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平成19年度 第93回 全国図書館大会 東京大会
第12分科会

展示
世界のバリアフリー絵本展
(同時開催、障害者サービス用資料展・機器展)

日本図書館協会 障害者サービス委員会
日本国際児童図書評議会
バリアフリー絵本展実行委員会

世界のバリアフリー絵本展の会場の様子世界のバリアフリー絵本展の会場の様子

世界のバリアフリー絵本展とは

IBBY(国際児童図書評議会=International Board on Books for Young People)は1953年、ドイツの第2次世界大戦後の混乱の中で一人のユダヤ人ジャーナリスト、イエラ・レップマンが「子どもたちに食料だけではなく心の栄養を」、「子どもの本を通じての国際理解」と呼びかけて設立された、子どもの本の世界組織です。プロジェクトのひとつとして、ノルウェーに障害児図書資料センター(IBBY Documentation Centre of Books for Disabled Young People)があり、世界中の障害のある子どもたちの図書・資料の調査研究、リストの作成、絵本展等を通じ、普及・利用の促進を行っています。今回展示してあります「世界のバリアフリー絵本展」は、センターが隔年で収集し2005年度に選定した推薦図書40タイトルです。JBBY(社団法人日本国際児童図書評議会)は、1974年に設立されたIBBYの日本支部でこの絵本展の主催団体です。

バリアフリー絵本とは

1、読書に障害がある子どもたち

日々、たくさんの出版物が刊行されています。しかし、絵や字が見えない、字が読めない、そのままの構成では内容がよくわからない、本を操作できない等々の子どもたち、つまり、「楽しめる本がない子どもたち」が居ます。さらには、図書館や書店に自分では行けない子どもたち、あるいはそこに自分のほしい本がない、つまり図書館や書店が自分たちが参加できる場ではないも子どもたちもいます。それらの子どもたちには、様々な読書支援と、デザイン、言語、レイアウト、絵などがその子のニーズに合った、しかも文学的にも美術的にも質のよい要素を充分に持った本が必要です。

2、バリアフリー図書の種類

(1)子どもたちのため(FOR)に作られている本

「FOR」というのは特別に作られている本です。

* 手話つき絵本
テキスト(文)に手話を加えることで、手話を母言語とする子どもたちには、ずっと読みやすくなります。手話は音声言語とは違った文法を持つ視覚言語です。聴覚障害のある子どもたちが、自然に獲得する言語は視覚言語なので、その視覚言語が添えられていることは、読みやすさやわかりやすさにつながります。
また、一般の子どもたちが絵本をとおして母言語と出会うのと同様に、自分たちの母言語である手話に絵本で出会っていくことは大事なことです。 手話つき絵本
* 絵文字(ブリス)つき絵本
ブリスや、ピクトグラムなどの絵文字をテキストに加えることで、文字を読むことに難しさを持つ子どもたちは、読みやすく、理解しやすくなります。ブリスは主にアルファベット文字への対応絵文字ですので、日本では、J-PICという絵文字などが開発されています。 絵文字(ブリス)つき絵本
* 手で読む絵本(さわる絵本・布等の絵本)
さわる絵本は、布など、様々な素材を使って情景を再現しようとする絵本です。視覚障害児に絵本を楽しむ機会を与える重要な本といえるでしょう。さわる感覚や、形を認識し、解釈する技術が磨かれます。本の中の絵が理解できれば、言語の発達にも役立つでしょう。初めのうち、絵を充分理解できなくても、或いは絵を理解するために、目の見える人の助けが必要であったとしても、情報が膨らみ、さわる絵本を楽しむことはできます。一方で、視覚障害児が自発的に、誰の助けも借りずに読める本の存在は重要です。小さくて単純な、非具象的、幾何学的な形や記号が使われていることです。このような絵を理解するためには視覚的経験が必要ありませんので、自分たちで読書を楽しむことができます。 布の絵本
* やさしく読める本
北欧などが制作しているやさしく読める本にはガイドラインがあります。年齢や興味に適したテーマ、魅力的な装丁やカバー、大きな文字、見やすいレイアウト、テキストに的確に対応したイラスト、良く使う簡潔で具体的なことばづかい、受身の表現を使わない、物語の展開は単純で論理的、時間が前後しない、登場人物は多すぎず、行動は直接的で単純、などです。ストーリーが面白く、絵文字や写真、イラストとの組み合わせによる楽しさの演出も重要です。 やさしく読める本
* 手作り絵本
手で読む絵本(さわる絵本、布等の絵本)や、点字絵本、点訳絵本、拡大写本等の手作り絵本。絵本作りのプロの人たち、学校、特に障害児教育の専門家の方たち、また本の選定に厳しい図書館の人たちからは非常に厳しい批判を受けてきた側面もありますし、現在は出版物を変換する際の著作権の問題も有ります。しかし、出版されている本が極端に少ない現状では、こうしたボランティアたちによる手作り絵本によって読書の楽しみを大きく支えられてきたのが日本の子どもたちの現状です。 さわる絵本 布の絵本
* マルチメディアDAISY図書
マルチメディアDAISYは、パソコンで、音声とその部分のテキストや画像等がシンクロナイズ(同期)して出力されます。視覚障害者・肢体障害者・聴覚障害者・学習障害者・寝たきりの人等様々な人が利用できる、アクセシブルなデジタル図書です。 原本とマルチメディアDAISY図書

