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スウェーデンアクセシブルメディア機関(MTM : Myndigheten för tillgängliga medier)『読書生活(Läsliv)』2015年第2号,p.21-22

ウプサラ大学のディスレクシア達

ディスレクシアを持つ人々が往々にして遭遇する物事とは、試験官達の無愛想な態度、壊れたコンピューター、許されない試験時間の延長などである。ウプサラ大学ではそのために何人かの学生達が自分達の状況を改善し、お互いに支援をする為にある団体を立ち上げた。

文:レーナ・ブークヴィスト 写真:アンナ‐レーナ・アンダション

学習監督の存在を知る学生は本当にわずかだ

「ディスレクシアを持つ学生のための出会いの場がある事は大変重要です。私達は学生と大学の間のリンクになりたいと思っています。また私達は今現在の、そしてなによりも将来の、困難を抱える学生達の状況が改善するように、団結して変えていきたいのです。」『ウプサラ大学のディスレクシア達』団体代表、リーサ・ルンドクヴィストは言う。

この団体は5年前に一ネットワークとして始まった。しかし現在彼らはウプサラ県内のディスレクシア協会FMLSに所属する地域団体である。彼らは大体一月に一度、学生会ハウスの2階で集会を開いている。5月の暖かな夕べ、ウプサラ大学のディスレクシアを持つ人々全員のためのオープンミーティングが開かれている。
 雰囲気は盛り上がり、コーヒーの香りが漂いホームメイドのチョコレートボールが配られる。今回は10人程度のグループが参加していた。時には20人近くになるという。今日は特別に学生会の学習監督のアンナ・エルムが参加している。学習監督とは難しい問題を解決するのが務めでる。
 彼女は自分の勉学や、物理的及び精神的な学習環境等その他勉学に関連した問題にぶつかった各学生を手助けする為にウプサラ大学の学生会に雇用されている。
 「私は例えば法的なことで助けを必要としている学生を支援しています。例えば規則、ガイダンス或いはコースプランなどがそれに含まれます。学習監督がいる事を知っている学生は本当にわずかなのですが。」

アンナは例えば「充分前に連絡したにもかかわらず、試験の際にコンピューターが提供されない場合は報告をすべきでしょうか?」といった質問を受け付けている。この答えはイエスだ。アンナは再発を防ぐ為に、このような出来事が公になるのは重要な事だと考えている。
 このグループにとって、コンピューターが壊れている、コンピューターが少なすぎる、あるいは試験を個別で受けるのに教室が足りないといった問題はよく起こるようだ。ある女子学生は在宅試験を受ける際の試験時間の延長希望を拒否する権利が教師達にはあるのだろうかと、質問をしてきた。コーディネーターはこの学生には延長を申請する権利があると言っていたのだが。
 「私は在宅試験を受ける時には食べる暇も寝る暇もありません。資料を読むのに大変時間かかるからです。」
 ミーティングに参加してる学習コーディネーターは女子学生に賛同し、教師達がコーディネーター陣の意見を聞き入れないのはおかしいと述べる。また代表のリーサも女子学生に賛成している。
 「ストレスを感じるとディスレクシアはひどくなるものなんです。」

そう。『ディスレクシア達』団体にはやる事がたくさんあるようだ。彼らは学校職員を交えた対策委員会と集まり、まさにテストに関わる問題について話し合っている。『ディスレクシア達』団体はその他にはコーディネーターと連絡を取り、勉学の技術及び補助具に関する情報を提供し、また補助具の開発に参加している。彼らは新たな学生達に録音図書についても広報している。博物学及び文化遺産学のマスターコースで学んでいるリーサは、録音図書は重要だと強調している。
 「録音図書がなければ私は到底やっていけませんでした。私にとっては現在のように図書が早く届くようになってさらに便利になりました。それは、それらの図書がタルシンテス(スクリーンリーダーの一種)で録音されたからです。私達の処にいるディスレクシアを持つ人々は、ほとんど皆録音図書を使っていると思います。」
 リーサは文章が大学の教科書に沿っていることを高く評価している。以前は音声しかなかったのだが、技術の進歩のおかげで音声を聴きながら文章を目で追うことができるようになったのだ。これが彼女には合っている。
 「何年か前タルシンテスで録音された図書は、私達のミーティングでしょっちゅう議論の的になりました。一部の人々は流れてくる音声が聞き取れませんでした。今日ではタルシンテスが改善されて、皆が図書のデザインや音声に慣れてきています。」

大学図書館は学生達が自分で録音図書をダウンロードできるように登録している。またこの図書館は当団体にとって当然の協力パートナーでもある。
 今日のミーティングでは様々な問題が取り上げられているが、参加者達はこの数年の間にディスレクシアを持つ人々の諸事情は改善されていると考えている。彼らはこの大学のウェブサイトが改善されていると述べている。試験用の個別の部屋は予約しやすくなり、同団体の要求は聞き入れられ、コーディネーターや各機関との協力体制が良くなった。
 「ディスレクシア達のグループが絶えず大きくなっていくというのは、諸問題がより真剣に取り上げられるということだと感じます。」リーサは言う。
 何かグループを立ち上げたがっている他の学生達に与えられるようなアイデアはあるだろうか?
 「はい、だれかその問題に対して興味を持っていて、それに献身的に関わる時間を持っている誰かを見つけることです。でも、あまりにそれにのめり込み過ぎてはいけません。勉学も団体業務も時間がかかります。そしてどうぞ私達に連絡してください。そうすれば私達がお手伝いをし、何をどうすべきか、そして何がうまくいって何がうまくはいかないのかをお話できます。」

団体『ウプサラ大学のディスレクシア達』はウプサラ県のFMLSの地域団体である。彼らはウプサラ大学学生会、『同条件のグループ』、大衆大学、機能障害を持つ学生達のためのコーディネーター陣、スプロークヴェルクスタン(ウプサラ大学内の学生達を言語的な面で支援する団体)、大学図書館、トールトーク社(タルシンテス開発の会社)及びNoBounderies社(特にディスレクシアを対象とした勉強のプラットフォームを開発している会社)と協力している。連絡先:kontakt@dyslektikerna.se

学習監督は学生の状況を改善する役目を担う。彼らは授業や教育環境を監督し、学校委員会で学生達を代理し、個別の学生を支援し、学部の評議会及び公平化グループへ学生達を勧誘して研修を行う。

左写真

月毎のミーティング
コーヒー・菓子パンを頂きながらウプサラ大学のディスレクシアを持つ全学生が真剣に話し合う。


original:
Dyslektikerna vid Uppsala universitet. Läsliv nummer 2. Myndigheten för tillgängliga medier. 2015
http://www.mtm.se/globalassets/publikationer/lasliv-och-vi-punktskriftslasare/lasliv_2_2015.pdf
http://www.mtm.se/om-oss/Publikationer/lasliv-och-vi-punktskriftslasare/
(cited 2016-02-09)