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掲載者注:昨年からDINFに転載をさせて頂いている「マリタイムス」の著者にご協力を頂き、掲載していくまでの 様子をサポートの事例として報告して頂きました。障害やパソボラとの関わりについての詳細は「マリタイムスDINF掲載にあたり」の中で説明しておりますので、そちらも併せてご覧下さい。

岡本真理さんのパソコンサポート事例報告

川崎パソコンサポートボランティア
兵頭 賢次

はじめに

 昨年末、リハ協からパソボラの依頼がありました。当事者は、ダウン症の30代の女性、健康上の理由からあまり外出が出来ないため、出張でのPCサポートを希望しており、PCにトラブルが生じた際には、すぐに家に来て対応して欲しいということと、PCのネットへの接続や機器の買い替えに関する事まで全てに対応出来るボランティアという条件でした。また、支援する側、される側ともに行き来が負担にならない距離に居住していることという条件もありました。 利用者は、DINFの転載マリタイムスを書かれている真理さんです。真理さんは高校のときから、高校生新聞、そして、マリタイムスを手書き(コピー配布)、ワープロ、パソコンと使う道具は変わって来ていますが、執筆を続けられています。真理さんの住まいは私の住まいから、勤め先NPO法人アーテム(大井町)への通り道に近いことから、サポートをすることになりました。

初顔合わせ

 12月の初旬、これからサポートをする方と初めての顔合わせがありました。「マリタイムス」をリハ協のDINFへの掲載をはじめるにあたり、これから毎月、データのやりとりを行っていく中で、フロッピーディスクやフラッシュメモリを介して行っていくには効率が悪く、リハ協としては"マリタイムスの原稿をメール添付で貰いたい" 、真理さんのお母さんはパソボラに教えてもらって、真理さんが"マリタイムスをスムーズに作れるようになり、メールやインターネットが出来るようになったら"、という思いがあったようです。当のご本人はどうか、気になるところですが、真理さんは色々なことにチャレンジしたくて、問題が起きないようにお母さんがセーブしての状況のようです。 まずは現状、どのようにマリタイムスを作られているのかを見せて戴きました。マリタイムスはワードで作成されています。お母さんが作成されたテンプレートがあり、それを下敷きにして真理さんが入力し、書式とか難しいところは、お母さんが後で手を入れるという方法です。作られたマリタイムスはフロッピーディスクに保存されていました。破損のためか、今までのマリタイムスで読み出せないものがあり、とりあえず、大丈夫なファイルをパソコンのハードディスクへコピー致しました。 今後はパソコンが古くなっているので、ゆくゆくは買い替え、メール、インターネットを出来るようにしたいというお母さんからの希望がありました。 携帯で撮った写真をワード文書中に入れるとか、チャレンジしていきたいと希望がありました。USBメモリと携帯の写真 micro SDを取り込むためのカードリーダーを私の方で購入、用意することになりました。

PCエラーの修復

 依頼のあったUSBメモリとmicro SDカードリーダーをお渡ししました。 パソコンが起動しなくなっていました。原因はハードディスクのどこかのファイルが壊れたようです。何もツールを持ってきていなかったのですが何度か電源のON/OFFで起動し、ディスクチェックを行い、エラー修復を行いました。その後は確実に起動するようになりました。ハードディスクの寿命といわれる5年は過ぎており、また、メール添付でファイルのやり取りもやりたいとのことで、パソコン購入とインターネット接続を前倒しすることになりました。年末は忙しいこともあり、年明け早々にパソコン購入とプロバイダーとの契約等を済ませ、設定を2月に伺って行うことになりました。 また、マルチメディアDAISYの再生ソフト、AMISのインストールを行いました。 リハ協のDAISYファクトリーより無料のDAISY作品をダウンロードし持っていき、再生の方法を覚えて戴きました。ただ、今度購入するパソコンがWindows7になるので対応していないことを伝えると残念がっていました。(その後、バージョンアップされて、Windows7対応になっております。)

パソコン購入

 パソコン購入はお知り合いに詳しい方がいて、ご一緒にTOSHIBAのPAEX35KlTBlを購入されました。マンションではインターネット"光"の売込みのちらしが良く入るそうですが、真理さんの使い方であればADSLで十分であることを説明し、ADSLの導入となりました。ワイヤレス等の機器設定は知人の方が棚作りも含めてしてくださいました。

パソコン設定

1月末サポートに伺いました。ウィルスソフトは付属の3ヶ月無料のものをインストールし、インターネットも使えるようになりました。パソコンは真理さんとお母さんが使用されるので、管理者とは別に制限付アカウントを真理さんとお母さん用に作成し、メールはWindows Liveのメールアドレスをそれぞれ取得、メール設定を行いました。真理さんは試しにリハ協にメールを送られました。

メールに原稿、写真の添付方法

 2月初旬、全国障害者問題研究会へ原稿送付を実際に行い、添付で文書や携帯のカメラで取った写真の添付方法をご一緒に行いました。このあたりの操作はお母さんに覚えてもらっています。お母さんにとっても初めてのことが多く、一生懸命ノートにメモを取っているのですが一人でやるとなると不安を覚えるようです。 「マリタイムス」126号をリハ協へ送付した翌日、 お電話があって、原稿が添付されていないといわれて「やっぱり兵頭さんがいないとダメだぁ~」と落ち込んでいたら届いていたと連絡があり、ホッとしました。「兵頭さんにも送ってみますので、お読みになってください。真理はメールで送れるので、いつもより早く仕上げて張り切っているようですが、このところ寒いのでオーバーペースにならないように気をつけます。」