(2)子どもたちについて(ABOUT)書かれている本

「ABOUT」は、障害のことを理解するための本です。点字や手話を学んだり、あるいは障害児者が主人公として描かれたりしている本です。このような本は、障害に関連する疑問に答え、根拠の無い社会的通念誤解、偏見を打ち砕くことができます。

障害を越えて友達になった少年達の物語

(3)障害児者によって(BY)作られた本

「BY」は作品集など、障害児者がイラストやテキストを書いている本です。

主人公は脳性まひの少年で、作者も同じ障害を持っています。

3、一般図書

一般図書も、読み物として楽しみながら、視覚認知、言語及びコミュニケーション能力を強化し、また感情表現を豊かにすることができます。一般図書は、書店で選ぶことができ、広く入手できるので貴重です。一般児童書の中にも、絵の一部を触れたり、音声が付いていたり、絵だけの本であったり、障害児も楽しめる構造のものもあります。また、テーマやストーリーの展開で興味を呼ぶものもあります。障害のある子どもたちにとって、どのような絵本が楽しめる本なのか見出すことは重要な課題です。

北風に点々模様を飛ばされてしまったきりんが模様を探す旅に出たというお話

4、図書館の果たす役割の重要性

日本はこうした本の出版は社会の義務であり、本を楽しむことはすべての子どもたちの権利なのだということの認識がまだ充分ではありません。図書館の役割としてすべての人に読書の権利を保障していくことはもちろんですが、図書館には、こうした図書の普及に果たす役割として、大きなものが有ります。障害は、1人ひとり異なると言われるほど多様なもので、一つの本を出版したからといってその本ですべての問題は解決しません。アプローチの紹介ということで図書館がその購入を引き受けて、社会に向けて公開を請け負っていく。それは購買力の確保につながり、出版を促進する力となりうるものです。出版社は、利益が上がらなければ出版できません。出版社個々の努力には限界がありますから、新しいシステムを構築していく必要がありましょう。

障害者サービス資料展障害者サービス資料展

世界のバリアフリー絵本展と同じ会場で、「障害者サービス資料展」と業者による機器展示を行っています。(随時入場可能)点字・録音・DAISY資料はもちろん、触る絵本や音声パソコンによる利用体験など、いろいろな資料に触れることができます。また、拡大読書機・DAISY再生録音機等の業者による展示も行います。出店業者(予定)、「大活字(大活字出版)」「シナノケンシ(DAISY機器)」「タイムズコーポレーション(拡大読書機)」「音訳サービスJ(録音資料)」「オフィスリエゾン」

世界のバリアフリー展開催地で増えたりんごと葉っぱ(フェルト)

この記事は日本図書館協会発行「平成19年度 第93回 全国図書館大会 東京大会要綱」より 転載させていただきました。