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平成19年度 第93回 全国図書館大会 東京大会
第12分科会

報告
聴覚障害者も使える図書館に

渡辺 修(聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるグループ)

1.「聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるクループ」の紹介

1982年に、第15回全国手話通訳問題研究会の全国集会に「社会教育や図書館とろうあ者」分科会を設けました。そこに集まった手話を学ぶ図書館員の出会いと話し合いが契機となり、日本図書館協会障害者サービス委員会の中に「聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるワーキングクループ」(現在の名称は「ワ-キング」を取ったものに改称)を誕生(1984年)させました。設立当時の活動計画は以下のとおりです。

  • クループの主な目的は、聴覚障害者に対する図書館サービスのあり方を追及する。そのために、このテーマに関心のある人たちを広く募り、横の連絡をとり、情報の収集と提供を行う。
  • 聴覚障害者や聴覚障害者関連団体と連絡をとり、情報交換を行う。
  • 適宜活動報告を行い、マニュアルを作成する。

グル-プの会員には、障害者サービス委員会以外に、このグル-プの主旨に賛同していただける人は、誰でもなることができます。聴覚障害のある会員も14名ほどいます。

聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるクループ 事務局 渡辺 修
E-mail:samu-wat@mta.biglobe.ne.jp

2.聴覚障害者といっても様々

  • ろう者
  • 聴覚障害と他の障害が重複している人(盲ろう者など)
  • 手話も文字も使わない人(学校教育などを受けていない聴覚障害者など)
  • 難聴者
  • 中途失聴者
  • 加齢により聴力損失した高齢者

3.聴覚障害者のコミュニケーション手段

  • 手話(日本手話、日本語対応手話、中間型手話)
    1. 日本手話:日本のろう者が日常的に用いる「言語」である。単語を並べる規則(文法)意味、用法は独自なもので、日本語を手で表現したものではない。
    2. 日本語対応手話:ほとんど日本語と同じ順番に手話を使う。日本語を習得するために、ろう教育に導入された手話。
    3. 中間型手話:日本語を基盤に持つ中途失聴者や難聴者が、自分たちにも使いやすいように変化させた手話。日本語に対応しているが、日本語対応手話ほどではない。以前は、手話講習会などで教えられている手話のほとんどが、中間型手話であったが、最近は日本手話を教える所もでてきた。
      ※日本手話を常用している人達の中には、日本語対応手話や中間型手話を「日本語と手話を同時に表現したもの」として「シムコム(Sim-Com;Simultaneous Communication)」と呼んで手話と区別している場合がある。
  • 口話(読話、発語)
  • 筆談
  • 指文字
  • 補聴器を使用する
  • いろいろなコミュニケーション手段を総合的に使う

4.コミュニケーションの保障

先に述べたように聴覚障害者のコミュニケーション手段は多様です。一人一人にあった方法で対応しましょう。聴覚障害者というとすぐに手話を思いうかべがちですが、実際には先に述べた、いろいろなコミュニケーション方法が使われています。

しかし現実的には、カウンタ-に「筆談に応じます」と表示をしても、文を書くのがにがてな人は通り過ぎるかもしれませんが、「ここの図書館は、聞こえない人のことも一応考えているんだな」と思ってくれる可能性はあります。実は、こう思ってもらう図書館の姿勢が大切なのです。手話のできる職員はいなくても、「磁気誘導ル-プ」を設置して、補聴器を使用する人を支援したり、難聴者のため音量を拡大できる公衆電話を設置することが聞こえの保障をするだけでなく、「ここの図書館は聞こえない人にも配慮しています。」というメッセ-ジを聴覚障害者に伝えることになるのです。あとは、コミュニケーションを通じさせようとする意志の問題にかかわります。身振り手振り、筆談、口話もやり方しだいです。こちらの誠意を見せることが大切です。

最後は、やはり相手に伝わる手話を覚えたいものです。最近は手話講習会や手話サークル以外にも、テレビの手話講座、手話学習本・ビデオなど様々な方法で学べるようになりました。お勧めしたいのは手話サークルです。聞こえない人と直接コミュニケーションを長い期間とることができるからです。サークルで、聞こえない人と積極的に交流を深める中で、聞こえない人が日頃かかえている問題について理解して欲しいのです。そこから、聴覚障害者の見えにくい図書館への要求(ニ-ズ)を把握してサービスに生かしたいものです。

5.枚方市立中央図書館の聴覚障害者サービス

  • 枚方市立中央図書館作成の「聴覚障害者のための利用案内 2005年版」(DVD)の視聴と解説
  • 「手話で楽しむおはなし会」(渡辺見学時のビデオとスチール写真)によるサービスの紹介

6.参考文献

  • 『聴覚障害者も使える図書館に 図書館員のためのマニュアル 改訂版』日本図書館協会聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるワーキンググループ編、日本図書館協会、1998
  • 『聴覚障害者に対する図書館サービスのためのIFLA指針 解説と講演会記録』ジョン・マイケル・デイ編著、日本図書館協会聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるワーキンググループ訳、日本図書館協会、1993
  • 『聴覚障害者に対する図書館サービスのためのIFLA指針 第2版』ジョン・マイケル・デイ編著、日本図書館協会聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるワーキンググループ訳、日本図書館協会、2003
  • 『障害者サービス 補訂版 図書館員選書12』日本図書館協会障害者サービス委員会編、日本図書館協会、2003

この記事は日本図書館協会発行「平成19年度 第93回 全国図書館大会 東京大会要綱」より 転載させていただきました。