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スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-

自分自身にご褒美を与えよう

ディスレクシア児童の親の会
ニュース 2007年第3号

エミール・スコーグルンドは17歳だ。彼はアーランダ高校の危機-防衛プログラムを受講している。エミールは慎重に自分の勉強の計画を立てている。それは自分が将来警察官になろうと決めているからだ。

エミールの記録には幼稚園の頃から職員によって、言語発達が順調に進んでないと記されている。彼は文字を書き始める年齢になっても、音声を発することができなかった。

ある時彼はパトカーを描いた。そして"Polisbil"(パトカー)と書いたが、その文字は逆方向に綴られていた。

3年生になっても彼は、文字を組み合わせて言葉を書くどころか、アルファベットが何かさえ理解できなかった。彼の中では失望と自信のなさが大きくなっていった。

ある検査により、エミールは重度のディスレクシアであることが判明した。 彼の困難には理由がある。それは彼の知能が劣っているからではない。

この診断が下ったことは大きな一歩だった、とエミールとエミールの母親カミッラは述べる。

「学校も私達もエミールは特殊教育を受けるべきだと考えました。」エミールの母親は続けた。

教師と二人だけで、または自分だけで座り、自分のリズムで課題に取り組むことが、やりとげるための鍵だとエミールは考えている。

「自分よりもずっと早いペースで学ぶ他の人々と共に、クラスに座っていることは大変な苦痛です。先生だって子どもが必要とするほどには助けてはくれません。もし誰かが、勉強したことを身につけるのに他の人々よりも時間がかかるならば、周りは気づいてやらなければなりません。」カミッラはきっぱりと言った。

「4年生になった時エミールは大変意識をして、自分に合った勉強の方法を身につけました。彼は学ぶこと、理解をすることに強い意欲を持っていました。親はそんなに強く押しつけることをしてはなりません。子どもは自分で学ぶ楽しみを持たなくてはならないのです。」

エミール自身も学校で学ぶためには自分自身の責任がどれほど大切かという事を頻繁に思い返す。

「もし読み書きに困難があるならば、口頭で表現することを学ばなければなりません。ぼく達は家庭で常に様々な事柄を話し合うようにしてきました。」

不安は力へと変わる

エミールは宿題を友達と会う前にやってしまうことを心がけていた。時々は宿題が終わっていないために、友達の誘いを断ることもあった。それは大変なことだった。それと同時にエミールは休日には勉強をしないようにしていた。

6年生を終えた時エミールは下手ではあったが読めるようになっていた。

「ぼくは中学生を無事に卒業することはできないのではないかと、心底不安でした。しかしそれは前向きな気持ちへと変わっていったのです。なぜならそのおかげでぼくは学ぶ意欲を持ったし、中学生活の始めから、学ぶことができる見通しがついたからです。」

「そのおかげでぼくは自分自身を律しながら成長できました。そして中学時代を終えた時、ぼくは望み通りの高校のコースに入ることができました。」

英語により多くの時間を使う

高校ではエミールはイタリア語を学ぼうとした。しかしそれはあまりにも困難だった。その代わりにエミールは第2外国語の時間を使って英語やその他の科目を勉強した。中学校時代からそうしていたように。

エミールは他の生徒達が第2外国語を取っている間、英語の特別授業を受けることができたのだ。その後に他の生徒達と一緒に英語の授業を受けた。

「ぼくは特殊教諭と一緒に英語の基礎を学びました。だから英語で他のみんなに遅れないですみました。」

エミールは今でもレポート作成や勉強の時に、Wordのスペルチェック機能やWeb上の英語辞書を使っている。

彼は他の生徒よりも長い試験時間をもらっている。しかし口答試験を受けたことはない。

「ぼくは他の生徒達と同じことがしたいのです。」

読みと会話の訓練は、エミールはほとんどPCを通じて受けている。

「ぼくは色々なゲームをするのですが、ゲームの共通語は英語なんです。ですから理解をする為には、必然的に(英会話を)練習をしなくてはならないのです。」

「それに原付きバイクを買った時には、整備をするためにいやでも使用説明書を読まなければなりませんでした。」

彼は長い文章を読むときには、少し読んではそこで止まって今自分が読んだところを考えるようにしている。英語の場合は一度に5単語づつ頭に入れるようにしている。

自分の映像記憶を用いる

エミールには美術的な才能がある。それによって彼は自信を得られ、しかもつづりを覚える時には自分の映像記憶を用いることができた。

エミールは、例え読み書きが困難であっても自分はばかだなどとは思わないこと、そしてがんばった時には何か自分にご褒美を与える方法を見つけることがとても重要なのだと考えている。

「私達はどんな人間であれ、必ず価値があるのです。子ども達には自分を誇りに思うことを教え、子どもが元々持っている能力を高めてそれを使うように子どもを励まさなくてはなりません。また私は、誰でもいわゆる『弱み』を持っているからこそ、それを乗り越えようと努め、強くなれるのだと思うのです。」カミッラは述べた。

雑誌『ニュース』, ディスレクシア児童の親の会(FDB)発行, 2007年第3号, p.3-p.4より翻訳