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スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-

スピーチシンセサイザーの録音図書に関する学生達の意見

文:レーナ・ブークヴィスト(Lena Boqvist),アニカ・スンディン(Annika Sundin)

2007年の間にスウェーデン国立録音点字図書館(TPB)は新たな大学用教科書を、半分ほどスピーチシンセサイザーで吹き込みました。しかし学生達自身はこのような録音図書をどのように思っているのでしょうか。『みんなの図書館』は何名かの学生達にインタビューを行い、様々な意見を聞きました。

マルクス・グイレルモ(Markus Guillerni)
ルンド大学(Lunds universitet)経済学部卒業 オスロ(Oslo)勤務

Q:なぜ録音図書を利用しているのですか?
A:私はディスレクシアのために読むことが困難なのです。しかし書くことは容易にできるのです。

Q:読むのは録音図書だけですか?
A:いいえ。私は印刷されている本も時には読みます。特にその本に多くの数字が含まれている場合は。多くの場合私は、録音図書と印刷されている図書とを一緒に使っています。

Q:スピーチシンセサイザーによって吹き込まれた本を使ってみたことはありますか?
A:はい。スピーチシンセサイザーによって吹き込まれた英語の教科書を使ったことがあります。

Q:あの声についてはどう思いますか?
A:聴きやすいし、人が話しているのに近いと思います。

Q:スピーチシンセサイザーによって吹き込まれた録音図書にはなにか欠点があると思いますか?
A:いいえ。あるのは利点のみだと思います。例えば数学はスピーチシンセサイザーの声を聴いて文章を読む方が、読みやすいと思います。その他の利点では、ある文章を選択して、そこをとばすことができるのです。

Q:スピーチシンセサイザーによる吹き込みと文とが全ての録音図書に入っていればいいと思いますか?
A:はい。絶対に。音声を聞きながら画面に出てくる文字を読むことができるのは、普通の録音図書よりも使いやすいです。各文章の下に出てくるこの黄色いマークのおかげで文章に楽についていけます。文章を暗記することにも役立ちます。

Q:より改良するにはどうしたらいいでしょうか?
A:スピーチシンセサイザーによる録音図書の技術をより高めていく方が、人が吹き込みの仕事をするよりも良いと思います。そうすれば本も早く手に入りますし、経費も安く済みます。

ジェシカ・ヴィークルンド(Jessica Wiklund)
ストックホルム大学(Stockhomls universitet)法学部

Q:なぜ録音図書を利用しているのですか?
A:私は自動車事故により首を損傷しているのです。それによって時々集中することが困難になったり、耳鳴りが起こったりするのです。

Q:読むのは録音図書だけですか?
A:いいえ。録音図書と印刷された本をだいたい同程度の割合で読みます。録音図書を読む方が、文章に深く入り込むのが容易な場合もあります。

Q:スピーチシンセサイザーによって吹き込まれた本を使ってみたことはありますか?
A:はい。使ったことがあります。けれども私はあの一本調子のロボットのような声が好きではありません。時々子音がとんでしまって、耳障りな感じがします。そのような録音図書を3、4冊聴いたことがあります。

Q:スピーチシンセサイザーによる吹き込みと文とが使われている録音図書を欲しいと思いますか?
A:私はスピーチシンセサイザーによる読み上げを聞きながら、文章を読むのをまだ試したことがありません。私はMacを使っているので、読み上げソフトのEasyReaderが機能しないのです。

Q:より改良するにはどうしたらいいでしょうか?
A:スピーチシンセサイザーが改善されて、より人間の声に近くなることではないでしょうか。

オーサ・エングマン(Åsa Engman)
ストックホルム市内の社会学カレッジ ソーシャルワーカーコース

Q:なぜ録音図書を利用しているのですか?
A:私は重度の視覚障害者です。また視覚障害の他、聴力もよくありません。

Q:読むのは録音図書だけですか?
A:はい。勉強に使うのは録音図書だけです。けれどもe-テキストについてはもっと知りたいと思っています。学校外で点字文書を読むのに役立つからです。

Q:スピーチシンセサイザーによる吹き込みが使われている録音図書を試したことがありますか?
A:はい。私は音質も聴き心地も良くないと思います。固有名詞は聞き取りづらいですし、英語の引用文はどうしようもないですね。これを用いて読めるのはスウェーデン語の本だけです。

Q:あなたの読む本の中には、スピーチシンセサイザーの吹き込みによる録音図書がどの程度の割合で含まれていますか?
A:そんなに多くはありません。少数です。先学期は、以前よりも多くそういう録音図書を使いましたけれど。たぶん4~5冊くらいしか読んでいないと思います。

Q:より改良するにはどうしたらいいでしょうか?
A:もし私が(同時に)点字ディスプレイの文書を読めるのならば、とても役立つと思います。それはできるのでしょうか?(担当者のレッド(Red)の注:それについては現在開発中である。)それならば私は言葉が判らなかったら、前に戻ってみて確認することができます。

エーリック・フレドリクソン(Eric Fredriksson)
ストックホルム大学(Stockhomls universitet)国際文化学修士課程

Q:なぜ録音図書を利用しているのですか?
A:私はディスレクシアです。本を読む事はできるのですが、内容を覚えていることができません。どうしても短期記憶ができません。ところが録音図書で読むと全てを覚えることができるのです。

Q:読むのは録音図書だけですか?
A:はい。そうだといえます。私は録音図書と、大学が録音した(教科書の)概要の音声ファイルを読んでいます。

Q:スピーチシンセサイザーによって吹き込まれた録音図書を使ってみたことはありますか?
A:はい。最近貰った録音図書は、画面に映し出して読む文章が含まれていました。これは大変よくできていたと思います。言葉や文章を探してブックマークをつけることができました。

Q:あの声についてはどう思いますか?
A:少なくとも人の声で吹き込んだものと同じ程度には良いと思います。音声の速さを上げる時にも、スピーチシンセサイザーで大変うまくいきました。私の教科書には英語のもあればスウェーデン語のもあるのですが、どちらの声もうまく機能していました。

Q:スピーチシンセサイザーによる録音図書の欠点はなにかあると思いますか?
A:いいえ。私の経験からは何もないですね。どちらもうまく機能していると思いますよ。

Q:スピーチシンセサイザーによる吹き込みと文とが全ての録音図書に入っていればいいと思いますか?
A:はい。その利点は文が入っていることと、手元に早く届くことです。スピーチシンセサイザーとその配送の早さのおかげで学期の始まりに間に合いますから。

Q:より改良するにはどうしたらいいでしょうか?
A:全ての録音図書に入っている文章が、完全であることです。

『みんなの図書館』, スウェーデン国立録音点字図書館(TPB)発行, 2008年第1号, p.14~p.15より翻訳