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スウェーデンにおける印刷字を読むことに障害のある人々への図書館サービス-ディスレクシアとDAISYを中心に-

HELPは有効である

ディスレクシア児童の親の会
ニュース 2007年第3号

HELPはディスレクシアを持つ成人のための、英語の読み書きの教材です。

教師が計画した教授法を基にした、系統的な教材です。その目的は英語のつづりの規則体系を生徒が習得できることです。

ついにディスレクシアを持つ成人の為の英語教材HELPができました。これはクングエルブ(Kungälv)の成人学校が、ある生徒グループと共に作成したものです。

「HELPの基礎となる教材の大部分は、現在は教科書の作成者であり、以前このクングエルブ成人学校で教師として働いていたオルトン‐グリンハムの方式を採用しています。この方式は多感覚応用の訓練、正確な構造、段階的に上がっていく難易度、教師が計画した教授法、音とその組み合わせによるつづり方を出発点にした勉強方法に重点を置いています。」

系統だった授業

生徒達は言葉に含まれる音を聞き、特定し、分析し、取り組み、そしてそれらのアルファベットの音を組み合わせて単語を書きます。

そのため、HELPの授業は大変系統的です。各授業は読む部分と書く部分から構成されています。どの授業でも生徒達は一つ一つの単語、無意味語、それに文章を読みます。無意味語によって生徒達は、自分の解読能力や音を単語のつづりに結びつける能力に頼らざるをえなくなります。また無意味語によって、読解には、全文章が必要なのだということも学ぶのです。

教材は難易度が段階的に上がるようにできています。始まりは音声と一致している短い、一音節の言葉のつづりです。

英語では例えば/k/という音を様々な方法でつづります。最も一般的なのは/c/でつづる方法です。生徒達はこれに関して、スウェーデン語の/k/という音のつづりと比較することができます。生徒達はこの音をキーワードや鍵となる絵を用いて自分で描き表し、それをずっと用いるのです。

その後教師はいつ英語では/k/を用いてつづるのかを教えます。(e, i, y の前にくる時)その後、ckのつづりや chのつづりについて説明をするのです。

自分の思考フローチャートを作ってみましょう

生徒がこのコースの間に学んだ/k/音に関することは、すべて思考フローチャートに書き込まれます。このような方法で生徒達は、自分自身で規則集を作成するのです。

「私達が各自の問題点をはっきりさせることができると、教師は規則を明確に表すことを勧めます。生徒達が自分で知識を蓄えていくことができるように。」マーリンは説明しました。

この教材は自動化(Automaticity)や十分な学習に関しても相当に留意しており、一度に一つの難点にフォーカスを合わせるようにしています。

スウェーデン語を第一言語とする人々は、2つ以上続いている母音が苦手であり、また、vet (veterinär(獣医)の短縮形)の/v/とwet(濡れている)の/w/を聞き分け、特定することが困難です。さらに私達スウェーデン人はbed, bag, bug, big, log, などに含まれる短い母音の音が苦手です。またthisに含まれる /th/ 、chip に含まれる/tch/、shipに含まれる/sh/も慣れてはいない音です。

自分自身の教材に助けてもらいましょう

生徒は音声識別練習に時間を充てることもできます。教師は/v/と/w/それぞれの音を読み上げ、生徒はどちらの文字だと思うか印を付けていくのですが、その時自分のキーワードと鍵となる絵に助けてもらうのです。

「英語がスウェーデン語と大きく違う点は、単語を読み上げる時音節ごとに分けることができるという点です。その音節が基本となって、発音に結びついているように見えます。」マリーン・ホルムリィは続けた。

英語の場合、書き言葉においては6つのタイプの音節が見られ、この6つのヴァリエーションが、ある方法で音節中に含まれている母音の音に影響を及ぼしています。これは系統化することができます。

英語にも他の言語と同じように、説明または系統化することはできないつづりの言葉があります。例えばyou, there, are, come, enoughなどです。これらの言葉をマーリン・ホルムベリィは『odd words』(異形語)と呼び、それらを学習する時はordbilder(映像として記憶する文字)として覚えることを勧めています。多くのスウェーデン人がスウェーデン語の言葉、ochをordbild(映像として記憶する文字)として覚えるように。

「全体的に見ると、この方式は(教える側が)、教師であろうとすること、教える勇気を持つこと、教師としての役割を担うことを主眼としているのです。」マーリン・ホルムベリィは主張しています。

「一日の授業は生徒にとって、成り行き任せのような印象を残すでしょう。それは赤ちゃんを水に入れて、愛情をこめて励ますのに似ています。泳いでごらん!」

生徒の自尊心を育てる

HELPは完全な教材ではありません。全文章を読むことや、口答によるコミュニケーションや書くこと、それに文法学習によって完全となるのです。

「最も重要なのは、この方式は生徒の『英語には規則のシステムがあり、習得できる可能性があり、それだけの価値があるものだ』という意識の上に成り立っているのです。」マーリンは強調しました。

「初級段階を教える教師がHELPを用いて生徒の継続的な進歩を手助けすることに興味を覚え、その時に説明書やコンピュータープログラムを用いて補足していくことができたとしたら、すばらしいと思いませんか?」

マーリン・ホルムベリィは、生徒に特に英語を選ぶように勧めることには、反対の立場にあります。

「英語のような世界共通言語は基本教科に入ります。誰も生徒に数学を取るのをやめなさいと提案しようとは思わないでしょう。数学も主要教科ですから。」マーリン・ホルムベリィは言いました。

言語の選択肢としての英語が、特に良いものだとはマーリン・ホルムベリィは考えていません。

「これらの生徒達は、自分の同級生に追いつくどころか、(レベル的に)近づくこともないまま、ほぼ2倍の英語の授業を受けているのです。学校は英語を勧めるよりも、生徒達一人一人の困難を明確化し、適切な支援を提供するようにするべきです。」マーリン・ホルムベリィは述べました。

雑誌『ニュース』, ディスレクシア児童の親の会(FDB)発行, 2007年第3号, p.6より翻訳