを受け取るまでに非常に長い時間を要するということだ。出版社はリクエストがきてから対応するので、電子版がいつできるのか納期が定かではない。従って学生は勉強のプランを立てることが困難である。次に考えなくてはならないのが、ファイルのフォーマットである。電子ファイルを作成するための様々な技術があり、また学生が使っている支援技術には様々なタイプがある。また数学などのように電子ファイルで表すことが難しい教科もある。

このような問題にかんがみ、カリフォルニア・コミュニティカレッジ・システムが、109校のカレッジがアクセシブルな教材を製作するリソースにアクセスできるようにリソースセンターを設立したことは特筆に価する。代替テキスト製作センター(ATPC)は大学に代わって出版社に連絡し、ニーズがあったときに迅速に提供するため電子ファイルの在庫を確保している。また、点字版を希望する学生には点字コードで教科書を転写している。ATPCは4000冊以上の電子版教科書を在庫している。

教科書の出版社はこの活動に注目し始め、国レベルで機能する解決策を模索している。現在の法律で問題なのは、学生のニーズが発生してからしか対処できないということである。障害のあるなしに関わらず、教材への平等なアクセスを保障する積極的な解決策が必要である。ひとつの可能性としては出版社が新しい教科書を出版するたびにレポジトリー(書籍デジタル収納)とともにアクセシブルな電子ファイルを蓄えることである。

アプローチが何であろうと、学生はタイムリーで正確かつ適切なかたちでニーズが満たされることを要求し続ける。ATPCは大きな大学のシステムが学生のニーズにどのように対応しているのかを示す一例である。