マリタイムスの作成手順

 前回までは真理さんへの直接のサポートはパソコンの起動と終了、インターネット閲覧方法とメールの使い方まででした。今回は新しいパソコンで具体的にマリタイムスを真理さんと一緒にやって手順を覚えて貰います。マリタイムスはテンプレートを元に作成します。今までテンプレートは上書きされ、そのたびにテンプレートをコピーする操作をされていたそうです。それを防ぐため、テンプレートは読出し専用に設定し、最初は名前をつけて保存すること、次からはその名前をつけたファイルに追加作成していくことを何度か実際にやってもらい実際に覚えて戴きました。 また、今まで使われていたプリンタとの接続を行いました。ドライバーのダウンロードも必要なく接続しただけで自動的にインストールされました。

マリタイムス発行メール

 マリタイムスはリハ協のホームページ、転載マリタイムスで見るから郵送は不要という読者へ、マリタイムス発行の通知メールを送るやり方をやりました。アドレス帳にマリタイムスというグループを作成し、読者の登録を行い、メールアドレスは個人情報になるので、Bccとしての送り方をやりました。 AMIS 2.6はWindows XPまでの対応でしたが、ネットでWindows 7 に対応したAMIS 3.1 を知りインストールを行いました。

マリタイムスへの写真取り込み

 マリタイムス127号に写真を入れるやり方はお母さんにマスターしてもらいました。写真は携帯電話のカメラで撮影されたもので、Micro SDに記録されています。Micro SDから、ワード文書に取り込むためには、Micro SDでは写真はどのようなところに保存されているのか、説明を行いました。また、真理さんが書かれたお母さんの似顔絵をその場で携帯電話のカメラで撮ってもらい、こちらも文書に取り込み完成です。

ウィルスソフトの入れ替え

 4月上旬、購入時に付属していたウィルスソフトの3ヶ月無料期限も近づいているので、そのまま料金を払い使い続けるか、無料のマイクロソフトのMicrosoft Security Essentials にするか相談し、無料のものに入れ替えました。入れ替えたことにより、危ないホームページへのアクセスを制限するURLフィルタの機能はなくなりました。怪しげなサイトへアクセスすることは無いと思われますが、少しでもリスクを軽減させるため、Windows Live ファミリー セーフティを導入し、インターネットを安全に使える環境と致しました。 ウィルスソフトに入れ替え等を行い、ほぼ、パソコンの環境は整ったので、いざというときのためにバックアップを取る事をお勧めしました。そのためのDVD-Rを次回お伺いするときまでに購入しお持ちすることにしました。

パソコンのバックアップ

 4月末、マリタイムスの発行をお知らせするメールで、転載マリタイムスへのリンクをうまく張ることが出来なかったので、まずはリンクの張り方を一緒にやってもらいました。 また、前回頼まれたDVD-Rを使って修復用のディスクとパソコンのイメージバックアップ ディスク作成を行いました。

文字の縦書き

 5月下旬、マリタイムスに俳句を縦書きテキストボックスで入れる方法を真理さんに実際にやってもらいました。反復練習が必要なようです。お母さんにも覚えていただいたので大丈夫でしょう。 全国障害者問題研究会が主催し、名古屋で開催される全国大会に提出する文書のフォーマットの設定をやりました。同じページ内でセクションを区切り、1段組と2段組を混在させるやり方です。また、大会で使う名刺の作成ソフト ラベル屋さんのインストールを行いました。次回は真理さんとお母さんの名刺作成になる予定です。

サポートで配慮したこと

 真理さんにパソコン操作を覚えてもらうにあたり、考慮したことは、まずはお母さんに覚えていただき、その後、真理さんに操作してもらいました。また、まだ、時間があるからと、あまりたくさんのことをやらないように致しました。それよりは、もう一度やってみようと反復練習をしていただきました。基本的な操作は色々なところで共通しており、基本をしっかりと身につけてもらった方が後々のためになるからです。 パソコン購入とインターネット導入時に考慮したことは使われ方と費用のバランスです。そのため、どのようなパソコンなら良いのか、事前にパソコンのカタログを、お持ちし説明を行いました。 メールアドレス、ウィルス対策も有料オプションで追加できますが、月々の負担も"塵も積もれば"なので、実際に自分でも使って見て、どれが良いのか、色々と検討させていただきました。その結果、メールアドレスは無料のWindows Live、ウィルスソフトは無料のMicrosoft Security Essentialsを選択していただきました。この2つを組み合わせたことによって、有害サイトへのアクセス制限もかけられました。 マリタイムスを配布するときの宛名を今までの手書きから、パソコンに、これからチャレンジですが、ラベル屋さんを導入いたしました。オフィスを使っても出来ますがラベルは有料になりますが作成が非常に楽なためです。

サポートで感じたこと

 始めダウン症の方をサポートできるか心配でした。お母さんがすべて真理さんはお任せという状況だったら、真理さんとのコミュニケーションは?など。でも、最初にお会いしたときに、それらの心配は一掃されました。お母さんもパソコンを使っておられ、真理さんのサポートをされています。私がサポートで行ったことは、お母さんが覚えて真理さんをサポートしてくださるという具合なのでサポートが非常にやりやすいです。 加えて真理さん、お母さんとの会話を聴いていると、お母さんの真理さんへの思い、真理さんのお母さんへの思いが感じられ、微笑ましく、心が癒される思いがします。いつもサポートに伺い、お二人の会話を聞き、あっという間に時間が経ってしまいます。 また、お母さんも外への働きかけを積極的にされている方ですので、思わぬつながりがあることを知りました。そして、川崎パソボラの助けになればと今年度から会員になってくださいました。


著者の所属先

NPO法人アーテム(http://www4.ocn.ne.jp/~atem/)

川崎パソコンサポートボランティア(http://kawa-psv.jpn.org/)