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平成19年度 第93回 全国図書館大会 東京大会
第12分科会

図書館における障害者サービスにかかわる著作権の現状と図書館界の取組み

常世田 良(JLA著作権問題担当理事)

日本図書館協会(以下「協会」)としての取組みは、著作権法そのものを改正するための取組みと、著作権法そのものの改正には必ずしもこだわらずに権利者との直接的な話合いによりガイドラインなど作成して現実的な解決を図る取組みのふたつの路線をもつ。このふたつの路線は、相互に補完的な影響を与え合うものと考えられるため当面堅持する方針である。

図書館に関連する著作権法の改正の必要性と具体的な内容についての検討は、文化庁文化審議会著作権分科会(以下「分科会」)の下に設置されている法制問題小委員会(以下「法制小委」)において行なわれる。

著作権の範囲は非常に多岐にわたるため、図書館関連のものが毎年テーマとしてとりあげられるものではないが、日本図書館協会では、従来より毎年分科会やその他の小委員会へ理事等を委員として派遣している。

最近の図書館関連のものとしては、平成18年1月発表された「文化審議会著作権分科会報告書」に「図書館おける権利制限」についての検討結果が掲載されている。当時図書館界からの要望を文化庁著作権課がとりまとめ、分科会、法制小委において検討されたもので内容は以下のとおりである。

  1. 第31条の「図書館資料」に、他の図書館等から借り受けた図書館資料を含めることについて
  2. 図書館等の間においてファクシミリ、電子メール等を利用して、著作物の複製物を送付することについて
  3. 図書館等において、調査研究の目的でインターネット上の情報をプリントアウトすることについて
  4. 「再生手段」の入手が困難である図書館資料を保存のため例外的に許諾を得ずに複製することについて
  5. 図書館等における、官公庁作成広報資料及び報告書等の全部分の複写による提供について
  6. 著作権法第37条第3項について、複製の方法を録音に限定しないこと、利用者を視覚障害者に限定しないこと、対象施設を視聴覚障害者情報提供施設等に限定しないこと、視覚障害者を含む読書に障害をもつ人の利用に供するため公表された著作物の公衆送信等を認めることについて

法制小委における図書館関係者のヒアリングなどののち、個々の要望に関して、総論では審議会委員より賛意が示されたが、最終的には継続的な審議の要有りという結論となり法改正には至っていない。

19年度の法制小委では、権利制限が再び検討対象となったことから上記の1.から5.までが再度検討されることとなった。6.に関しては、障害者に関するテーマであることから、図書館関連ではなく障害者関係の権利制限の項目として扱われることとなり、既にヒアリングが実施されている。

権利者と直接話合いを行い、現実的な妥協点を見出す取組みについては、権利者団体と図書館団体によって構成された「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」(注1)において、権利者側の認定のもとに「写り込み」、「借受資料の複写」に関するガイドラインの作成などを実現し成果をあげている。図書館における障害者サービスに関しては、同協議会において権利制限の必要性に関し、権利者側も基本的には必要性を認めるという結論に達したことから、同協議会の下に、図書館における障害者に関する権利制限の具体的な内容を検討するワーキンググループを19年2月の設置し、図書館側からは、協会の障害者サービス委員会委員長、著作権担当理事等が、権利者側からは、版元の法規担当者、書協の著作権担当者が参加して検討を開始している。これまで個々の図書館において個別に行なっていた音訳許諾の手続きを一括して行なえる態勢を作ることを目指して、許諾文章を統一するためのたたき台の作成などを始めている。

(注1)「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」参加団体一覧

図書館団体(団体の五十音順)

  • 国公私立大学図書館協力委員会
  • 社団法人全国学校図書館協議会
  • 社団法人日本図書館協会
  • 全国公共図書館協議会
  • 専門図書館協議会
  • その他オブザーバとして国立国会図書館など

権利者団体(団体の五十音順)

  • 有限責任中間法人 学術著作権協会
  • 社団法人 日本映像ソフト協会
  • 社団法人 日本書籍出版協会
  • 株式会社 日本著作出版権管理システム
  • 社団法人 日本複写権センター
  • 社団法人 日本文藝家協会

この記事は日本図書館協会発行「平成19年度 第93回 全国図書館大会 東京大会要綱」より 転載させていただきました。